第3話

 その日、一作は汗びっしょりになって、まきを割っていました。太いまきを、よく燃やせるようになたで割って細くしてやるのです。まず、なたをたきぎにくいこませます。それからその木を伐り株の上の、コーンとたたきつけます。すると、太いまきはパカッと二つに割れて、ちょうどよい太さになるのです。

 一作は、一生懸命になってまきを割っていました。一作がふと目を上げると、目の前に女の子のかわいい足が見えます。一作は、驚いて顔を上げました。

 あけみでした。あけみは両手を後ろに組んで、一作を見ていたのです。一作と目が合うと、あけみはニコッと微笑みました。

「一作、何してるの。」

「おれか、見りゃあわかるだろ。まきを割ってるんだよ。おまえこそこんなところで、何してんだ。こんなところにいると、親父様におこられるよ。」

一作は、ぶっきらぼうに言いました。

「ほらほら、そんなとこにつっ立ってると、まきが当たるぞ。危ないからあっちへ行きな。」

あけみは一作をじっと見たまま、そこに立っていました。

「いや。」

と、あけみは言いました。

「あぶなくなんかないもん。あたし見てるの。」

 困ったのは一作の方でした。ぐずぐずしていると、また庄屋様におこられます。もし、あけみにまきが当たってけがでもさせたら、それこそどんなにおこられるか、わかったものではありません。

「なあ、頼むからあっちへ行っておくれよ。こんなところをおまえの親父様にみつかったら、おれがおこられちゃうよ。頼むから、じゃましないでおくれよ。」

と、一作はいかにも困ったようすで言いました。すると、あけみは急に悲しそうな顔をして、

「そんなにじゃま。ここにいちゃあだめなの。あけみ、ここにいたいのよ。だってさ、みんなあけみと遊んでくれないんだもん。あけみさみしくって・・・。」

 もう、おしまいの方はほとんど声になりません。あけみはしくしく泣きだしてしまいました。

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