第4話

「この部屋にはもう誰も来ることはない、お前はこのまま動けず、誰とも会えず朽ちていけ、死ぬまでの間に少しは自分が行った非道を悔いることだ、」


そう言うと彼と彼のパーティーは出ていった。ちゃっかり最後の一本の剣を持って、俺のパーティーだった彼女達は最後に俺にだけ聞こえる声で囁いた。


「マルスさようなら、もう貴方は用済みです」


そう言って去る魔術師、用済みか、そういえば休みの日あいつに魔術の実験台にされたっけ?今思うと最低だなあいつ、いいのスタイルだけか?


「お前の私たちにした事はもう忘れる、だから悔いの残らないよう健やかに逝け、さらばだ」


マントを翻し颯爽と歩きだす聖騎士

いやいや、なんか爽やかにしてるけどお前最低だからな?何が聖騎士だよ!?聖の部分どこ行った!?


「ふふ、アルス、お元気で、あ、これはもらっていきますね?もう貴方には必要ないでしょ?あと、私も最近知ったのですが私達が探していた聖武具、彼が全部先回りしていたみたいですよ?偶然、あはは、面白いですね、魔王討伐も彼と私達が成し遂げますから安心して逝ってくださいね、さようなら」


そう言って俺の腰に着けていた財布(中に口座を開くための魔導具有り)を素晴らしい笑顔で持って行く聖女

盗人じゃねぇぇぇかっ!?

たちわりぃ‥‥

あんなんの俺は恋したのか?

実は初恋なんですが?

てか彼、もうあいつでいいか、あいつがつけてたの聖武具かよっ!!

通りで強いと思ったわっ!!

てかあいつなんで装備できるんだ?

たしかに聖武具は勇者以外つけられない筈‥‥?

って今はそんな事考えてる暇ないぞ?

あいつらがいなくなって扉が閉まり回りが暗くなった。もう真っ暗だよ

俺の未来みたいに‥‥ぷぷっ

いやいや笑い事じゃない!!


今の現状にやけっぱちになり変にテンションが高いマルス


そして悩んでいると先程まで真っ暗だった部屋に光が満ちた。

急に明るくなり目を閉じる。

しばらくして目が慣れてくるとアルスの視界に写ったのは4本の剣だった。


どうやらこのダンジョンはアイテムが自動で補充されるらしい


あの剣を手に入れればこのダンジョンから脱出できんじゃね?

そうだよ!!

ここダンジョンの最下層、その最深部にあるアイテム 、しかもそれが4本もある、これを全て手に入れれば上にいる魔物どもなど相手にならず脱出できる。まぁ、金は取られたけどダンジョンの魔物の素材を回収、売買すればそれなりの金になるはずだ。お、これはいけるんじゃね?


そう考えたマルスは早速動こうとしたが‥‥

彼は自分が壁に縫い付けられているのをすっかり忘れていた‥‥


はぁ、もうやめだ‥‥

俺はこのまま死ぬんだ‥‥


自分には物語のような奇跡的な事象は起きないし誰かが助けに来てくれることもない

マルスは自分の運命を呪った。

元々マルスは孤児だ。孤児院で育ち祝福の儀でスキル勇者になり、周りが勝手に持ち上げた。ただの10歳の子供だったマルスが周りにチヤホヤされ舞い上がるのも仕方ない、だがそれも最初だけでそのあとは勇者としての自覚をもちひたすら努力した。最初はただ勇者だからとチヤホヤしたり元は平民しかも孤児ということで馬鹿にしていた人々もマルスの懸命に勇者であろうとする姿を見て彼を認める人も出てきた。(マルスは気づいていないが)そして努力している最中アルスと同じように連れてこられた三人の女の子達、マルスは彼女達を何があっても守ろうと決意しいままで以上に訓練に励み戦ってきた。

ただ、ただ人々の安全と彼女達を守り幸せにすることを胸に刻んで。


その結果がこれである。

裏切られ、いまはもう死ぬしかないアルスは怪我や疲れ、そして何よりぼろぼろになった心から目を閉じ意識を手放した。

次に目が覚めた時全て夢であってほしい

そう天に祈りをこめて‥‥

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