売られた少女、実は聖女様?!
@mizinkosan
第1話
これはよくある前世の記憶を持ったある女の子の物語
いつも通りの朝、まだあの男が来ることを私は知らなかった。
寒い冬が終わって少し過ぎお昼寝するのにちょうどいい風とお日様の春日和のある日
『やあ、ティシャ!おはよう!』
『デオンおじさんおはよう!』
『今日は気持ちの良い朝ね!
デオン元気に頑張ってるかな?なんだか少し寂しい』
デオンは私の幼馴染みのようなもので、彼は1年前から王都で騎士をしている。
こんな田舎から騎士へなんて大出世なんだとか
『大丈夫だ。あいつはなんたって俺の息子だから心配いらないよ。
今年の冬には帰ってくると言っていたから
その時は会ってやってよ!
まあ、言わなくてもあいつはすっ飛んでくと思うがな、ハハハ』
まさかデオンが帰ってくるなんて楽しみ!
今日はなんだか良いことが起こりそう!
そんな気持ちでルンルンであったティシャはいつも通り市場で買い物をして家へ帰宅した。
『少し疲れたし今日はお茶お飲んで刺繍を仕上げてしまおう!』
その時。トントン。ドアを叩く音が部屋に
響いた
『はーい』
ドアを開けるとそこにはヒゲを生やした体格のいい男の人が立っていた。
私は誰だかもわからず戸惑っていた、そうすると彼は泣きながら徐に何かを取り出し
衝撃の言葉をはっした。
『俺はお前の父親だ。母さんが死んだと聞いてびっくりして駆けつけたのだ。大きくなったなティシャ。ほらこれがわかるか?』
その男が父親だと言うことにも驚いたがなによりも驚いたのがその男が持っていたペンダントだ。それはいわゆるペアルックで2つの柄を合わせると一つの模様を作り出すものである
この人がお父さん…?
最初は戸惑ったもののすぐに打ち解けあい、一緒に暮らすことになった。
母は去年亡くなった。それからはこの家で1人で住んでいた。
市場で見る家族の姿が私には時々羨ましく見え、そんな私にお父さんができたのだ嬉しくないわけがない。
私はそれから優しい父とても幸せな家族の時間を過ごした。
だがある日父が変わってしまった。私を家に置いて鍵をかけ外に出られないようにしたのだ。最初は脱走を試みたもののお父さんと幸せに笑って過ごした3ヶ月を思い出し、またあの日のお父さんに戻ってくれると信じ私は耐え続けた。
そのうち1日1回の残飯にカップ1杯の水。
それが当たり前になり帰ってくるなり暴力を振るうこともあった。
私は辛かった。
『お母さん。会いたいよ。お父さんが怖い…、助けて…』
いつまでこの苦しみを耐えればいいのかわからず1人泣きながら母からもらったペンダントを辛い時、手から血が出るほどに何度も何度も強く握り締めて耐えた。
そんなある日のこと、お父さんが綺麗なドレスを私にプレゼントしてくれた。私は嬉しくなり早速着替えた。
『おお、綺麗じゃないか。』
お父さんがまた優しく笑ってくれた!
嬉しい
『さすが俺の娘!絶対に似合うと思っていたんだ!ティシャは世界一綺麗だ!午後から久しぶりに俺と出掛けしよう』
私はさらに嬉しくなり髪の毛をまとめ、久しぶりにお母さんが残してくれたリップも塗った。鏡に映った自分の姿は、自分が言うのもおかしなくらい綺麗に見えた
痩せこけた頬と腕は見るに耐えなかったが、お母さんと同じピンク色の髪にエメラルドグリーンの瞳は見惚れるほどドレスと相まって綺麗さが増したように感じた。
そしてお父さんと2人出掛けた。
久しぶりの外はすっかり寒くなり、葉が生い茂っていた木々は寒々しく枝だけになり地面には霜柱が立っており歩くたんびにサクサクと音を奏でていた。
『デオンおじさん久しぶり!』
『ティシャ!!!!心配してたんだぞ!!
具合が悪いとお前の父親とかいう奴に聞いて街にも全然来ないし本当に心配していたんだ。お前の家に行っても会えなかったしな。こんなに痩せてもう体調は戻ったのか?』
『大丈夫よ、デオンおじさん。今日はお父さんとデートなの!』そう笑っているティシャの目は輝いていた。
デオンおじさんこと、デルトはその目を見て心配だったが少し安心し2人を見送った。
2人は市場を抜け森を抜け隣の街まできた。
久しぶりに仲良く手を繋ぎ色んな所を見た
『ほらここのジュースは美味いぞ』
『本当だ!すごい美味しい!!
でもお父さんから飲み終わったらもうそろそろ帰ろ?帰る頃には暗くなっちゃうし夜の森は危ないってお母さんが言ってたの。』
私は森に入る頃から少し違和感を感じていた、なぜなら隣町はあまりいい噂を聞いたことがなく子供の私でも近づくべきではないとわかっていたからだ。
その違和感というより勘ははかなくも当たってしまった。
お父さんは少し暗い怪しげな酒場へ私を連れて行った。私を見る周りの男達の目はニヤニヤして気持ちが悪かった
急に1人の男が大声で言った。
『10コインからスタートします。これからの成長が楽しみですね〜』そう言いながらこっちも気持ち悪く笑っていた
その声を待っていたかのように周りの男達が、『20コイン、100コイン、1ゴールド、10ゴールド』と声を荒げ言い始めた。
そこでようやく私は父親に売られたのだと、全身の血が足に流れていくような脱力感、心に穴が空いたようになにも考えられなくなった。
いつの間にか男達の荒々しい声が静まっていた。
1人の男性がお父さんと話終わると私の元へ来て、『さあ行くよ、今日からお前は俺のだ!たっぷり可愛がってやるよ。早くこいよ!』
腕を強く引っ張られ外に連れ出された私は精一杯の力を振り絞り、男にタックルし全速力で走った。
冷たい風が身体中を冷やし耳が取れそうにな感覚が私を襲った。それでも生きたい。絶対にあんな男の元へは行きたくないそんな一心で走り続けた。
森が見えてきた頃、捕まる。もうこれまでなんだ。そう諦めかけた。
その時馬に乗った2人組が森に入ろうとしているのが見えた。
もうこれしかないと思い、残りの力を振り絞り叫んだ。
『助けて!!!!!!!!!』その瞬間私は転んだ。
『もうだめだ…』
意識が遠のき男に腕を引っ張られ身体を起こされた。
『このクソ女。帰ったら覚えとけよ。連れてくぞ。』
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