第4話 涙の超汎用合体!
そして音声データが流れ始める。
「初めまして、私はペール。そして横にいるのは妻のエールだ。私達の8つの子供達、ヌーム、ウーオ、トール、オール、イーン、セース、テーム、クート、出会う事が出来て本当に嬉しいよ」
「ええ? ヌーム達のお父さん!? お母さん!?」
アルド達は驚きを現したがヌーム達に反応はない。
「色々と話したい事があるけれど、ここに来たと言う事は時間が迫っている様だね。簡潔に私達の事、そして君達を生んだ理由を話そう。私達はここではないとある研究所で生まれた。そしてもう1体”アミー”と言うロボットもいた。私達3体は生み出された直後に”ミグレイナの守護者”になる事をインプットされた。訓練室で戦闘など日夜教え込まれアンドロイドの指示に従う中で、心を持っていた私達は互いを励ましあった。そんなある日、突然アミーが部屋から連れて行かれ遂には帰って来る事はなかった。私達はアミーに何があったのか調べる為にアンドロイドの眼を掻い潜ってデータベースにアクセスしその真実を知った。私達が生み出された目的は”ミグレイナの守護者”などではなく”秘密裏にガルレア大陸の征服する為のロボット兵器”だったのだ。最初のインプットには裏コードが存在していたんだ。この事実を知ってしまったアミーは連れていかれ改造されてしまった。そして私達はチャンスを伺い研究所から逃亡を試みた。途中までは上手くいっていたが3体の追跡用アンドロイドに発見され攻撃を受けてしまったんだ。もうダメかと思った時その中の1体の赤い追跡アンドロイドが2体を破壊して私達は助けてくれた。それからその赤いアンドロイドと行動を共にしたがエールの損傷は激しく活動停止の直前まで追い込まれた。私達のプログラムでは活動停止した際に全てのデータが消去される様に設定があった為、私達にとってそれは”死”を意味したのだ。どうしようもなくなった時、赤いアンドロイドが自身の脳とも言える大容量ストレージボックスを取り出し、エールのデータを転送すればエールは助かると言った。私は迷う事なくそれに同意したがエールを1人にする訳にはいかず、私自身もデータを転送することにした。ボディを捨て箱になった私達を赤いアンドロイドは安全な場所まで移動させ続け、遂にここに辿り着いたのだ。そして私達の夢”ミグレイナの守護者”を叶えてもらう為、君達を生み出したのだ」
ペールが話終わるとアルド達の表情は切ないものとなった。
「そんな事があったなんて」
そんな中でもヌーム達の様子は変わりない。
「貴方達に会うことが出来て本当に嬉しいわ。けれどここに来たと言う事はミグレイナに危機が迫っていると言う事。強大な敵に立ち向かう為に力を残しておいたわ」
エールが優しく語りかけると中央の床から円筒が伸び頂点が開く。その中には一つの丸いコアパーツがありセバスちゃんが食いついた。
「それが合体に必要なコアパーツに間違いないわ!」
ヌームはそれに近づき手に取った。
「お前達に大変な任務を預けてしまって申し訳ない。しかし私達の願いをどうか叶えて欲しい」
「私達の可愛い子供達、どうかミグレイナに平和を」
それを最後にホログラムにノイズが混じっていき遂には光を失い機能が停止しペールとエールは消えた。
「コレが父君と母君が私達に残した力」
「いい両親だな」
「ハイ」
しんみりとした空間の中、リィカはセティーの緊急通信を受信した。
「アルド! 不味いことが起こった! ブラック8がゼノ・ドメインに侵入したらしい!」
「何だって!?」
「恐らく奴らの狙いは深層区画のコアの破壊だろう。至急向かってくれ! 頼んだぞ!」
通信は切れ事態は急を要している。
「ヌーム、今は急ごう」
「勿論デス! 我々はミグレイナの守護者!」
「ジャスティス8!!」
決意を改め合成鬼竜が待つ場所へ駆け出した。
船内の中では遠隔視聴をリィカから合成鬼竜の乗組員にシフトしたセバスちゃんの指示の下でヌームにコアの移植改造が行われる。その最中、早くもゼノ・ドメインに到着した。
「ヌームの改造はまだ終わらないのか?」
「だいぶ複雑で苦戦しているの。急ピッチで行ってるからアルド達は先に行って!」
アルド達はヌームが必ず来る事を信じてゼノ・ドメインの深層区画を目指して駆け上がっていく。
そして辿り着いた深層区画には中央に浮遊する2つのターミナルコアが赤く輝く。しかしながら、そこに変わった様子はなかった。
「誰もいないぞ」
「気は抜いちゃダメよ」
警戒を怠らず周囲を見渡していると姿は見えないが聞き覚えのある声がして来た。
「フハハハ! 飛んで日にある夏の虫とは正にこの事ダナ!」
「ブラック01! 今度こそ逃しはしないぞ!」
「逃さないダト? 笑わせルナ! お前達はここで我々により倒されるノダ!!」
そして前方の後がない通路に黒い影が8つ舞い降りアルド達に現れる。
「ブラック01!」
「ブラック02!」
「ブラック03!」
「ブラック04!」
「ブラック05!」
「ブラック06!」
「ブラック07!」
「ブラック08!」
「我ら! ガルレアの戦士ブラック8!!」
ジャスティス8ばりのポージングがバッチリと決まる。アルド達はそれを無言で見つめると暫し沈黙が訪れゼノ・ドメインのコアの起動音だけがゴーゴーと目立った。
「フフフ、決まっタナ。そして恐れ慄き喋る事も出来なくなっタカ」
「ゼノ・ドメインに侵入して一体何を企んでいる!?」
「決まっているだロウ。この莫大なエネルギーを持つ2つのターミナルコアを大爆発させ、ミグレイナの大破壊を試みるノダ!」
「何だと!? そんな事させるものか!」
「フハハハ! やれるものならやってミロ! だが、それは不可能ダ! ミヨ! 我々ブラック8の真の姿ヲ!」
するとブラック08は高く飛び上がりある。
「シークレットコード! 謀反!」
「謀大逆!」
「謀叛!」
「悪逆!」
「不道!」
「大不敬!」
「不孝!」
「不義!」
そのコードを発するとブラック8の各々のボディが変形していく。ブラック04は胸部、ブラック02は右腕、ブラック03は左腕、ブラック05は右足、ブラック06は左足となり接合していく。そしてブラック01が頭部となり最後にブラック07とブラック08は背中の両翼として接合した。
「完成! 超ド級合体! ビッグブラック8!!」
そして、地響きと共にアルド達の目の前には3メートル以上ある漆黒のロボットが立ちはだかった。
「な! 合体した!?」
「大きい!」
「何とキテレツな!」
「警戒レベルMAXです! ノデ!」
「セバスちゃんが見たら泣いて喜ぶわね!」
「いつまで余裕でいられるカナ? いクゾ!!」
ビッグブラック8は両腕を水平の高さまで上げる。指先の十支をアルド達に向けるとパカっとその先が開きミサイルを放たれた!
「マズい! 皆避けろ!」
それぞれが狭い通路で拡散するがミサイルは追尾機能を持っており何処までも追いかけて来る。逃げ惑う中でタイムリミットが来たのか全てのミサイルは宙で爆発した。すると一面に蔓延する煙。視界は完全に無くなった。
「く! 何も見えない……」
後ろには忍び寄る黒い影、エイミはそれに気が付いた時にはもう遅かった。大きな鋼鉄の右の拳が煙の中から現れ直撃すると両腕での防御越しにも関わらずエイミは吹き飛ばされる。
「ぎゃ!」
「エイミ!」
運よく足場がなくなる一歩手前で止まり倒れ込み落下する事はなかったが気を失ってしまった。しかしビッグブラック8は標的を変える事なくエイミに畳み掛けようとした。
「まずは1人!」
絶体絶命のピンチのその時、煙の中から飛び出してきたのは7体の影。
「ミグレイナの人々は我々が守ル!」
「邪魔だ! 引っ込んでイロ!」
「グアアア!」
7体はその大きな右拳に呆気なく散り吹き飛ばされる。奇跡的にも落下せずガシャガシャと通路に墜落した7体だったが、その損壊は誰が見ても大きなものだった。
「皆! くそお!」
煙も晴れてきた頃、アルド達は一斉にビッグブラック8に攻撃を仕掛ける。
「エックス斬り!」
「水天斬!」
「サンクトゥスレイ!」
強烈な攻撃がビッグブラック8にヒットする。
「ムウ!! なかなか良かったが私を倒すには到底及ばナイ!」
多少のダメージはある様だがビッグブラック8は未だ健在。すると目元に集中した赤い光はどんどんと強くなり一気に放出されるとレーザービームがアルド達を襲う。
「うわああああ!」
強力な攻撃に倒れ込む。するとビッグブラック8はアルドに近づき右手で首を持って宙に浮かせた。
「フハハ!! 無様な姿ダナ! このまま捻り潰してヤル!」
「く……!」
「お兄ちゃん!」
––もう、ここまでか
アルドが諦めかけた瞬間、ビッグブラック8が「グワ!?」と声を上げた思いきやその手はアルドを離した。何が起こったかわからないアルド はビッグブラック8の方をみると仰天した。何とボロボロのジャスティス7がビッグブラック8に纏わり付き力の限りに拘束していたのだ。
「貴様ラ、何処にこんな力ガ!?」
「絶対に誰モ!」
「悲しい思いはさせナイ!」
「たとえどんなに傷ついたッテ!」
「守ってみセル!」
「そして信じるンダ!」
「彼が来る事ヲ!」
「ヌームの事ヲ!」
必死に7体は今にも分解しそうな状況だった。
「エエイ! 離レロ!」
ビッグブラック8が激しく体を揺さぶると7体の装甲が徐々に剥がれ始めていく。それでも7体は離そうとはしなかった。
––そして、ヒーローは現れた。
「お待たせしまシタ!」
「ヌーム!」
後ろを振り返ったアルドは遅れてきたヒーローを見たがその様子がおかしい。何とコアパーツの改造移植は済んでおらず、ヌームの胸の装甲はなく内部が見えており、いくつかのチューブがぶら下がっている。そしてその手にはコアパーツが握られていた。
「やっと繋がった! アルド聞こえる!?」
「セバスちゃん!?」
セバスちゃんは再度リィカにリンクした様でその音声が流れた。
「良かった! じゃない! 良く無い! 聞いて! ヌームが改造中コアパーツごと持って飛び出して行っちゃたのよ!」
「ヌームなら今ここにいる!」
「何ですって!?」
パニックの中、ヌームは右手のコアパーツを高く天にかざした。
「我々はミグレイナの守護者! 父ヨ! 母ヨ! 今コソ力をお貸し下サイ!」
そして、ヌームは力いっぱいにコアパーツを内部剥き出しの胸に押し込んだ!
「シークレットコード! 仁!」
その掛け声に反応し、他7体が反応し目元の光が強くなる。
「義!」
「礼!」
「智!」
「忠!」
「信!」
「孝!」
「悌!」
『シークレットコード認証。ジャスティスプログラム起動します』
そして8体は高く舞い上りその姿を変えていく。オールは胸部、ウーオは右腕、トールは左腕、イーンは右足、セースは左足、テームとクートは両翼となり背中に接合した。
「ダイブ! オーーン!」
最後、ヌームは頭部として接合する。
「8つの信念を今一つに! 完成! 超汎用型ロボ! スーパージャスティス8!!」
遂に合体は成功し金色に輝く光の守護者が誕生した。
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