第4話

 一作は、急にあけみがかわいそうになりました。そういえば、あけみは一人娘で、家には遊び相手になれるような、年の近い子供がいなかったのです。こんな貧しい村のことですから、村の子供たちも畑仕事を手伝わなければなりません。あけみにとって、一作はたった一人の遊び相手になってくれそうな子供だったのです。

 それにこんなところでべそをかかれたのでは、一作がいじめたのだと思われてしまいます。庄屋様は、あけみを目に入れても痛くないほどにかわいがっていましたから、それこそ、どんなにしかられるかわかりません。一作はあけみを抱き上げると、少し離れた切り株まで歩いて行って、そこに座らせました。

「いい子だから泣かないでおくれよ。おれが庄屋様にしかられちゃうよ。じゃあ、ここに座ってなよ。ここなら危なくないからな。」

 一作がそう言うと、あけみは嬉しそうにニコッと笑って、おとなしく切り株に腰かけました。

 一作は、またまきを割り出しました。ガツッとなたを打ち込んで、コーンとたたきこみます。すると、まきはパカッときれいに左右に飛んでゆきます。ガツッ、コーン、パカッ、ガツッ、コーン、パカッ。一作は汗を流しながらくりかえします。あけみはじっと見ていて、パカッときれいに割れて左右に飛んでゆくと、手をたたいて喜びます。パーンときれいな音がして、勢いよく飛んでゆくほど喜びます。いつのまにか、一作はあけみの嬉しそうな笑い声が聞きたくて、一生懸命にまきを割っていました。

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