第12話 中間テスト

 翌日、予定通り学校に向かい、最終調整も終わりました。こんなに緊張するテストの朝も、逆にこんなに落ち着いた気分の朝も間違いなく初めてです。

 いつもは余裕なんてありません。ほとんど一夜漬けで勉強時間はそうでもないのに起きている時間は多い。睡眠時間も足りずに精神も不安定になりがちで、ひたすらに余裕はありませんでした。


「・・・これだけ出来れば問題ないだろう。何も心配しなくていい。ちゃんと点は取れる」

「本当ですか?」

「いまさら嘘をついて何になる。お前が自分を信じれないなら俺が代わりに信じてやると言ってやるんだ。何か不満か?」

「・・・ありがとうございます。絶対点を取ります」


 相変わらず楽斗さんは一番聞きたい言葉を言ってくれます。彼の気持ちが、何よりも私の力になって背中を押してくれるのを感じる。絶対に行けると信じさせてくれる。


 一日目は現代文、数学ⅠA、日本史

 二日目は古文、化学基礎、地理

 三日目は英語、数学ⅡB


 ネックの理系科目が散らばってくれているのは非常に好都合でした。覚えてきた公式の中で、今回使うであろうものを慎重に選びだして整理していきました。


「あとは、お前次第だ。しっかりな」

「はい」


 いよいよテストも始まりました。一度始まってしまえばもう楽斗さんのことは頼れません。自分の知識を頼る他ありません。

 今までやってきたからと言って、目標が30点だけあって、やはりわかる部分がそう多いわけではありません。どうしても詰まる部分が多く出てきます。それでも慎重にわかる部分を引き出し、諦めることなく問題と向き合い続けました。

 時間は50分間、こんなにも時間を有効に使ったのは初めてです。あっという間に時間が進み、テストが終わりました。

 不安と一緒に一種の達成感も同時に感じることが出来ました。そして、不安を感じることも、私にとっては喜びでした。だって、いままで絶望しか感じることが出来なかったから。


「昼からはまた勉強だ。思うところは多いだろうが、今はまだ我慢しろ」

「わかりました」


 こんな喜びを感じる余裕も、今は楽斗さんは与えてくれませんでした。この喜びが緩みとなって悪い影響になるのを防ぐためです。それに、三日間の最後に一気に気持ちをぶつける方が喜びも大きいです。

 言いたい衝動も抑えて、私はこのテスト期間に身をうずめました。


 三日八教科、長いもののように言えますし、感じてみると実にあっさりと過ぎたとも言えます。

 まるでアスリートのようです。あんなに長い時間準備を続けていたのに、本番は終わってみるととてもあっさりと、あっという間に過ぎ去ってしまう。

 本当に終わったのでしょうか。最後の英語が終わった後も、しばらく放心していました。本当に終わったんでしょうか。本当にこれだけ?

 

「・・・よく頑張ったな。莉彩」

「・・・楽斗さん・・・」

「あとは結果を待つだけだ。緊張してまた体調を崩すなよ」

「・・・そういわれると緊張してきました」


 テストは無事?終わりました。8教科一つでも赤点・・・30点より下だった場合、少なくとも留年が確定、おそらくは退学になってしまうでしょう。あとできることは祈ることだけ。そして、信じることだけです。

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