夫婦岩の話

OZさん

第1話

 昔々ある所に、たいそう好きあっていた一組の若い恋人たちがいました。二人は、一作とあけみといいました。

二人の住んでいる村は、山あいの小さな村で、そばには大きな川が流れていました。村の人たちはみんな貧乏で、猫の額ほどの畑を耕したり、川で魚をとったり、山で木を切ったりして、やっとの思いでその日その日を過ごしていました。

 そんな人々の中でも、一作の家は特に貧乏でした。家といっても、屋根の崩れかかった、もう半分傾いてしまっているような家です。一作の両親は、やせた狭い畑を一生懸命に耕して、それこそ一日中働きどおしでした。

 そして、一作が十になった年に、一作の父親も母親も流行病(はやりやまい)にかかって亡くなってしまい、一作は全くの一人ぼっちになってしまったのです。まだ年端もいかないみなしごが、そんな山の中の貧しい村で、一人ぼっちで生きてゆけるはずもありません。一作は村の庄屋様の家に引き取られて、食べさせてもらうかわりに、下男として働くことになりました。

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