第3話 頑張れ! ジャスティス8!

 再び合成鬼竜を呼び寄せ超高速でニルヴァを目指す。


「流石合成鬼竜だな。もうこんな所まで」

「こんな事朝飯前だ」


 既にエルジオンの上空を通り過ぎニルヴァまで時間はかからないだろう。


「それにしてもブラック8、厄介な奴らだな」

「そうだね。ヌームさん達とまるで同じ姿をしているけど、皆さんは何か知らないのかな?」


 その問い掛けは8体に投げかけられた。


「申し訳ありませんが、我々には思い当たる節がありまセン」


 他の7体にも黙り込んでいる状況から答えは出ない。


「そもそも、貴方達は一体何者なの?」

「我々はミグレイナを守護する為に生み出された汎用ロボットです」


 依然とした周知の答えが返ってくる。これ以上明確になる事がないと思ったのかアルド達も問い詰めるのを止めた。やがて雲海を抜けると前方にはニルヴァが見えて来た。


「見えて来たぞ。そろそろ準備しろ」

「ありがとう合成鬼竜。 気を引き締めていくぞ!」


 ニルヴァに到着したアルド達は状況の確認を試みる。


「助けてくれ!」


 宿屋の方から1人、中年の男が助けを求めて来た。


「大丈夫か!?」

「いきなり3体の黒いロボットが襲いかかって来て町中で暴れ出したんだ!」

「その3体はどこに!?」

「さっき1体がマクミナル博物館の方へ向かって行くのを見た!」

「分かった! 行こう!」


 そしてマクミナル博物館に急行するとやはり漆黒の1体が破壊活動に勤んでいた。


「いた!」


 持っていたアックスを引き下げゆっくりと振り返った漆黒のロボットは先程の3体とは少しばかりタイプであった。


「ガガガ、待っていタゾ! 我らの使命遂行を妨げる反逆者供! 我はブラック08の8体が1体、ブラック04! 貴様らの事はブラック01の通信により知り得てイル!」

「今度は違うやつか! 今すぐ破壊を止めるんだ!」

「止めろと言われて止めるロボットがいると思ウカ! 来い! ブラック05! ブラック06!」


 ラウラ・ドームと同様にどこからともなく黒い2つの影が現れた。2体はそれぞれランスと弓を手にしている。


「ガガガ、ブラック01達は敗れた様だが俺達はそうはいかンゾ!」

「来るぞ!」


 武器を構え攻撃に備えようとすると、またしても8色の装甲が間に躍り出る。


「お前達の野望は我々”ジャスティス08が食い止メル! 行クゾ! 仁!」

「義!」

「礼!」

「智!」

「忠!」

「信!」

「孝!」

「智!」

「合体!!」

「今度こそ成功か!?」

「あれ?」


 ポーズは決まったがやはり変化はなく、場が静まり返る。そしてアラートは鳴った。


『認証失敗。システムエラー』


「今ダ!!」

「グアアア!!」

「ダメかー!」


 再々度漆黒の猛襲を受けジャスティス8は生垣へ吹き飛ばされた。


「なんとなく分かってた事だけど行くぞ!」


 3度目の戦闘が開始される。だがラウラ・ドームの時は違い3体は定位置から離れずにフォーメーションを編成している。前方のブラック06から数発の矢が放たれるとアルド達は回避して行くが気が付くと1カ所に誘導され4人はぶつかる。


「痛!」

「なんと!?」


 固まった所にブラック04がすかさず距離を詰め、手にしたアックスを思い切り振りかざすと右上から左下に振り落とす!


「危ない!」


 咄嗟にフィーネは”天使の唄”で防御強化を図ろうとするが間に合わない。アックスの曲線の刀身がかすめようとした瞬間、リィカが前線に躍り出てハンマーでその攻撃を受ける。アックスとハンマーの間からは赤い火花が飛び散りギギギと甲高い音が響いた。なんとか攻撃を受け切るが4人は勢いから後方に吹き飛ばされた。


「……く! リィカ助かったよ」

「お安い御用デス!」

「皆避けて!」


 連携攻撃は未だ終わっておらず、今度はブラック05のランスが飛び込んでくる。

それに反応した4人はすぐに立ち上がり体勢を立ち直すが再びブラック06の矢が放たれると散り散りになり、すぐ1カ所に誘導されて行くのであった。


「くそ! 遠距離攻撃が厄介だな!」

「近付けない!」


 距離をおかれてからの連携攻撃にアルド達は成す術なく防戦一方になる。フィーネは必死に補助魔法でサポートするが、ブラック06にほんの一瞬の隙を見出されると一本の高速の矢がフィーネに向かって放たれた。


「フィーネー!」

「きゃああああ!」


 フィーネは目蓋を瞑り万事休すかと思われた時、生垣から一本の矢が放たれ、突き刺さる前に撃ち落とされた。


「ミグレイナの平和は我々が守ル!」

「セースさん!」


 セースの矢を筆頭にジャスティス8は自身の武器を3体に放り投げると3体のフォーメーションは崩れ散り散りとなった。


「よし今がチャンスだ」


 アルドはブラック06の方へ走り出し向かって来る矢を叩き落としながら距離を詰めて行く。エイミはブラック05のランスの高速の一突きをスレスレで潜り躱す。 サイラスはブラック04の強烈な一撃を受け弾き大きな隙ができた所にリィカとスイッチした。


「クラッシュスタンプ!」

「トリプルダウン!」

「竜神斬!」


 3人の必殺技はクリティカルヒットし3体のロボットは同時に倒れた。


「やったか!?」

「この感じお約束だと思うけど!」


 エイミの予言通り、3体はショートを起こしているが立ち上がって来た。


「ガガガ、まさかこれほどトハ。一旦引くとしヨウ。しカシ、次が最後の戦いとなるだロウ!」


 そして3体は飛び上がり姿を消して行った。


「逃げられたか! 皆大丈夫か!?」

「私達は大丈夫だよ。それより」


 抜け出せないままだった8体を生垣から引き摺り出すと再びセバスちゃんの診察が開始する。


「今回も大丈夫。凹みが増えただけ。……それで今回の合体失敗の理由だけれど……」

「また誰かが間違えたのか?」

「そうね」


 視線はクートに向けられた。


「申し訳ありまセン」

「何度も言うけど気にするなって。それに今回はジャスティス8に助けられたよ。ありがとう」

「ありがとうございました」


 ジャスティス8は頭部の光を点滅させて喜びの感情を表している様だった。

またセバスちゃんの説明は終わっていなかった。


「起動コードに失敗したのは事実だけれど、一つ致命的な欠陥を見つけたわ」

「致命的な欠陥?」

「改めてヌームの構造を確認したのだけれど、一つの空間があって恐らくコアパーツが足りていないのよ。恐らくそのコアパーツがない限りは起動コードも認証される事はないわ」

「そのコアパーツはどこにあるんだ?」

「それについても色々と調べてみたわ。そのコアパーツがあるのは工業都市廃墟の隠しラボにあるみたいなの」

「よし、それじゃあ工業都市は行ってみよう」

「ちょっと待っていつブラック8がいつ破壊活動を行うかもしれない状況でそんな余裕があるの?」


 エイミの言う事にも一理ある。しかし、アルドは少し悩んだがエイミに告げる。


「さっきみたいにジャスティス8がいなかったら俺達はやられていた。この先きっと力が必要になると思うんだ」

「私もそう思います!」

「拙者も同じく思うでござる!」

「戦力は整っていればいる程安心デス! ノデ!」


 説得されたエイミは腕を組み考えた後、決心した。


「そうね、ジャスティス8の底力を信じるわ」


 再び合成鬼竜を呼び出し今度は工業都市廃墟へ急ぐアルド達。


 ニルヴァから近い距離にある工業都市廃墟は合成鬼竜にかかればも距離もないのと同じだ。そして姿を現した目的地を甲板から眺めているとジャスティス8の様子が今までとは違った。


「どうしたんだ?」

「何故だか分かりませんが懐かしい感覚デス」

「やっぱりヌーム達が誕生したのはかつて栄えていた工業都市って事なのかしら?」

「それは分かりまセン」


 会話もそこそこに到着すると施設内部へ足を進めた。施設の機能は停止しており明かりはない。セバスちゃんオペレートの下、リィカを先頭に進んでいくと突き当たりに辿り着く。


「何もないぞ?」

「いえ、ここに間違いないわ」


 するとどこからともなくレーダーがジヌーム達を感知し音声ガイダンスが流れ始めた。


『対象個体認証しました。解錠いたします』


 そして突き当たりの一角に隠し扉が現れた。


「なんとキテレツな」

「さぁ行こう」


 奥へ踏み入れると中は円形の部屋が広がっており、壁際には8つのカプセルが縦に並んでいる。そしてその部屋の中央、赤いロボットが8つのカプセルに接続された機械仕掛けのボックスを抱いたまま活動を停止していた。その光景を呆然とアルド達は見ていたが、突如システムが稼働し始める。


「動き始めた!?」


 そして中央にホログラムが起動し映し出されたのは2体のロボットだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る