10話.[そのためになら]
「佳子、また朱美を家に上げたらしいな」
家にやって来た瞬間からお怒りモードだった。
なんとか直してほしくてお菓子などをあげてみたものの、この程度では満足してもらえず。
「はぁ、だから連絡をしてくれって言っただろ?」
「ごめん……」
朱美ちゃんから言わないでくれと言われていたからどうしようもなかった。
それでも彼女が恋人なんだからちゃんと連絡をしておくべきだったと後悔した。
「もういいよ、ほら、正座なんてしてないでちゃんと座って」
「う、うん……」
ソファに座っている彼女の横に座って休憩。
そうしたら抱き寄せてくれたからそのまま甘えておくことにする。
「佳子、次は一緒に勉強しようね」
「うん」
「今度こそ佳子に勝つから」
「はは、これまでずっと負けていたんだけどね」
仮に朱美ちゃんが今回もまた教えてくれるのだとしても同じようにはできないと思う。
前回は勝って告白をする、そういう目標があったからなんとかできただけ。
だから今回みたいに頑張ろう、だけではどうにもならないのだ。
「わたしが勝ったらあれをしようかな」
「あれ?」
「キス」
キスか、そのためになら頑張れるかもしれない。
「よりも先のこと」
「えっ!?」
「はは、まだキスもしたことないのに早すぎるか」
彼女は立ち上がって伸びをする。
「とにかく、そういうつもりでいてよ」
「ま、負けないよ」
「うん、佳子が勝ったらその先までしようね」
うぇ、じゃ、じゃあ勝たない方が……。
い、いや、常に上を目指し続けることが大事だ。
だから頑張ろうと決めたのだった。
04作品目 Nora @rianora_
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