〜第5話 闘い〜
男とナルフはフロアの出口に向かい
走り続ける。
道中には兵と犬、そして脱獄した者までもが何人か倒れていた。兵との交戦で敗れた者だろう。
走りながら男はナルフに質問する。
『そういえば、投げたナイフは拾わなくて良かったのか?まだ使えそうだったけど。』
「これのことか?」
ナルフは右手にいつの間にかナイフを所持していた。犬に投げつけてからナイフを回収していた様子は無かったはずなのに。
『え!?いつの間に…!?』
男は驚き転げてしまう。
その姿にナルフは大笑いする。
「アッハハハハ!面白いなぁお前!
あ、お前もしかして知らないのか…。
“武力(ぶりょく)”のこと。」
『”武力”…?”力”とは違うのか?』
ナルフは立ち止まる。
そしてナイフを前に突き出す。
「”武力”は”力”によって生み出される武器だ。”力”があれば誰でも使える。この先、ここを脱獄するためには厳しい闘いを強いられることになるはず。闘って生き残るために”武力”は絶対に必要だ。」
『なるほど…。俺にも使い方を教えてくれ!』
ナルフは下を向き顔を横に振った。
「悪い、俺は教えらない…。”武力”は練習して使えるようになるんじゃなくて、勝手に目覚めるものなんだよな。俺も気付けばいつの間にかこのナイフが使えるようになっていた。」
男は落ち込む。そして不安が募る。
『嘘だろぉ…。この先どうやって進んでいけば…。隠れながら、誰かに守ってもらうしか…』
ナルフはニヤリと笑い、
再び男と肩を組み出した。
「大丈夫だっつーの!俺が守ってやるよ!」
『だぁあああ!やめろぉ!!』
男はまたナルフを振り払う。
一息ついて礼を言う。
『ありがとな、ナルフ。』
「どういたしまして。さぁ、行くぞ!」
迷路のようなフロアを走り抜け、遂に出口の扉を発見した。2人は一度顔を見合わせて合図し、ナルフが先頭にゆっくりと扉を開ける。
少し開いた扉から陽の光が差し込む。
そのまま扉を開いた。
『……、外だ!!!』
そこは綺麗な緑の木々が生え並ぶ森の中だった。上を見上げると木の間から太陽の光が差し込む。
2人は思わず安堵の表情を浮かべる。
『気持ちいい…!外…、外だ!!』
「あぁ!やったな!あとはこの森をうまく活用して出来る限り姿を隠して遠くまで逃げ切ろう。」
早速遠くの方では争いの音や声が聞こえてくる。
2人は森の中を隠れながら進んでゆく。
そして少し開いた場所に出た。
この辺りは誰もいなく、争った形跡もない。
『ここまで来れば、大丈夫か…』
一息つこうとしたその時、
「脱獄犯、み〜っけ」
どこかから知らない声が聞こえてきた。
2人は咄嗟に身構える。ナルフは少し声を張り問いかける。
「誰だ!?どこにいる…!?」
森の中から1人の男が歩いてきた。
小柄で金髪。薄黄色のマントのような物を身に纏っている。
そして2本の小太刀を持っていた。
ナルフは男の前に立ってナイフを構える。
何かを悟ったのか、手が少し震えた。
その様子を見て金髪の男は不気味に笑う。
「おいおいどうしたぁ?なぁにビビってんだよ?ここまで脱獄してきたのは褒めてやるけど、俺に見つかっちゃぁもう逃げ場はねぇ。さっさと牢屋に帰りな。じゃないと…」
一瞬の出来事だった。
金髪の男から強烈な光が発せられ、気付けばナルフの目の前に移動していたのだ。
2人は驚く間もなかった。
金髪の男が右手の小太刀でナルフに斬りかかる。ナルフはナイフで受け流そうとしたが間に合わず右腕に斬り傷を負ってしまう。
「うわっ…!!」
腕を押さえて倒れ込む。男はナルフに近づきたかったが、恐怖で足が動かなかった。
(一体何が起きたんだ…、なんだよこれ…!?)
金髪の男は血の付いた小太刀を振り払い、
男に切っ先を向ける。
「もう一度言うよ。
さっさと牢屋に帰りな。
じゃないと、、、
殺すよ?君たち。」
〜続く〜
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