第22話 最終日
ディアブロの無害を証明し終えたあの朝からずっと、俺はひたすら訓練を行っていた。ディアブロを使い魔にしたことにより得たスキルを、自分の物へと昇華させるためだ。
ちなみに、あの後マガレスの鑑定水晶に映し出された内容はこんな感じ。
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黒鉄蓮 十七歳
性別:男性
種族:人族
称号:異世界人
魔法適正:なし
スキル:言語翻訳・
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ディアブロ 契約主:黒鉄蓮
性別:男性
種族:悪魔
称号:
魔法適正:炎、風、闇
固有スキル:悪魔召喚
スキル:魔力操作・気配感知・気配隠蔽・縮地・暗視・空壁・闇霧・闇爪・恐夢
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うん。どうかと思う。いきなりこの数のスキルを得てしまうのは反則かな? とも思ってしまう。といか、ディアブロが
"魔力操作"のスキルが"魔力支配"へといつの間にか進化していた。試したところ、体内の魔力を直接操作できるのは今までと変わらず、それに加え自分から一定範囲内の魔力は思うがままという、聞くだけならチートスキルだった。その範囲内では相手の干渉を防いだり出来たが、その範囲がだいぶ狭く、検証した結果伸ばした肘よりも狭かった。万能ではなかったが、まぁ派生スキルが増え総合的に強くなったからよしとしよう。
それにスキルが増えたからといって強くなったわけではない。スキルというのは、長年に及ぶ修練やその人の才覚などによって大きく左右される。故に、ディアブロのスキルは本来、ディアブロのためのスキル。俺が使いこなせるわけではなかった。
初めの頃は苦労した。スキルに殺されそうになったこともあった。いやこれマジ。
異世界ではよく聞くであろう"縮地"。距離を一瞬で縮められる高速移動である。スキルを発動させるのに必要なのは、明確なイメージらしく、試しに足元が爆発するイメージを行なったんだ。そしたら体内の魔力が一瞬で足元に集まり、踏み込んだ足元がゴバッと陥没し……………訓練場の壁まで吹き飛んだ。
あまりのスピードに受け身なんて取れるはずもなく激突。鼻の骨が折れ、鮮血の虹を作って地面に転がったよ。すぐ治癒魔法で治してもらったが、頭蓋骨にもヒビが入っていたらしい。
成功は成功だが、やはり使い方やコツなどは 持ち主のディアブロに教えてもらうのが一番確実で効率的なのだが…………そこは悪魔。手取り足取り教えてあげるとはならなかった。
今までの不遇な扱い(主に"お座り"は我慢ならなかったらしい)による不満をぶつける口実で、実践形式の訓練となった。訓練だから死にはしないのだ。それ以上に痛めつけられるだけだが。
俺が翼がないのを良いことに自分だけ
「死ぬ気で躱さねぇと死んじまうぞマスター? はっはっはっ!!!」
…………逃げ惑う俺を見て高笑いしているディアブロの姿を見て、悪魔とは本来こういうものなんだなと実感させられた。
と、いうのが、数日前の出来事。本当に、あの頃は地獄だったな〜と、物思いにふけっていると、闇の爪が俺を貫かんと突き出される。水が流れるように躱し、お返しと言わんばかりに三連突き。全て人体の急所。展開された
「成長速度速すぎないかマスター!?!! もうちょっと虐められろよ!!」
「もう十分楽しんでただろ? 今度は俺が躾のなってない犬にお仕置きするのは主人の務めじゃないか」
「俺様は犬じゃねぇっ!!!」
そんな漫才をしている俺とディアブロ。あの頃のように高笑いしている悪魔の姿は微塵もなかった。
ディアブロが空中に停滞しながら魔法を発動。炎の槍を無数に投擲。その中には視認しにくい風の刃も混じっていてとてもいやらしい。脚を体内の魔力で強化し地面を蹴る。正面から迫る炎と風の魔法を魔力の壁を作り出す"魔力障壁"を足場に器用に躱し、空中で顔を引きつらせているディアブロに接近。大上段から剣を振り下ろす。
振り下ろした剣はそのままディアブロへと迫るが、自身の体を一定時間霧に変えるスキル"闇霧"でディアブロは回避。時間にして三分ほどその状態を維持されるのだが、空中を動き回る闇色の霧に左手を突き出し魔力を練り上げ放出。スキル"魔力放射"。相手の体内の魔力を掻き乱すことができ、相手の魔力制御を乱すことができるほか、相手の動きを一瞬だけ止められる。魔力消費が大きい点に目を瞑れば結構使い勝手がいいスキルだ。
"魔力放射"をもろに受けたディアブロは"闇霧"を強制的に解かれ姿を晒される。急接近しさらに剣を振り下ろす。ディアブロは"闇爪"で受け止めきれず地面へ叩きつけられる。
土煙がもうもうと上がり、ディアブロの姿を搔き消す。俺は"空壁"を使い地面へ着地。"気配感知"と"魔力感知"を併用。ディアブロの反応は確かに煙の中にあった。
煙が晴れたそこには、蜘蛛の巣のようにひび割れた地面と、その中心に闇色の小石が転がっていただけだった。
最終日にして俺は
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