第3話 パセーナディー王
ミコトは王の天幕に倒された。横から現れた王様に対して一同が膝をついて礼をする。ミコトはどうしようかと思ったが、まあ、おんなじようにした。
パセーナディー王は片手を上げて答礼をすると、着座し深いため息をつく。
「楽にしてくれ、ガウタマどの。出家したと聞いているが、そちも王族だ」
一同が円座に座り直す。とりあえずミコトもそうした。
「忌々しいアジャータサットウめ。賢きひとと聞いておるが、どうすべきか、ガウタマどの」
直球にパセーナディー王はミコトに聞いてきた。そういうのは嫌いじゃなかった。
「悪い仲間に囲まれてるやつは、どうせすぐ裏切られる」
ミコトはあのピーマン頭を思い出して答えた。パセーナディーは鋭い眼光をミコトに浴びせ、先を続けさせる。ミコトは天幕の中を見回して続けた。
「王さまは負けて、今夜は嫌な夜を過ごすでしょ。でも良い仲間に囲まれているならきっと大丈夫」
ミコトは家臣たちの表情をみて取って、スーサイドラビットの仲間を思い出して王様をとりあえず励ますことにした。ケンカで負けて、イッパツで解散しちまうチームもある。でも、負けても楽しい仲間たちとなら次の日にはバイクにまたがってる。そーゆーもんだろ?
「…うむ」
パセーナディーだけでなく、家臣たちも思わず顔をほころばせた。確かにそうだ、という空気になる。
「でもこのままじゃダメだ」
ミコトの言葉に空気が凍る。
「ではどうすればよいか。ガウタマどの」
ミコトは隣にいたヴィドゥーダバをみて、またパセーナディーの方をむいた。
「気合いが入ってて、タフなヤツらを国中から集めんだよ」
ここでヴィドゥーダバから小声でツッコミが入った。父王に敬語を。あっ、まーね。王様だかんね。
「…集めるんです。例えばこのヴィドゥーダバみたいなヤツを、です」
「ほう。しかし国中の勇敢な者は既に兵に雇っておるぞ」
「いえ、ヴィドゥーダバみたいなヤツはまだいますよ、王さま」
パセーナディーは少し考え込んだ。そして、バン!と膝を叩いた。
「ガウタマどの、ガウタマどのは、四姓に拘らずに勇敢なものを集めよと申すのか!?」
「そう!姿勢とかカッコとかそんなんじゃなくて、ビビリじゃないマジで根性の入ったヤツがいいっスよ!」
場がざわめく。パセーナディーは腹を決めたようだ。
「あいわかった。ガウタマどのの言われるとおりにいたそう。そうとなればシュラーヴァスティーへと直ちに戻るぞ!」
「父王よ!」
立ち上がったパセーナディーに声を上げたのはヴィドゥーダバだ。
「その新たな部隊、ぜひわたくしにお任せを!」
「うん、それがよかろう」
親子は連れ立って話しながら天幕を出る。その後ろ姿にミコトは屈託のない笑顔を浮かべてマブダチを見送るのだった。
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