第15話
俺の言葉を聞いてカイは腕を組み目を閉じて考え込む、そして暫くすると重い声色で続けた。
「まぁ、奴のスキルで勇者のスキルは取られているがたぶん、お前だろうな」
「だろ?しかもレアスキルである聖女のあの女も排斥、さらに聖騎士に魔術師、それから今まで武功をあげたやつのパーティーメンバー有能な人間は全て排斥されて残るは勇者スキルを取られた俺一人、無理じゃん?」
「ああ、無理だな」
「例えカイの協力があっても」
「ああ」
「「無理だな、はぁ、」」
そこで俺達はため息をはいた。
もうお先真っ暗だ、考えただけで吐き気がする。しかも勇者スキルが取られているから勇者専用武具である聖具も装備できない、もしもあーちゃん達がいなければただの一般人です。はい、
あ、あーちゃん達に会わなければ死んでたわ
あははっ‥‥はぁ、
「だが、このままでいいのか?」
変なテンションになりつつある俺にカイは再度問いかけてきた。
「もちろん、仕返しはするさ、けどそれは奴らが魔王を倒してからでも遅くない」
せっかくやらなくていい苦労をむこうがしてくれるならやらせておく、最後になにか仕返しをしてあとは、のほほんとスロー生活でもするか?あーちゃん達がいるから戦力としては十分だし冒険者をするのもありだな?
「たしかにな‥‥あ、」
「なんだよその「あ」って!?」
また思考の渦に嵌まりそうな俺にカイは同意するが何かを思い出したようだ。
なんだよっ!?
すんげーいやな予感しかしないんだけど?
「あ、いや、実は未確認なんだがな、」
「ん」
「落ち着いて聞けよ?」
「ん」
「聞いて怒るなよ?」
「ああ」
「急激な怒りは体に悪いからな?ほら、先ずはお茶を飲め、俺が開発した茶葉で入れたお茶だ、血圧を下げる効能がある、お前にぴったりだろ?」
「誰が高血圧だ!!」
「一緒に茶菓子もどうだ?今日のは自信作でな、これがまたこのお茶と合うんだよ」
「あ、たしかにうま、じゃないわっ!!」
たしかに、たしかにお茶も菓子もうまいけどさ、てか、お前菓子作り趣味なの?今日のは自信作でって日頃から作ってる奴のセリフじゃないか?案外エプロン似合いそうだな‥‥
っていかんいかん!!
また思考がへんなとこに行きそうだった
俺は慌ててカイに詰め寄る
「いいから早くさっきの「あ?」についてこたえろよ!!」
「‥‥魔王って女で美人らしい、」
「ん?」
ようやく口を開いたカイの言葉に俺は首をかしげる。
へぇ~、魔王って女で美人なんだ、
どんな姿だろ?
「それで、件のハマト君とな」
え?ここであいつ出てくるの?
なんだろ‥‥ん?
俺の冴えすぎる脳がある答えに行きつく
いや、ないだろ?俺にあんだけ言っといてなぁ、ないない
俺はまさかな?ないないと思いながらも震える声で
「お、おい、ま、まさか?ないよな?違うと言ってくれ」
「恋人関係」
「‥‥アイツ殺す」
俺は立ち上がり手に武器を持とうとした。
なんなのあいつ?
どんだけハーレム運もってるんだよ?
俺の元パーティーメンバーを抜きにしても一緒にいた魔法使いと盗賊も可愛い子だったし、さらに今はあの中身くそビッチだけど外見ハイスペックの聖女、聖騎士、魔術師もいるんだぞ?なに?死にたいの?
殺る?殺っちゃう?
今部屋を飛び出そうとしたその時だった。
バタっ
「ぎ、ギルド長っ!!大変です!!」
突然扉が開き職員が慌てて入ってきた。
「今は来客中だ!!話は後で聞くから今は出ていけ!!」
カイは一応捕縛されていることになっている俺がここに居ることを知られては不味いと考え職員を怒鳴り退室を促す。
「い、いいからこれをっ!!」
だがそんなカイに怯みもせず職員は慌てながら手に持っていた紙束をカイに渡した。
カイは仕方なくその紙を見る、すると目を見開き、そのあとは食い入るように紙にかいてある文字を読み始めた。
そして全て読み終えると無言で俺にその紙を渡しながら
「やばいことになった。」
俺は困惑しながら紙を受け取り最初の文字を見る。
そこに書いてあったのは
『人族と魔族間での和平成立!!』
『半月後に王都で真の勇者一向凱旋パレード!!』
『和平成立に際し、真の勇者と魔王の婚姻が決定!!』
『真の勇者は同じパーティーメンバーの幼馴染み達とも婚姻予定』
『真の勇者の軌跡を書籍化!!真の勇者の苦難の旅、近日発売!!』
等々、
でかでかと見出しが書いてある新聞を読んで思ったことは
真のってしつこっ!!
勇者だけでよくないね?
カイも同じ事を思ったらしく、二人でから笑いするしかなかった。
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