蠱毒
男の通った声が教会に響く。
集まった人々は、目を閉じて、静かに男が紡ぐ言葉に耳を傾けている。中には手を組み、祈る様にする者もいる。
「牧師様、今日もありがとうございました」
全てがいつも通り終われば、人々は男に礼を言いながら帰路に就く。大したものではないと言いながら、中々いい菓子を置いていくものもいる。
そんな人々を見送り、教会の扉に鍵を掛けた男は、身廊を歩き、祭壇の中央に掲げられた十字架を見上げた。
「エリック、そろそろ凡人の味には飽きてきたぞ」
ゆらり、と男の影が動くのと同時に声が発せられた。しかしその声は、男のものではない。
「この地にこの教会を建てて約百年。あの忌々しいドラゴンが力を失って、お前に喰われて十二年。憎たらしいオーガが消えて五年……色々してきたけれど、まぁ確かに、そろそろ食べ頃かね?」
じゅるりと男が舌舐めずる音がいやらしく響く。
それとは別に高笑いが響く。
教会に似つかわしくないその光景を見ている者は、誰もいない。
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