第2話 集結!
ヌームを背負い向かったのはガンマ地区セバスちゃんの住宅。彼の修理を依頼し待つ事数十分、奥の部屋からピンク色のツインテールを揺らしたセバスちゃんが戻って来た。
「ふう」
「セバスちゃん! ヌームは無事なのか!?」
「軽い破損だけで済んでいるから大丈夫よ。機能が停止したのは緊急防御システムが作動した為ね」
「良かったぁ」
「セバスちゃん、ありがとう。いつも助けてもらってばかりね」
「気にしなくても良いわ。それに面白い事も分かったし」
「面白い事?」
セバスちゃんは部屋の一室にある映像ホログラムを起動させるとヌームの内部構造の映像を映し出した。
「見てわかる様に、現在のAIアンドロイドとは全く別の構造でヌームは作られているわ。特別珍しい何世代も前の構造がベースとなっているの」
「ナルホド!」
「機体の照合は計ってみたけれど、該当はなく何処で生まれたかは分からなかったわ。核となるコアには1/8と刻まれ、プログラミングも暗号化されていてとても謎の多い機体ね」
それからセバスちゃんの講義は続いたがリィカを除く全員が全く理解に追いつかない様で今にも頭から蒸気を吹き出しそうだった。
「内容は良くわからないけど、とにかくヌームが無事で良かったよ」
「それで一番興味深い所なんだけど、恐らくこの機体には最大の特徴があるはずなの」
「最大の特徴?」
「それはね……合体するの!!」
セバスちゃんの目が一気に光り輝く。
「このジョイントパーツ! 普通は要らないはず! けれど搭載されている物には必ず意味があるわ! それで注目したのが1/8というシリアルナンバー! これは他に存在する7体がきっと関与しているはずなのよ!」
「それは胸が熱くなりマス!」
熱弁が続く中で先程セバスちゃんがいたメンテナンス室の扉が開くと奥からヌームが現れた。
「ヌーム! もう起きて大丈夫なのか?」
「ハイ。システムオールグリーン。問題ありまセン」
ヌームに異常が無いと分かると安堵するアルド達だったが少しの間、ヌームは黙り込んだ。
「ん? どうした? やっぱり調子が悪いんじゃ無いか」
「……危機が迫ってイマス」
「え?」
「かつて無い危機が迫ってイマス!」
突如としてヌームの出力があがりヒートアップした。
「おい、一体どうしたんだ?」
「我々”ジャスティス8”は今こそ集結し窮地に立ち向かう時が来たのデス!」
「ジャスティス8?」
「ハイ。汎用とは表向キ。計8体作られた私達の実態は八猫伝の様にミグレイナを守護する為に作られたロボット戦隊なのデス!それこそ”ジャスティス8”!」
「ほほう! 八猫伝とは!!」
「知っているのか? サイラス?」
「我が故郷では知らぬ者はおるまい。世界に脅威が現れた時、各地に散らばった仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌を持つ8匹の猫が集結し悪を滅ぼす感動物語でござる!」
「シークレットコードが作動するのかしら! やっぱり合体するのね!!」
サイラスはゲコゲコと喉を膨らませ、セバスチャンは更に目を輝かせた。
「事態は一刻と迫っていマス! 同胞を探しに行かなくテハ!」
「待った待った! 焦る気持ちも分かるが病み上がりの体で1人行くのも心許ないだろ。俺達も一緒に探すよ」
「お心遣いありがとうございマス! 是非お願いしマス!」
「それで他の7体は何処に?」
「それが私自身にも分かりまセン」
「リィカ、何か分からないか?」
「機体情報がない為探知出来まセン! ノデ!」
「そうだと思ってメンテナスと同時に同じ反応を探知出来るレーダーを作っておいてわ」
「さすがセバスちゃん! やっぱり天才ね!」
セバスちゃんは先程のホログラムの映像を切り替えてレーダーマップを映し出した。
「ええと……。え? もう7体集まってる。それにここって……」
セバスちゃんが目を丸くしてレーダーを見るとアルド達もそれを覗き込んだ。
アルド達はレーダーが7体の反応を示す場所へ向かうと何とそこはエルジオン、ガンマ地区内にあるシアターであった。中に入ると次の上映を待ちわびている人や上映後にの余韻に浸る人でごった返している。そして上映されていた映画が終わったらしく劇場の扉が開き中から人の波が押し寄せて来た。
「本当にここにいるのか?」
疑心を募らせていると人の波も収まる。すると劇場内からガチャガチャと機械音が近づいてくるのに気が付き現れたの7体のロボットであった。
「やはり、バトル・オブ・ミグランスは最高デス!」
「何回見ても飽きる事はありまセン」
「クライマックスは涙せずには見られませんでシタ」
「いつ見てもミーユ王女様は可愛いデスネ」
「ミグランス王はいつ見てもカッコイイ」
「気が付いたらポップコーンがなくなっていまシタ」
「コーラも買っておけば良かったデス」
その平和ボケした状況下でヌームが前に躍り出た。
「同胞達ヨ! やはり貴方達もミグレイナの危機を知り駆けつけて来たノデスネ!」
ヌームに気が付いた7体は何の事だか分かっておらず思考回路が停止している様だった。
「今こそ我々の使命を果たす時デス!」
オーバーヒートしそうな様子に演算処理を行なったのか7体は話を合わせ始めるのであった。
「もちロン!」
「我々はミグレイナの守護!」
「全ての命を守る為!」
「持てる力を使イ!」
「全ての悪ヲ!」
「打ちまかサン!」
「戦いに備えバトル・オブ・ミグランスで気持ちを高まらせていたのデス!」
「我らこそ! ジャスティス8!」
「……なんか、違う気がする」
アルド達は拍子抜けしているとリィカがセティーの緊急通信を受信した。
「アルド、聞こえるか? たった今ラウラ・ドームにて正体不明の漆黒のロボットが暴れているとの緊急シグナルを受信した。直ちに向かってくれないか?」
「本当か!? 直ぐに向かおう!」
「イザ! ミグレイナの平和の為に!」
エアポートに向かい合成鬼竜を呼ぶとものの数秒で現れた。
「合成鬼竜! 今すぐにラウラ・ドームに向かってくれ!」
「承知した」
「よっしゃー! ラウラ・ドームに向かって全速前進!」
アルド達は乗り込むと雲海の中を超高速でラウラ・ドームへ直行する。そしてその地に降り立つと至る所で悲鳴が上がっていた。
「くそ! もうこんなにも!」
「酒場の方が騒がしいわ! 行ってみましょう!」
酒場前まで来ると小さな火が上がっておりその中には漆黒のロボットが破壊活動を行なっていた。
「止めるんだ! ブラック01」
「遅かっタナ。既にラウラ・ドームは我ら”ブラック8”が制圧シタ! 来イ! ブラック02! ブラック03!」
すると何処からともなく剣とハンマーを携えた2体の漆黒のロボットが現れる。
「ブラック02!」
「ブラック03!」
「フフフ、まだまだ本領発揮とはいかないが3本の矢はそう簡単には俺はしなイゾ。この前の様に行くと思うナ!」
漆黒の3体は攻撃体制を取った。それに乗じてアルド達も武器を構えた。
「そうはさせナイ! 行くぞ! ジャスティス8!」
その掛け声に8体の色とりどりのロボットはアルド達を差し置いて前に出る。
「仁!」
「義!」
「礼!」
「智!」
「義!」
「信!」
「孝!」
「悌!」
「合体!!」
「本当に合体するのか!?」
「遂に合体するのね!!」
リィカから発せられたセバスちゃんの声は歓喜している。8体はそれぞれポーズをと取り、アルド達はドキドキと事の始まりを見守ったが一向に何かが起こる気配はない。そして彼らに内蔵されたシステムからアラートが鳴る。
『認証失敗。システムエラー』
「……隙アリ!」
静止していた3体は察したのか、動き始めジャスティス8に襲いかかった。
「グアア!!」
そして虚しくもジャスティス8は一蹴され、エルジオンでのデジャヴの様に道の横の生垣へ吹き飛ばされていった。
「ジャスティス8!!? くそ! 皆行くぞ!」
アルド達も動き出した! フィーネが「えい!」と後方より”天使の唄”を掛けサポートする。アルドはブラック02と、エイミはブラック01と、リィカとサイラスはブラック03に応戦する。剣と剣が交錯する中でアルドは前回とは違う事が分かった。
(なんだ!? 思っていたより手強いぞ! エルジオンで出力の10%も出していないと言っていたのは本当だったのか?!)
近くで応戦するエイミ達もてこずっているのが分かる。
(けれど、倒せない相手じゃない!)
それぞれ均衡を保っていたものの徐々にアルド達に情勢が傾き漆黒の3体は押され始めた。そして3体が1カ所に固まった。
「乙女の誓い!」
速度を増したアルド達は一気に畳み掛ける!
「今よアルド! サイラス!」
「絶好の好機デス!」
「うおおおおお!!」
アルドとサイラスにによる剣の一閃がエックスに交差し”天の導き”が炸裂した。
「グアアアアア!!」
吹き飛ばされた3体はガシャン! と音を立て崩れ落ちた。
「やったか!?」
暫くの間、3体は活動を停止していたがやはり立ち上がる。
「やるじゃなイカ。しかし先程も言った通り我々の力はこんな物ではナイ。これから始まる恐怖を楽しみに待っているんダナ! フハハ!」
「あ! 待て!」
俊敏な動きにまたしても逃亡を図られてしまった。
「逃げられたか……」
「長期戦になりそうね」
「ジャスティス8さん!」
生垣で星が回っている8体を引き上げる。それからリィカの視界から遠隔視聴していたセバスチャンに具合を見てもらう。
「大丈夫、装甲が少し凹んだぐらいよ」
「良かったぁ」
活動を再開した8体は自身の力を発揮出来なかった事に疑問を持っている様だ。
「何故力が合体出来なかったのでしょウカ?」
「恐らく起動コードを間違えたせいかと思うわ」
「起動コード?」
「……仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌と唱える時に”義”が重複していたわよ」
「そういえば」
視線はその原因を作ったイーンに向けられた。
「申し訳ございまセン」
「気にするなって次こそは上手く行くよ」
気が休まる事なく再度、リィカがレンリの緊急通信を受信した。
「アルド、ラウラ・ドームの件感謝するわ。すぐに救護班を向かわせる。次から次で申し訳ないのだけれど今度はニルヴァにて緊急シグナルを受信したの。向かってもらえる?」
「く! 今度はニルヴァか! 勿論だ! 皆行こう!」
落ち込んでいたジャスティス8も姿勢を正し奮起した。
「名誉挽回! ジャスティス8!」
「……本当に大丈夫かしら」
ジャスティス8の調子に対し、エイミは溜息し頭を痛くした。
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