第17話

結局答えはでず、夢幻の能力時間も限界が近いためカイに軽くこれからの事を取り決め俺が捕まっている牢屋に戻った。

ちなみに兵士達は俺が抜け出した事には気づいていない。

さすがミウだ。

俺は回りから見えないようにミウの神器である夢幻を取り出し優しく撫でた。心なしか夢幻の刀身の輝きが増したように見えたので喜んでるのかな?


しばらくすると若い兵士がやってきた。


「おい、偽物、飯だ、ありがたく食えよ」


そう言って出された食事はカビたパンとなんかよく分からないが酷く異臭を放つスープだった。


良かった

カイと別れた後帰り道の屋台で軽食をつまみつまみの帰路だったので正直腹は膨れている。だが、せっかく出してくれた食い物を残すわけにはいかない。勇者として貧困に苦しむ村などに物資の支援を行った時から俺は出された物を残したことはない。なので兵士が食器を差し出した際に俺は素早く彼の手に触れた。


「な、貴様なにをっ!?」


最初は驚いた兵士だったが、そのあとみるみると顔色を変え、


「なんて旨そうなご馳走なんだ!!貴様にはもったいないな!!目の前で俺が食ってやろう」


そう言うと彼はガツガツと俺に出される筈だった飯をうまそうに食べた。スープをのむさいに顔をひきつらせていたがそれでも綺麗に平らげ


「ははっ、どうだ?うらやましかうっ!?」


そして彼はもうダッシュでどこかに走り去っていった。牢屋の入り口にある扉の向こうから数人の悲鳴が聞こえたがまぁ、囚人の俺には関係ないだろう。

俺は布団というかただの藁にくるまりそのまま夢の世界に旅立った。


☆☆☆


目が覚めるとそこは青空が広がる草原だった。視線の先には立派な木造建ての家があり、俺は無言で扉を開けた。


「お帰りなさい、お兄さん」


扉の先には菫(?)の刺繍と薄い紫色の和服に白エプロンを着けたミウが笑顔で出迎えてくれた。


いいなっ!!

たしか前に外交で城を訪問した東にある国ではこんな感じの良妻スタイルだと聞いたことがある。まぁ、ミウは背格好は子供の10歳位に見えるので良妻と言うより兄を慕う妹だけど、いい!!

友人の一人に

「妹が可愛すぎてまじ天使!!妹萌えー!!」

と叫んでた奴がいたが今ならその気持ちがひっじょうに共感できそうだ!!


「ただいま、ミウ、昼間はありがとう」


俺はお礼を言いながらミウの頭を撫でる

ミウは笑顔で


「いえいえ!!初めての具現化が私で嬉しいです!!あ、中にどうぞ、アーちゃんてライちゃんも来てますから」

「ああ、ありがとう」


そう言って俺とミウは家中に入って行った。

この家は平屋でミウが言うにはお風呂やベッドなんかもあるらしい、しかも最初はミウが幻術世界で作る予定だったがそれではつまらないとライが騒ぎだし、三神で共用空間を作ったらしい、いやはや、神様はなんでもありだな‥‥ちなみに俺が現実世界で彼女達を具現化するとこの共用空間からいなくなるらしい、今日ミウを具現化した際にライとアーちゃんがいってらっしゃいとお帰りをしてくれたらしい、なんか女だけの家庭みたいだな

アーちゃんがツンデレなの長女

ライが自由奔放な次女

ミウがしっかり者の末っ子

みたいな感じの‥‥うん、想像できるな


そんな妄想を膨らませているとアーちゃんとライがいるという居間に到着した。

ミウが横開きの扉を開けてくれる。


「「あはははっ!!」」


すると2人の楽しそうな笑い声が聞こえ、中を見るとテーブルに布団がついた物、たしか炬燵と言ったか?に二人して座り何やら箱?いや、鏡か?を見て笑い声をあげる2人の姿が見えた。テーブルの上には籠に入ったみかんが置いてあり、二人の前には飲みかけのお茶とみかんの皮がある。


ずいぶんと寛いでるな~


「あ、お兄ちゃんだ!!」

「ん?ああ、来たのか?主」


呆気に取られていると俺の存在に気づいたライが声をあげ、それにつられてアーちゃんも顔を上げた。


「あ、ああ、ずいぶん楽しそうだな」


未だに動揺しながらも返事を返す俺、


「うむ、今いいところでな主も一緒にどうだ?」

「あ、いいね!!お兄ちゃん座って座って!!私の隣空いてるよ!!あ、それともアーちゃんの隣のがいいかな?私の隣来たらみかん、あ~んしてあげるよ~?にしし、どう?うれしいっ!?嬉しいよね!!さぁ私の隣においで~?」


はぁ、相変わらずライ騒がしいな‥‥

しかし、そんなライを見ていると自然と落ち着く、なんだかんだでライにも救われているのかもな?


「さ、お兄さん、座ってください、今お茶いれますね」


未だに立っている俺にミウが座るよう勧めてくれる。俺はミウの勧めに促され、アーちゃんの隣に座る。

ライがぶーぶー煩かったがまぁ、癒さているが隣で騒がしいのはごめんなのでとりあえずアーちゃんの前にあった食べかけのみかんを勝手に拝借し、ライの口に放り込んで黙らせた。

隣から「あ、」と声が聞こえたがライを黙らせるために我慢してもらおう。ただ、申し訳ないので新しいみかんを取り皮をむいてからアーちゃんの口にも放り込んだ、アーちゃんは素直に食べてくれたがそのあと俺とライ、ミウの視線を感じて今の行動を自覚したらしく顔を赤くさせ、下を向いてしまった。

それを見て笑う俺達


アーちゃんは今日もかわいいなっ!!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る