第5話 対決!?お目付役!?

明らかにガラの悪い五人組。 


揃いも揃ってメンチ切ってきやがるな。


ミコトはバイクから、じゃなかった馬(カンタカ)から降りてゆっくりと五人組ににじり寄りながらモノホンのガン飛ばしを見せつけた。


「あ?てめーらどうかしたかよ?」


ミコトのアクションに驚いたのか五人はお互いの顔を見合わせる。


「逃げたのかと思ったぞ。ガウタマ」

一番の巨漢が言う。


「ああん?この俺が逃げたぁ?ざけんなよ?」


「なら良いが」

嘲るような口調と表情。こいつら…次に口を開いたのは一番左端にいた小男だ。


「苦行などは辞めだ、と言っていたのを聞いたのでな?やはり生まれがよろしいと堪えもきかぬのかと!」

明らかにガウタマのことを馬鹿にしている。ヴィドゥーダバから色々聞いたばかりなので、この目付役というカピラバストゥから送られてきたという五人に対してミコトはいい感情を持っていない。


「苦行、ね。そんなんは意味ないだろ?」


「ほらきた!これだ!」

別の細面の者が言った。面白がっている。最初の大男が後を続けた。

「ならばらここを去るがよい。ガウタマ。苦行から逃げる臆病者よ。ブラーフマナはヴェーダを学び、祭祀により、布施により、苦行により、また断食により、それを識知するのだ」


「そうじゃない。そうじゃない」

ミコトは首を横にふった。五人がわずかにうろたえる。


「本当の苦行ってのは、みんな一生懸命に生きることだ」

ミコトはヴィドゥーダバのことを思い出してそれを言った。奴隷の子などと言われながらも頑張って生きてるんだぞ。

「そういう、自分で火の上を渡ったりとか、水に潜ったりとか、飲み食い止めたりとか、そんなのは本当の苦行じゃねーよ。自分と仲間を信じて生きるんだよ。苦しくても」

ミコトは足元にあった石を拾い、苦行林の焚き火に向かって投げた。薪が崩れて火が五つに割れる。ほどなく空が曇り、すぐに雨が降ってきた。五人組がどよめく。


「と、とにかくガウタマよ、苦行を辞めるのならここにいる必要はなかろう!去るがいい」


そういいつつ五人組の方からミコトの前より逃げるように姿を消してしまう。いっぱつケンカでも売ってやろうかと思ってたミコトは拍子抜けしてしまった。じゃあどこに行こうか。何の考えもないままに歩き始める。カンタカがついてきたが跨がる気にもなれない。愛車のバルカンならカッ飛ばしてくんだけど…


腹、減ったな。食い物…コンビニなんてある訳ねーよなー。


どうしよ。狩り、とか?採取、とか?モンハンみたいに?じょーずにやけましたー♪なんて?


とにかくミコトは芝を見つけて寝っ転がることにした。横になっても腹いっぱいにはならないが、疲れてもいた。あの五人のとこに戻ってもなぁ。でも狩りとかそういうこともしたことがない。正直困った。異世界転生ならこう、すぐ、カワイイ女の子が一緒に来てくれたりなんかしてさ?


とか考えていたらカワイイ女の子に上から顔を見られていた。

 

「おわっ!?きみ、だれ?」


「わたしはスジャータと申します。修行のかた」


「スジャータ??知ってる知ってる」


「本当でございますか」


「知ってる。知ってるよ!スジャータ〜スジャータ〜って歌も!」


ミコトはそこだけしか知らなかった。しかしその娘はどうやら嬉しい様子だった。


「ありがとうございます。修行の方。お布施の乳粥でございます。お召し上がりになられますか?」


「あ、おう」


腹が減って減ってこの際なんでもよかった。


「うめぇ。うめぇな、スジャータ!」


穏やかな時間が流れた。元気になったミコトは、せっかくなので近くに流れていた川で身をキレイにすることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る