第2話

 庄屋様といっても、こんな村のことですから、ほかの人たちと比べて格別に裕福というわけでもありません。ただ、少しばかり余った土地を村人に貸してやっているぐらいのものでした。一作にとっては運の悪いことに、この庄屋様は村でも評判のけちんぼで、一作を引き取ったのも、別にあわれに思ったからではなくて、ただ働きをさせられる人手が欲しかっただけのことでした。ですから、ここでの仕事は、一作にとってはひどくつらい苦しいものでした。

 朝は夜明けとともにとび起きて、家の掃除にご飯のしたく、それがすんだら家の者を起こしてまわります。みんながご飯を食べている時も一作だけは、

「おい一作、おれの飯はまだか。」

とか、

「わしんとこに味噌汁が来てないぞ。」

といった具合に、みんなの間を行ったり来たりしなくてはなりません。一作がやっとご飯を食べられるのは、みんなを野良仕事に送り出してからです。おまけにみんなが食べた後ですから、ご飯も底の方にちょっぴり、味噌汁も具などありません。そのうえちょっとでもゆっくりしていようものなら、

「一作、何をもたもたしているんだ。早く畑に行かんか。わしんとこには、ただ飯食いをおいてやるほどの余裕はないんじゃ。」

と、庄屋様におこられます。まだ幼い一作にとって、毎日はつらく苦しいことばかりでした。

 けれども、そんな一作にも、たった一つのなぐさめがありました。それは庄屋様の娘のあけみでした。一作よりも二つ年下で、目のぱっちりとした、よく笑う女の子でした。

 一作は、庄屋様の家に引き取られてからいくらもたたないうちに、あけみと仲良くなりました。最初のうちこそ、一作があんまりきたないかっこうをしているので、そばに寄ろうとはしませんでしたが、そのうちに一作が仕事をしているそばへ、よくやってくるようになりました。

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