汎用戦隊ジャスティス8!
九十九 少年
第1話 襲来ブラック01!
……未来、ガルレア大陸。今となっては廃棄され機能を完全に停止し施設内は物が散乱、光もつかない廃墟となっていたとある研究所がある。また極秘の施設で当時から一般の目に触れられる事も無く現在に至るまで存在すらも世に知らされる事はなかった為、完全に忘れ去られた遺物となっていた。
だが、施設の最深部、寝静まってした空間に偶然にも補助電源が作動したのか突如として大がかりの設備の動作が再開されると、メインコンピューターを中央に円形の室内の壁際に設置されていた8つのガラスに覆われたカプセルに光が灯る。
『システムオールグリーン、オペレーション”ミグレイナ”ヲ実行……』
……
-AD1100年 未来ミグレイナ大陸-
「それにしても未来の武器はいつ見ても凄い物ばかりだな」
アルド達はエイミのグローブのメンテナンスが必要となり曙光都市エルジオン、ガンマ地区のイシャール堂を訪れた。都度都度切り替わる映像ホログラムを眺めているアルド。映し出される武器の中にはアルドの時代でも使われていた様な剣や弓もあったが、最先端のレーザー銃などには特別関心を持っている様だった。
「どうしたのアルド? もし購入するなら安くしておくわよ」
後ろで見ていたイシャール堂の一人娘かつ看板娘であるエイミは待ちわびる間、両手を胸の前で摺り合わせ父親譲りの商売魂をアルドに向ける。
「いや、購入するつもりは無いよ。ただ俺には珍しくて」
「何よ、期待しちゃったじゃない」
”お客様は神様です” とばかりに向けられていた笑顔はサッと消えてその表情は白け、重ねていた両手は腰元に移動した。
「私でも使えるのかな?」
「このタイプでしたら女性も扱えると思えマス! ノデ!」
2人から少し離れた場所でフィーネ、リィカもホログラムに映し出された武器について談義し、フィーネはアルドと同じく武器に関心を持ち合わせ、リィカにレクチャーの様な物を受けている。一方のサイラスは古代の者であるからか「何とキテレツな」と連発していた。
「アルド! これなんてどうだ!」
いきなり割って入って来たのはこのイシャール堂の店主ザオル。その手には剣の柄だけの様なものが握られていた。「それは何だ?」と興味津々なアルドが近づくとザオルは柄にあるスイッチを押すと柄から青い光が伸び剣の様な形を成す。予告も無しに現れたそれにアルドは驚いた。
「これはな、レーザーブレードって言ってな。この超高熱を持った光の刀身で物体を焼き切る武器だ!」
「言ってくれないと危ないじゃ無いか! もう少しで刀身が当たる所だったぞ!」
「すまんすまん! でどうだ?」
「さっきも言ったけど購入するつもりはないよ。俺はやっぱり慣れた物が良い」
「まぁまぁそう硬いこと言わずに!」
流石はエイミの父親。その商売魂は怯む事なくアルドに向けられ、その光景をエイミは苦笑いで眺めていた。
そうして押し問答の最中、入り口のドアが開く。
「ん? おお、いらっしゃい! 頼まれているモン出来てるぞ!」
ザオルが店の入り口に現れたお客へ直ぐ対応を切り替えた。アルドはホッとしたすると同時にそのお客を見ると見覚えのある人物、いや、ロボットが立っていた。
「あれ? ヌームじゃないか」
先程のレザーブレードより濃い青の装甲に包まれ目の様な働きをする二つの赤い光が点灯している汎用ロボット。
「今日はアルドさん ご機嫌いかがでしょウカ?」
「俺は元気だよ。珍しいなヌームがイシャール堂に訪れるなんて。今日はどうしたんだ?」
「私は、不調だったロッドのメンテナスに出していまシタ。そして仕上がったと連絡があったので引き取りに参りまシタ」
アルドが旅を続ける中でヌームに再開したのは久しぶりの事だ。
暫くすると奥の部屋に行っていたザオルが戻って来て手にしていたロッドをヌームに渡す。ヌームはそれを分析すると「ミッションコンプリート」と言って、ロボットから表情に変わりは無いがどこか満足している様子だった。
「所でヌームは今何をしているんだ?」
「私はこのミグレイナに訪れるかもしれない脅威に備えて日々、防衛に励んでおりマス。各所に散らばった同胞達も日夜励んでいるのデス」
ヌームの様な汎用ロボットは他に7体存在している。メンバーはウーオ、トール、オール、イーン、セース、テーム、クート。それぞれ基準となるボディは統一されている様だがカラーや若干の装甲、使用武器に違いがあるのだ。
「そうか、皆にもその内に会いに行きたいな」
「はい、同胞も喜ぶかと思いマス」
「ははは、俺も楽しみだよ」
会話は弾む中で突如として店内にアラートが鳴り響いた。何事かと思いアルド達はイシャール堂を飛び出した。そして外へ出てみるとアラートはエルジオン全体で未だに鳴り響き、ガンマ地区の住民は困惑している。
「何!? ただ事じゃないわ!」
「警戒レベル10のアラートデス!」
「不吉な予感がするでござる」
「怖いよ、お兄ちゃん!」
不安からかフィーネはアルドの腕を掴んでいた。不穏な空気の中でエルジオン内にアナウンスが流れ始める。
『緊急事態発生! 緊急事態発生! 正体不明の信号をキャッチ! 対象はエルジオン内部に侵入!』
そのアナウンスに更に場はパニックとなると何処かで「きゃあああ!」と誰かの悲鳴が響いた。どうやら北にあるショップの方角からの様であった。
「あっちだ! 急ごう!」
アルド達は現場へ急ぐのだった。
そしてショップの前に辿り着くと辺りには物が散乱た人々やロボットは逃げ惑う光景が広がっていた。
「ひどい!」
「誰がこんな事を!?」
悲惨な状況に怒りが込み上げてくる中、一つアルド達に向かってくる影。段々と現れて来たのは何とヌームと瓜二つのロボットの姿だった。違う点としてはその装甲が漆黒に覆われているのみだ。
「ヌーム殿にそっくりでござる!」
「これはお前がやったのか!?」
漆黒のロボットは赤く光る目を何度か点灯させた。
「我はガルレアの戦士”ブラック8”の8体が1体、ブラック01! ミグレイナの崩壊の時は来たノダ!」
「どう言う事?!」
唐突に発せられた言葉に耳を疑う中、ヌームは先頭に立った。
「このミグレイナを危機に陥れる者は許しまセン!」
するとヌームは先程イシャール堂から戻って来たばかりのロッドを振りかざし漆黒のロボへ飛びかかって行った! しかし、ロッドを振り落とした瞬間、漆黒のロボは自らのロッドを右から左へ振り抜くとヌームの左脇腹にヒットしショップの方へ吹き飛ばされた。慌ててアルド達がショップ前の生垣に突っ込んだヌームの所に向かうと少しばかりショートをしていて頭上には星が回っていた。
「ヌーム! 大丈夫か?! しっかりしろ!」
「損壊率、2%! 軽い打撲程度カト!」
日夜ミグレイナを防衛を懸命行っているとは言うものの、ヌームは圧倒的に弱いのだ! それは他の7体にも言える事。それでも誇りを持つ彼らを決して嘲笑わないのはアルドを含めた全ての者達がその信念に尊敬を持つ為だ。
「良く頑張った! 後は俺達に任せろ! 皆行くぞ!」
アルド達はそれぞれ武器を構え臨戦態勢に入る。
「フフフ、私に勝てるカナ?」
その凄みのある声に慎重となりジリジリと足を移動させ様子を窺う。相手は1体、それに対してこちらは5人、圧倒的に有利だ。だが、その異様な威圧感にアルド達は中々踏み込めないでいた。その中で別の生垣からAI搭載の猫型アンドロイドがガサッと頭を出したと同時にブラック01は飛び上がり襲いかかって来る! 標的になったのはフィーネだった! それなりの俊敏性を持ち合わせていたようでアルド達は反応が遅れてしまう。
「フィーネ!」
フィーネには既にブラック01の影が落とされ危機が訪れる。
「フハハハ! 先ずは1人!」
そしてブラック01はロッドを空中で構え今にもフィーネに危害を加えようとした時、咄嗟にロッドを構えたフィーネは目を瞑りながら両手で上から下へ振り落とした。
「ええーーい!」
すると見事にブラック01の長頭部にクリティカルヒット。叩き落とされ、地べたにうつ伏せに大の字になる。あっという間の出来事に暫しポカンとするアルド達。
俊敏性はあるようだがブラック01もまたヌーム同様が弱かったのだ。しかし、それより劣るヌームはなんとも不遇な事か。拍子抜けするアルド達をよそにブラック01のボディがぴくりと動くと再び臨戦態勢を取った。フラフラと立ち上がったブラック01はまるで何事となかったように振る舞う。
「フハハハ! やるではなイカ! しかし私は本来の出力の10%も出していナイ! これは様子見に過ぎないノダ!」
誰がどう聞いても苦し紛れの言い訳にしか聞こえない。引き続きあっけらかんな状況に変わらないが、アルドは問い詰めた。
「お前の強さは分かった。それより目的はなんだ? 何故こんな事をする!?」
「言っただロウ! 我はガルレアの戦士! ガルレア反映の為にこのミグレイナを殲滅するノダ! また戦士は私だけではなイゾ。他の7つの同胞は既にミグレイナの各所に散らばり破壊活動に明け暮れている頃だロウ! 今の所は引くがこれからお前達は来る破滅の日を指を咥えて見ている事になるノダ!! フハハハ!!」
それを最後にブラック01は大きく飛び上がりその場を去った。
「一体何だったんだ? 怪我はないかフィーネ?」
「うん、私は平気だよ」
「今更ですがブラック01の脅威レベルの判定は2デス! ノデ!」
「何とか撃退出来たけどまた何か起こりそうね」
「最後に言い残した”同胞”も気になるでござるな」
思惑が飛び交う中で現場にはエージェントのセティーとレンリが到着した。
「アルド来ていたのか」
「セティー、レンリ」
「状況を説明してくれる?」
アルド達はセティー達に事の顛末を説明する。
「ガルレアの戦士……聞いた事がないな。今の所では脅威となるとは感じられないが十分警戒しておくに越した事はないだろう」
「そうね、ニルヴァやラウラ・ドームとも連携を密にして事態に備えた方が良さそう。私は司政官に進言してみるわ」
「俺達にも何か手伝わせてくれ。放ってなんかいられない」
「分かった。何かあったら緊急通信を入れよう。けれど、くれぐれも無茶はしないでくれ」
「通信は私が行いマス! ノデ!」
「ああ、よろしく頼むよ」
そうしてセティーは現場検証に、レンリは司政官フロアへと急いだ。
「俺達も何か情報を得る為にブラック01が逃げた方角へ行ってみよう」
「確かラウラ・ドームの方角だったけど」
「ラウラ・ドームへの逃亡確率は80%デス!」
「では、ラウラ・ドームへ向かうでござる!」
意気揚々歩き出そうとした瞬間、フィーネの「ダメ! 待って!」と言う声に足が止まる。
「どうしたフィーネ? やっぱり何処か痛むのか?」
「お兄ちゃん、ヌームさんが」
「あ!」
ヌームの両足だけが生垣より覗いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます