〜第3話 脱獄開始〜


『結局”最期の希望”って何だったんだ…』


男はぼやきながら独房を出た。

人の気配、物音は一切しない。

防犯カメラも視認できない。


『変だな…。こういうのって監視の目が張ってあると思ってたんだけど…』


隣の独房の扉の前に立った。


(他にはどんな奴が捕まってるんだろう…)


扉の小窓からこっそり覗いてみる。

独房の構成は男が入っていたものと同じ。


布団で上半身裸の男が横になって寝ていた。

上半身は凄まじい数の傷が刻まれていた。


(…やばそうな人だ…。みんなどうして捕まってるんだろう。)


覗くのをやめ、脱獄に専念することに。


しばらく廊下を進むと、案内図が壁に描かれているのを見つけた。


『お、これは…!えっと、現在地はココで…?出口は……ココか!』


もう少し先に進んだところに”上へと続く階段”があるようだ。


『待てよ、上に続く階段しかないってことは、ここは地下なのか…?まずは地上を目指そう。』



男は階段を目指す。階段に足をかけようとしたその時、上から複数の足音が聞こえてきた。


(…誰かくる!?)


階段を下ってくる音だ。

こちらに向かってくる。


男は足音を立てないように、ゆっくり後退りをする。長い一本道の廊下には隠れるような物陰は無く、ただひたすらに独房の扉が並んでいるのみ。


(まずい…、このままじゃ見つかる…)


複数の足音の正体が確認できた。


鋼のような鎧をまとった人間と、

全長2m程ある大きな犬がいた。


(兵隊と…番犬か…?)


人間の腰には長い剣のようなものを据えている。顔は兜をかぶっているため確認ができない。


犬は全身紫色の体毛に、鋭利な刃物のように尖った尻尾を持つ。牙や爪、目つきが鋭く殺気に満ちている。


男は鎧をまとった兵と犬と目が合ってしまった。





ワンワンワンワン!!!!



犬の激しい鳴き声が廊下に響き、凄まじいスピードで男に向かってきた。


『まずい…!!』


男は来た道を全力で逆走し、犬から逃げる。

しかし犬のスピードは速く瞬く間に追いつかれそうになる。



『くそ!どうする!?せっかく出たんだ!捕まりたくない!!』



男は体勢を崩し転倒しそうになる。

転ばないように壁に手をかけた。




カチッ



手をかけたところは独房の扉だった。

そして扉の鍵が開いたのだ。


(開いた……、そうだ…!)


男は再び逆走を続けた。そしてすれ違う扉を触り、ひたすらに独房の扉を開け始めたのだ。



『扉を開けたぞー!!みんな逃げろー!!』



男が扉を開け走り続けながら叫ぶ。

犬が男に追いつき飛びかかろうとした。


その時、



犬の頭を片手で鷲掴みにし捕らえる大男が、

男の目の前に立っていた。


「はぁ〜、退屈すぎて死にそうだったぜー!!」


大男は犬の尻尾を握り、まるでオモチャのように振り回し何度も叩きつけた。


犬はピクリとも動かなくなり横たわる。


その光景を見てた男は絶句する。


『…す、すごい…』


大男は男を見る。


「お前が扉を開けたのか?感謝する。」


『いえいえ…、みんなでここから脱獄しましょう!』


「みんなぁ…?あぁ、そうだな。」


走り抜け鍵を開けた独房から続々と人が出てくる。知らないうちに50近くの独房を開放していたようだ。



鎧をまとった兵が腰を抜かして倒れ込む。

そして慌てて立ち上がり階段を急いで駆け上がりながら叫んだ。


「大変だぁ!!一斉に脱獄された!!緊急警報を出せー!」




大男は独房から出てきた人達に大声で叫ぶ。


「誰だか知らねぇが、よく聞けお前たち!最高の機会じゃねぇか…、みんなで協力してここから脱獄してやろうじゃねぇか!!」




「「「おう!!!」」」


皆は片手を上げ大男の呼び方に応えた。

男はその間に廊下にある全ての独房の扉を開けた。


独房の数は男の分を含め全部で99個、つまり99人

の独房開放に成功した。


「いくぞぉおおおお!!」



大男の掛け声とともに、皆は一斉に廊下を突き進み階段に向かう。



男も気合を入れて階段へと走る。


『俺も行くか…!絶対脱出してやる…!!』



〜続く〜

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