あれ?賢者って何でしたっけ?

アイラは魔力を最大限まで高めていた。

身体から魔力が揺らめき見えるほどに濃い密度に圧縮されていた。


「クククッ、本当に人間にしておくには勿体ないものだな。どうだ?我々の魔王軍に加わる気はないか?貴様ならすぐに幹部として取り立ててやるぞ?」


キングレオの提案にアイラは鼻で笑った。


「あら?私も甘くみられたものね?私を誘うなら魔王の座ぐらい用意しておきなさい!」


アイラは咄嗟にその場を跳び去ると、地面からキングレオの尻尾が攻撃してきた。


「ほぅ、流石にやるな!」


キングレオは即座に間合いを詰めると、四本の腕で殴り掛かった。


「如何に強大な魔力を持つ賢者でも、間合いを詰められればたいしたことはない!」

「あら?そんな事、誰が決めたのかしら?」


アイラにぶつかりそうになったキングレオの拳にアイラは自分の拳を当てた。

そして、そのままキングレオを押し返して吹き飛ばした!


「な、なんだと!?」


ズーーーーン!!!!


吹き飛ばされて地面に倒れた。

流石のキングレオもまさか殴り返されるとは思っても見なかった。


「あら?何を寝ているのかしら?勝負はまだ始まってもいないわよ?」


アイラが追撃を仕掛けた!キングレオもすぐに起き上がり応戦した。


そこからは二人の殴り合いになった。キングレオは拳に魔力を纏わせ、爪を最大限まで伸ばして、本気で四本の腕で殴り掛かった。アイラは手数で劣るが、一撃、一撃の威力は本気を出したキングレオより上だった。


「ほらほら!獣人最強の百獣王が聞いて呆れるわよ!」

「舐めるなよ!」


ドドドドドッッ!!!!!


お互いに殴り合い、ダメージが蓄積していった


『信じられん!この魔力、間違いく賢者のジョブの癖に、格闘術の心得がある。ただ魔力で強化している訳ではないぞ!』


格闘術に自信のあるキングレオは内心で驚きを隠せなかった。脆弱な人間が自分と打ち合っていること自体ありえないのだ。


「ちっ!?」


キングレオは一旦間合いを取って技の構えを取った。


「この技を受けて見るがいい!獣王滅殺術『百獣功』!!!!」


キングレオが正拳突きの構えから放った拳から、ライオンの形をした気功波が放たれた!

魔法とは違う、闘気(オーラ)とも言う格闘家や一部の剣術家が覚える、身体の生命力を魔力の代わりに放つ必殺技であった。


ふぅーーー!


アイラも正拳突きの構えを取り、大きく息を吸った。


「我流奥義『いてこますぞ!コラ!』!!!」


大きく振りかぶって、キングレオの気功波を殴り付けた!


ドッーーーーーーン!!!!!!


アイラが殴り付けると、キングレオの気功波は消えてなくなっていた。


「そ、そんなバカな!?貴様、賢者ではないのか!?」


驚愕するキングレオにアイラは微笑んでこたえた。


「私、ムカつくヤツをしばき倒すのが趣味なのよ♪」


全然、答えになっていない回答をいうのだった。


「意味がわからん!貴様は─!?」


キングレオは良い掛けて気づいた。アイラの傷が治っている事に。こちらも並外れた自然治癒力で拳の出血は止まっているが、血は残っていた。


「あら?気付いちゃった?」


人間の治癒力で怪我が治るはずがない。ならば─


「貴様………回復魔法を常時掛けていたのか!?」

「正解でーす!そうすることで、人間のリミッターを解除して凶戦士並の力が出せるのよ♪」


人間の身体は自分が傷付かないように脳内でセーブが掛かる。しかし、回復魔法を掛け続けることで瞬時に怪我が治るため、脳内を錯覚させ何倍のも力が出せていたのだ。無論、アイラの特訓の賜物ではあるのだが。


しかし、魔力も無限にある訳もなく、キングレオとアイラの戦いは佳境に差し掛かった。

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