惨状……

賢者アイラと魔将軍キングレオが戦い始めた頃、シオン達も勇者の隠れ里の近くまで来ていた。


「シオン!ヤバいぞ!とんでもない数の魔物だ!?」

「獣人族がいる。これ以上近付くと匂いでバレるぞ?」


シオン達は高台に登り、魔王軍の動向を確認していた。


「流石にあの中に飛び込むのは自殺行為だわ。悔しいけど、遠回りをして反対側から村に行きましょう」


シオンの言葉にアークが尋ねた。


「しかし、あの数の魔王軍に飛び込んで勝てる勝算はあるのか?遠回りしても、結局魔王軍の前に出るなら同じ事だぞ?」

「そうだ!アイラ様だって逃げろっていうぞ?村に戻るより北上して避難しているみんなに追い付いた方が良いんじゃないか?」


シオンは昨日、アイラから渡されたマジックアイテムを取り出した。


「幾つか魔導炸裂弾があるわ。それに、閃光弾もね!これを投げて逃げるのよ!」

「お、おまっ!なんちゅう危ないもん持っているんだよ!前に持ってたらウズウズして投げたくなったって、柵を半壊させて叱られてただろうが!」


「いやー!あれは若気日の過ちですなー!

でも大丈夫!だって、投げても良い相手がたくさんいるからね♪」


どっち道投げるんかい!

アークはため息を付きながら、取り敢えずそれで行こうと言って先を急いだ。


「戦っているのってお母さんだよね?」

「それしかねーだろう?他は逃げているだろうから時間稼ぎしているんだろう」


シオンとグレンは最悪の状況を考えたくなくて、そう思いたかった。


シオン達が遠回りをして村に入ると、前に魔王軍の小隊が偵察に来たときに壊された柵や、家ドアなど一部散乱していた。


「クソッ!俺たちの村で好き勝手ヤりやがって!」

「まだ魔王軍が彷徨いているかも知れない。気を付けていくぞ!」


村の南の入口に近付くと、爆発音が強く聞こえてきた。


「あれは!?」


シオンは入口で倒れている老人達を見付けて駆け寄った。


「………嘘でしょ?」


全員、事切れていた。シオンはそれでも回復魔法を使った!


「ハイヒール!ハイヒール!ハイヒール!」

「おい!止めろ!もう…………」


グレンが止めるがシオンはそれでも止めなかった。


「嘘よ!だってゴンじいちゃんは今度、お孫さんの結婚式を楽しみにしてたし、おばばは足が悪かったけど優しかったし………うぅぅぅ…」


膝をついて泣き出したシオンであったが、状況がそれを許さなかった。アイラとキングレオは激闘を繰り広げながら、偶々入口から少し離れた所に居ただけだった。

魔王軍もとばっちりを受けない為に、兵を後方に下がらせ見守っていた。


「オラッ!!!!!」

「はあぁぁぁぁぁ!!!!!」


ドンッ!ドンッ!ドンッ!

バンッ!バンッ!バンッ!


ザザザッッッ!!!!


「はぁはぁ、そろそろ魔力も限界なんじゃないか?」

「ハァハァ………うふふ、どうかしらね?」


お互いにボロボロになりながら、まだ余力を残していた。


「アイラ様!!!」


グレンが姿を見付けて叫んだ!


「シオンにグレン君!?戻ってきたの!」


アイラはシオン達が魔王軍を見掛けたら逃げると思っていた。まさかこの大軍の中で戻ってくるとは考えていなかった。


「ふん!村人が数人戻ってきた所で敵ではな─!?」


キングレオはアークを見付けて言葉に詰まった。

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