第7話

 こうなると、さすがの庄屋様も心配になって、あちこちからお医者や行者を呼んだりしましたが、どうにも治りません。とうとう、たいそう遠くの町から、名医と評判の高いお医者様に来てもらいました。

 お医者様は、あけみをずいぶん長いこと診察していましたが、やがて顔を上げると、庄屋様を呼びました。

「いろいろと診てみましたが、この子の体には、悪いところは少しもありませんあ。これは心の病です。何かわけがありましょう。よろしければ、私に話していただけませんかな。」

 庄屋様はそう言われて、しかたなく一作とのことを話しました。お医者様は、しばらく考えていましたが、やがて庄屋様の方を向くと、はっきりと言いました。

「このままでは、このお子は助かりませんな。思い通りにさせてやることです。そうしなければ、どんな良薬も役には立ちますまい。」

 いくら頑固な庄屋様でも、あけみが死んでしまうとまで言われたのでは、しかたがありません。とうとう、あけみの思い通りにさせてやることにしました。

 でも、そこはけちんぼの庄屋様です。一作にはちゃんと、あけみの相手をするからといって、仕事をなまけたらしょうちしないと、厳しく言い聞かせてありました。また一作のそばへ行ってもいいと聞いただけで、あけみの表情は、パッと明るくなりました。みるみるうちに、青ざめた顔に血の気がもどってきます。ご飯も、前のようにたっぷり食べるようになりました。そして十日もたつ頃には、すっかり治ってしまいました。庄屋様も約束ですから、しょうがありませんし、もし万が一約束を破ったりしたら、今度こそあけみは助からないかもしれないとも思ったので、しぶしぶ一作のところへ行かせてやりました。

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