第8話
それからというもの、一作とあけみはいつも一緒でした。でも、そうかといって、別に一作はあけみと遊んでやっているわけではありません。一生懸命に畑仕事をしています。あけみは、そんな一作の後ろにくっついて、一日中畑を歩きまわっています。そして、少しでもおもしろいことがあると、嬉しそうに明るい声で笑います。一作も畑仕事をしながら、あけみにいろいろな話をしてやったり、時には仕事の手を休めて、笹舟や草笛といった簡単なおもちゃを作ってやったりしました。
こんあふうにして、一年が過ぎ、二年が過ぎ、いつしか五年の月日が過ぎてゆきました。それでも二人はいつも一緒でした。よく畑から、二人の楽しそうな笑い声が聞こえてきました。そうです、二人はいつの間にか愛し合うようになっていたのです。
もう一作も十五です。日焼けした、たくましい体つきの凛々しい若者に育っていました。あけみも十三になりました。丸顔で大きな目をした、かわいい娘になっています。あの明るい笑い声は今も変わりません。いえ、今の方がずっと幸せそうです。傍目にも、二人はまったく似合いの恋人同士に見えました。
けれども、庄屋様はそうは思っていませんでした。しかたなしにあけみの思い通りにさせてやってはいるものの、あけみを一作の嫁にしようなどとは考えてもいませんでした。ですから、ますます一作の仕事を厳しくつらいものにしていきました。こうすれば、一作はあけみと話しているひまなどなくなるにちがいありません。そうなれば、あけみもだんだんと一作のそばにいても面白くなくなるでしょう。庄屋様はそうなったら二人を引き離して、あけみを山一つ隔てた隣村の庄屋様の家に、お嫁にやるつもりだったのです。
でも、一作は、どんなにつらい仕事でも耐え抜きました。どんなに厳しい仕事をしながらでも、あけみと明るい声で話しあっています。一作にとって、あけみさえそばにいてくれたら、どんな仕事でもつらくはなかったのです。
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