第2話 懐かしい
お父さんからプレゼントしてもらったドレスの裾は泥で汚れ、髪は走ったせいでぼさぼさになっていた。
お母さんと過ごしたあの家に帰りたい。
みんなと笑って過ごしたあの町に帰りたい。
涙で視界がぼやけなかば諦めていた時だった。
『おい、お前らなにやってんだ!』
この声、デオン?
そんなわけないか…
そこから私は暗闇の中へ落ちていった。
なんだか長い夢を見ている気分。
夢で私は春から社会人になり新入社員として入った会社で上司からの嫌がらせに耐えきれず、自殺をしていた。
親に捨てられ叔母の元でゴミのように育った、これって誰の記憶なんだろう…
そこで目が覚めた。
私はベッドの上で寝ていた。
綺麗な部屋…私死んだ?ここは天国?
しばらくして男の人が1人部屋へ入ってきた。
『目が覚めたのか。大丈夫か?』
『…?!』
誰?!
私は売られたのだと思い出し、必死に窓の方へ走った。
『ごめんごめん、大丈夫だよ。何があったかは知らないが、僕は君に危害を加えたりするつもりはない。』
彼がそう言った時、もう1人男の人が入ってきた。
よく見ると見覚えがある。
『え?!デオン?!!!デオンなの?!』
私はまたも驚きデオンを凝視した。
『ティシャ…心配したんだぞ。怪我はないか?なんでお前あんな所に居たんだ。』
安堵の表情をしたデオンはどこか大人っぽくなり、でも昔の優しいお兄ちゃんの様な雰囲気は残っていた
デオンを見た瞬間、私は心から安堵しぐずれ落ちた
彼に今までのことを泣きながら全て話した
まるで赤子のように泣く私の背中を優しく撫でながら彼は怒りで震えていた
『怖かったな。もう大丈夫だから。
よく頑張った。』
そう彼は小さい頃のように慰めてくれた
私とデオンはすっかり忘れていたのだが、先に入ってきていた男性が『もうそろそろ僕も挨拶させてもらえるかな?』とにこやかに近づいてきた。
『僕の名は、レオラードルと申します。デオンとは…同僚みたいなところかな』
にこやかに笑う彼の印象は好青年といった感じだ。
『勝手に挨拶するな!そもそもな女性の部屋に勝手に入っちゃだめだし、あんな事があった後に知らない男が居たらこいつがびっくりするに決まってるだろ!!』
『それは悪いと思っている。申し訳ない。
それで今までの話を聞かせてもらったが、
我が国では人身売買は禁止とされています。
それをもし行ったものは辛い罰則が与えられるでしょう』
そんなレオラードルの説明をよそに、デオンが口を開く。
『お前の父親とかいうその男。今はどこにいるかわかるか?お前の家か?』
『わからないの…』
なんであんな優しかったお父さんは私を売ったの?
どんどん表情が暗くなっていく、指先も冷たい。また1人になったんだ
『ティシャ嬢は今は身体を休ませて下さい。僕達は少し用があり出ますが、使用人はいますし護衛も付けてますのでご安心しておやすみください。』
そういうと彼らは部屋から出ていってしまった。
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