ドッグ・ウォッチング

 繁華街から少し離れた場所で、アニマル&プランツ・ウォッチングを楽しんでいる件は述べたが、では繁華街や多くの人が住んでいる市街地は楽しんでいないのかというと、そんなことはない。それはそれで、楽しみがあるのだ。

 人間が居る所でこそ楽しめる生き物───お散歩をしているワンちゃんズである。


 日本の住宅事情とマッチングしたのか、随分前に某ア◎ムのCMから火が点いた小型犬ブームは未だ健在で、見かける犬は小型犬が圧倒的に多い。チワワ、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンドの三種が断トツで、次点はシーズー、ミニチュア・シュナウザー、フレンチ・ブルドッグといったところだろうか。パグは、最近は少ないように感じている。

 中型犬は圧倒的に柴犬、大型犬はレトリバー系が多い。

 以前住んでいたマンションのすぐ近くには、政令指定都市のど真ん中にも拘らず、かなり大きな公園があった(城跡だから、ど真ん中は当然かも?)。昔からその公園は、二十四時間ランナー&ジョガーがいる所で、犬のお散歩天国でもある。近くに住んでいたからこそ知っているのだが、この公園でお散歩をしている犬達は、時間帯によって大きさが違うのだ。

 公園に来ている人が多い昼間は、ほとんどが小型犬だ。小さな子供や高齢者も多いので、他人に恐怖感を与えるサイズの犬は訪れにくいのだろうと思われる。中型犬クラスは、朝夕が多い。そして、夜が更けるにつれ、お散歩している犬種は巨大化して行くのだ。

 深夜に近い時間帯になると、レトリバー系は勿論、グレートデンやグレート・ピレニーズ、シベリアン・ハスキーやマウンテン・バーニーズが出没する。

 このサイズの犬になると、日々かなりの運動量が必要になるので、自転車で散歩している人もいるが、一度だけスクーターで散歩している人を見かけた。勿論、公園内なのだからスクーターでも走行禁止だが、深夜なので咎める人も居ない。


 現在は、その公園を訪れることも少なくなったが、タクシーに乗務中でもドッグ・ウォッチングは楽しめる。

 猛暑の時期に、プードルカットになっているグレート・ピレニーズを見たり、一度は一緒に暮らしてみたいボーダー・コリーの別嬪さんと遭遇したり、決まった時間のある所を通るとホワイト・シェパードを二頭連れている人を必ず見かけたりと、色々である。

 特に、珍しい種類の犬と遭遇すると、このマニアな人は大興奮だ。

 それがコンビニの軒先だったりすると、まず間違いなく声を掛ける。近年、そのシチュエーションで知った犬種が、ワイマラナーだ。ポインターの種類に分類されることもあるようだが、私が遭遇した子の印象としては、顔の感じや体つきがラブラドール・レトリバーに似ていた。短い毛は銀茶色で、色の薄い瞳が実にエキゾチックな犬だった。私が目撃した事があるのは、一頭飼いの所と二頭飼いの所と、全部で三頭である。

 別のケースでは、とある児童公園の側で休憩していた時に通り縋った犬が、ウイペットだった───が、散歩している男性の飼い主さんが、何とも声を掛けにくい感じの人だったので近寄っては行かなかったのだが、「おお……ウイペットだ」と呟くと、飼い主さん豹変。ニコニコ顔であちらから来て、「ウイペットを御存じですか」と声を掛けてくださり、思う存分撫でさせてくれた。

 一度だけ見かけたことのあるサルーキは、残念ながらお近づきにはなれないままだ。かつて、予約の問い合わせで『アフガンハウンドをお連れの方を乗せてもいい号車』という呼びかけがあったが、無念にも私は近くには居なかった。なので、他の営業所の知らない人が行ったようだが、『アフガンハウンドを本当に知っているかい? 驚いても知らないぞ』と嫉妬混じりに思ったことを覚えている。

 最近見かけるようになったのは、ボルゾイだ。一頭飼いのところと二頭飼いのところがあるようだ。随分以前に目撃していた子は、時間の経過からして、すでにご存命とは思えないので、最近来た子なのだろう。ルネッサンス期にフランスの大女優サラ・ベルナールが愛したロシア産の犬だが、いつ見ても貴族的に優美で気品のある犬である。

 そんなこんなで、ワイマラナーもグレート・ピレニーズもシベリアン・ハスキーもマウンテン・バーニーズもボーダー・コリーも、モフモフ・モフモフしたことがあるのだが、やはり一番可愛いのは自分のうちの子であるのは間違いない。

 我が愛犬、今は亡き柴雑種のたろうさんは勿論、多少ぽっちゃり系でも、現在うちに居る弟と母の犬であるシェットランド・シープドッグで坊ちゃん育ちの小太郎くんが、世界で一番可愛いのである。



P.S.更に別格なのは、当然だが私の愛猫・ソマリのひーちゃんだったりもするのだ。

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