第18話

「しかしこんな場所作るなんて神様はすごいよね~」


その後寛ぎながら唐突に訪ねてみた。


「簡単ではなかったがな、」

「そうなの?」

「うむ、まず最初に」

「あ、難しい話はいいや」

「聞いといてっ!?」


とまぁ、こんな感じで談笑を繰り返していた。アーちゃんをからかい、ミウと和やかに話、ライにはみかんを放る。


あ~、癒される~

もう現実のあれやこれや放ってこのままここにいたい、


とそんな願望を抱いていると


「あ、そうだ!!私、お兄ちゃんに言いたいことがあったんだ!!」


と急にライが立ち上がり俺を指差しながら叫んだ。


「え?なに?言いたいこと?みかん食べる?」

「あ、うん、食べる!!じゃなくて!!なんで私の力使わないのっ!!アーちゃんの力ばかり使って!!ミウに至っては具現化しちゃうし!!私も使ってほしい!!暴れたーい!!」

「お、おい、落ち着けよ」

「無理!!アーちゃんとミウばかり贔屓だ!!早く私も使って!!」


そう言うとライは俺の側に来て肩を持ち体を激しく揺らされる。


う、よ、酔うっ!!


「あ、あ、慌てるな、お、お前の出番は必ずくるからっ!!」


俺の叫びを聞いて体を揺らす手を止め下から覗き込むようにして


「ほんと?」


ちょっと涙目なのがさらに可愛く、うっかり抱き締めたい衝動に刈られるがなんとか踏みとどまった俺を誰か誉めてほしい。


「ああ、ほんとうだ、ライの力は最終兵器、切り札だからな」


俺が断言するとライは笑顔でぴょんぴょん跳ねながら


「そうか、切り札か~、にしし、切り札、私、お兄ちゃんの切り札、にしし、よし、やるぞ~、お兄ちゃんの敵は粉砕、皆殺しだ~!!」


なんか不気味なこと言い、黄色い髪を揺らしながら満面の笑みを浮かべぴょんぴょん跳ねる少女、


なんかやだな~

ちょんちょん


「ん?」


苦笑いを浮かべていると後ろから服を摘ままれ振り替えるとアーちゃんが俺を見上げながら


「わ、私は?」


顔を赤らめちょっと涙目で不安そうに聞いて来るその姿に我慢できるわけがない

俺はアーちゃんを強く抱き締め耳元でアーちゃんにだけ聞こえる音量で


「アーちゃんも俺にとって大切な存在だよ」

「っ!?」


あ~、なんてアーちゃんはかわいいんだっ!!


そう思いながら大人しく抱かれているアーちゃんの感触を楽しんでいると壁際に座っていたミウと目が合う。ミウは笑顔をむけて人差し指でちょいちょいと自身の顔を指差した。

その行動で俺は彼女が何を訪ねているか察した俺は笑顔でゆっくりうなずく、するとそれだけで伝わったらしく彼女は笑みを深めた。


あ~、俺はなんて幸せなんだ!!

モテないなんてやさぐれてたのなんてもう気にならないくらい幸せだ!!

世の非もての男達よ、すまない、一足先に俺は楽園へと飛び立つ、皆のこれからに幸あれ!!


☆☆☆


楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。

そろそろ現実の世界は日の出だとミウが教えてくれたので名残惜しいが三神に挨拶をしてから俺は目を閉じた。そして起きろと願う、これだけで戻れるらしい。


そして次に目を開けた時広がる視界にはあの楽しく居心地がいい空間はなく、暗く冷たい石造りの壁と床だった。


はぁ、起きたくねぇ‥‥

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