09話.[できると信じて]
「朱美ちゃん、この前のお礼がしたいんだけど」
新しく買ったばかりの本を読んでいる彼女に言ってみた。
私は読んでいる最中は邪魔されたくないけどしょうがないことだと片付けて。
「別にいいわよ、佳子が一緒にいてくれればそれで」
「え、だって朱美ちゃんがいたからテストで高順位を取れたわけだし」
あれによってお母様も認めてくれたのだから。
彼女は私にとってかなり嬉しいことをしてくれたんだ、だったらお礼をしたいというかお礼をしなければならないというものだろう。
一緒にいることがお礼とはならない、だってそれは私が望んでいることだから。
だからその点でもお礼をしなければならないのはこちら側だということになる。
「じゃあ、愛梨と仲良くしなさい、そうしてくれれば十分よ」
「それはするよ。でも、朱美ちゃんへのお礼とはならないよ」
「ならなにができるの?」
彼女は寝転ぶのをやめて座ってからこちらを見てきた。
なにができる、か、確かにそう聞かれると絵を描くぐらいしかしてあげられない。
さすがにそう何枚も描いてほしいわけじゃないだろうし……。
「ふふ、大丈夫よ、本当にあんたがいてくれればいいから」
「あ……うん」
「そんな顔をしない、またテストがくるんだから」
「多分、次は絶対にあんなのは無理だと思う」
「教えてあげるから大丈夫よ、また愛梨を驚かせられれば十分だから」
そう言った彼女はとても楽しそうだった。
確かにああいう驚き方はなかなか見られないから少し分かる。
よしそれならと、頑張ってみようと決めたのだった。
彼女もいてくれるからできると信じて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます