乙女の成れの果て
乙女な頃は忘れてしまう程
年齢は超えてきた。
クラス大半が子供がいる年齢
それも二、三人産んでいる。
ぼーっと考えていたらまだ
カーチェイスは続いていた。
甲斐田のシャツの擦れるおとが
未華子の耳に心地良く聞こえる。
インターを降りると又Uターン
『ココ何処かいな‼』
車の揺れが気持ちイイ!
未華子は疲れて眠ってしまった。
今日は半端なく客足が止まらなか
った、未華子が疲れて当然。
スースース💤
運転して2時間彼女は眠ってしまった
ガス欠にならないように願う
ばかりだ。
彼女は渡さない!
アイツには二度と渡せない‼
ヤツの方が先にガス欠
「車も━━━飯食わせないと
うごかね━━━━ぞ
Hahahahaha」
動きの遅くなった蒼生に笑いながら
徴発する。
「未華子に手を出してみろ━━━💢‼
💢コロスからな━━━━━‼💢」
ヤツの悲鳴に似た叫びは
夜の街に響いた。
俺もガソリンを満タンに入れて
迂回に迂回を重ねヤツを巻いた。
「フ━━━━
疲れた━━━━━‼」
ドカッと背もたれに倒れかかる
チラッと彼女を見る。
未華子はぐっすりと眠っている
目が覚めたら、正式に交際を
申し込み、俺のモノにする。
未華子の手を甲斐田は包み込み
シートに、も垂れた。
甲斐田の手は包丁を握る手なのに
暖かい。
夢心地に夢なのだと未華子は思った。
未華子の耳元に聞こえた声は
「未華子君が欲しくて
たまらない。
愛してる。」
夢か?甲斐田の優しいボイス
この人の彼女は幸せだろうな・・・・
俺は死にものぐるいで黒いヤツの
車を探して回った。
何時間さまよったのだろう。
そして運良く見つけた。
ナンバー
色
車種
間違い無い‼
俺は半分狂っていたかもしれない
半狂乱だった。
車を携帯の明かりで照らした!
奴は疲れて眠ってやがった💢
未華子に寄り添い未華子も甲斐田
もたれかかって安心したように
ぐっすり
しかも甲斐田の奴、未華子の手を
握りしめて💢
クッソ
俺はその道の鍵屋をよび
奴にはスプレーでそのまま
眠ってもらった。
伊達に海外暮しをしていた理由
じゃない。
メロンパンをコンビニで買い
未華子の手のかわりに
メロンパンを握らせた
「未華子の代わりに
メロンパンでも食ってろ‼」
未華子を抱えあげ俺の車に乗せた。
目が覚めた時が楽しみだ‼
未華子の手がメロンパンに
へんし━━━━━ん‼
ざまあミロw
ヴァーカメアハハアハハ
「メロンパンと宜しくやってろ‼」
一声叫ぶと車に戻り
未華子を乗せて意気揚々と出発
勿論俺たち夫婦のマンションへ。
朝から雨、雷がビカビカ!
ドカーンドカーン!と爆弾が落ち
たみたいに音が響く!
ピューピューピュー
笛を吹くような風の音
それからゴーゴォーと又違う風の音
未華子は今日は休みだ
シフトはリサーチ済み‼
「ふああ━━━ああ‼
コキコキ
アレアレレレど━━なってんだ?」
なんせ2週間生活した部屋だし
蒼生のマンションだと分かる。
しばらく考える‼
カーチェイスに、蒼生が負けたんか?
なんか若い娘なら分かるけど
なんか、変じゃね。
また元サヤに戻ったら
要らんもん扱いされそうじゃね。
甲斐田さんはどうなった?
ベッドの居心地良さにまたウトウト
コックリコックリ
又究極の眠さに襲われた。
「あ━━━━2度寝は幸せカモ
休みの日の特権。」
「未華子起きろ!」
呼ばれて片目を細くあける
ねむいんだよ、起こすな!
と愚痴をいいつつ
「あれ?蒼生、
・・・・・
おはよう。」
「もう11時だぞ
起きれないのは変わってないな(笑)」
「ごめん、つい眠ってしまって‼」
「未華子昨日俺が言った事
覚えてる?」
「あ、うん。」
「その確認をするために連れて
来た。
見合いしたら俺はその人と籍を
入れる、つまり未華子とは永遠に
サヨナラだ‼
本当にいいんだな‼」
未華子はハッとして顔をあげ
暫く何も言えなかった。
「相手は24歳、事務職
中々の美人だよ。」
見合い写真とプロフィールを
未華子に手渡しながら言った。
「結婚したらアメリカで家を買い
彼女と生活する。
未華子の事があって考えを変えた
夫婦は一緒にいるべきだとおもう。
若いから子供も沢山産めそうだ‼
なあ未華子どうする?」
未華子は写真を見ながら
「そう、蒼生には、お似合いね
お見合い上手く行くといいわね。」
雨は益々酷く降っていた。
窓ガラスに打ち込む雨は大粒の
水形を叩き付けてくる。
「こんな日に
お見合いの話は・・・」
仕事に行かない日の雨は大好き
昔読んだ〃嵐の夜に〃
と言う名作を思い出す。
オオカミが羊と夜を明かす
最初の所が大好き
蒼生と初めての夜も雨だった。
ふんわり柔らかな思い出が辛い
物に変わって行く
雨の日は、蒼生が見合いの話を
して決断した辛い思い出に
すり変わって行く。
未華子は黙って服を着て傘を
持ってマンションをでた。
容赦なく降りつける雨は
傘も役に立たないくらいびしょ濡れ
になる。
何故か涙が出てきた。
しゃくりあげながら泣く自分に
気づき蒼生の事がまだ好きなの
だと確信いた。
未華子の全身を濡らす雨に
心地良さを感じてしまう。
蒼生への気持ちが洗い流されて
しまうと、良いなぁ。
「24歳で若く沢山子供産めそう
なんて前妻の前で言うか
普通💢💢
遠慮して言わない方が思いやり
ってもんよ‼
カーチェイスまでしてそんな事が
言いたかったのかよ━━━━‼」
でも
「子供、欲しい。
蒼生に似たら可愛いだろうなぁ」
未華子は子供を産むならたった今
だと思った。
雨に濡れたアゲハ蝶が、キンカン
の木にパタパタと止まっては
葉の裏側に回り体を丸め卵を産んで
いる。
あの仕草は小学生の頃理科の
本や、図鑑で見た。
こんなに寂しい雨が降っているのに
女には子供を産める年齢がある。
自分の子供を見てみたい
蝶は何回か同じ事を繰り返し
何処かに消えた。
「蒼生はまだ私を好きなんだろうか?
それともまだ都合のいい女扱い
したいのだろうか?」
傘が飛んで行った。
しっかり握っていたのに手を離れた
追いかけたがたちまち姿を
消した。
あんなに確り握っていたのに
まるで蒼生が自分から
離れて行くように
仕事は毎日頑張っている
売上も上場
あの日から甲斐田はパッタリと
姿を見せない。
結衣ちゃんの気持ちを知ってるから
どうのこうのは無い
返って蒼生に感謝したいくらいだ
あの日あの時
蒼生が来なかったらどんな返事を
返していたのだろう。
自分自身が分からない。
その日も未華子はスーパーの、肉屋
さんのアルバイトに行く道を歩いて
いた。
黒塗りの高級車が某高級ホテルに
止まった。
中から出て来た人物は蒼生だ‼
振り向いた蒼生は未華子を見て
〃 フッ 〃
と笑った気がする。
蒼生がホテルに入る頃、同じ高級車が
未華子の横をスーッと通り過ぎた。
中から出て来た人物は
薄いオレンジの着物に桜のピンクが
映えた振袖に、髪を今風に結い上げた
可愛らしい女性だった。
「あ、蒼生の見合い相手‼」
未華子はポッリと呟いた。
蒼生がデレデレする様子が見える。
未華子は気になり隙を見てホテルに
侵入‼怪しい奴と思われても仕方が無い。ホテルのレストランへと
エレベーターは上昇
エレベーターを出た所で蒼生と
八合わせ‼
ギョッ‼
アレェーニャニャ
「オヤッ‼珍しい人が居るなぁ━━
ニヤリ俺の見合い見に来たの?
それとも邪魔しに来たのか?」
蒼生は根性悪く悪意丸出しで未華子
に迫って来る。
綺麗な蒼生の顔が近付いて
ニヤニヤしながら品定めをする
ように未華子の顎を
人差し指と親指で掴み右に左に
揺らしてくる。
未華子は返事に困った
はてさて、自分は何しに来たのだろう。
「クスッほらほらー
返事しないと━━━
若い見合い相手の所に行くぞー」
「蒼生さん。」
可愛らしい声が二人の間を線引きする。
「お知り合い?」
キョトンとした彼女を見て
「まっさかぁ!
具合悪そうにしてたから
支えてあげただけ‼」
蒼生は未華子に囁くように
「タイムリミットだ‼未華子」
そう言うと
「俺にはもう関わるなよ‼
お前とはもう縁が切れたんだからな‼
彼女、若いだろう、
可愛らしいだろう━━━
マジ‼ ドストライクだ・か・ら‼」
そう言うと彼女の肩を抱き
アハハヾ
アハハヾ
と笑いながら去って行った。
「あ━━━━お━━━━━い‼
待って━━━━━━━━━━ぇ
好きなの、好きなの‼」
未華子は必死に叫んだ!
「蒼生を返して━━━━━━━‼」
振り向いた蒼生は
「フフフな━━━━に言ってんだ
オバサン‼
俺は待って待って💢
待ったんだ💢
でも良かったよ‼
いい子に会えたしアハ
バイバイ、オバサン。」
彼女もニヤニヤしながら見下した目で
未華子を見た。
蒼生と彼女は笑いながらバカにしたよ
うに去って行った。
「蒼生、蒼生、蒼生━━━━━‼
待ってよ━━━━━‼」
「未華子、未華子、未華子‼」
誰かが体を揺すって来る。
誰、誰?
目を開けると蒼生が覆いかぶさって
ペチペチと頬を叩いて来る
涙で頬が水浸し‼
「未華子、随分うなされてたぞ!
何の夢見たんだ?」
ハッとして窓を見るとあの大粒
の雨が窓を、叩いていてビカビカと
⚡が光っていた。
「未華子?何の夢みたの?
俺の名前呼んでてさ
そりゃ嬉しかったケドサ。」
未華子は泣きながら蒼生に飛び付いて
ウワ━━━━ン
ウワ━━━━ン
と泣き出した。
「良かっ・・・た。
夢見てたんだグスングスン」
「蒼生、蒼生、蒼生‼」
昨日までの態度が嘘のように
しがみついて泣きじゃくる未華子
の背中に手を伸ばし
蒼生の指は未華子のブラを外す。
未華子はしがみついて動かない
「仕方ない
泣き止む迄待つか・・・!」
スースース💤
「マジか?
冬眠並じゃないかアハハ
薬ききすぎたか?」
未華子の可愛らしい寝顔を眺めながら
蒼生も諦めて昼寝を楽しんだ。
2人はずっと寝ていた。
朝、いや夕方目を覚ますと未華子は
ハッとする。
さっきのは夢
今も寝てた?
「あ、あっそうだ‼」
思いついてほっぺたをつねる。
「イテッ夢じゃない‼ン?」
何故かいい匂いの柔らかい髪を
した蒼生が眠っている。
栗色の髪が風にゆれて
「気持ち良さそう。」
〃ええいっ‼〃
「イテテテテ━━━━━
何すんだよ━━━━━‼」
蒼生がうっすら目を開けた瞬間
蒼生の柔らかな頬を
ムギュ━━┅┅┅━━━ッ‼
捻って見た‼
蒼生のほっぺは赤くなったが
現実に戻れた。
「やったー夢じゃない‼」
あんなに振り続けた雨も
夢の中の出来事かと思うくらい
外は夕日がさし
暗くなりつつある世界は
快晴のようでもある。
あんなに泣き叫んだって事は
未だ蒼生に未練がタップリあるのだと
残念に思った。
頬を抑え痛がる蒼生に
「ゴメン、嫌な夢見て
確かめたかったんだ‼エヘ」
寝すぎた、寝すぎたと煩い
蒼生をたしなめながら
〃夢で良かった━━━━〃
と胸を撫でおろした。
「蒼生なにしてるの?」
キッチンでキンピラゴボウを
削ぎながら考えてた。
蒼生をチラッと見たがパソコンで
何か打ち込んでいる。
ご飯を炊いて、刺身を切る
ポテサラを作りピーマンの
肉詰めを作る。
その間ダイニングキッチンに
居るのに蒼生は振り向きもしない。
聞きたい事が山ほどある。
一段落したのか30分後、蒼生が
キッチンへと入って来る。
「ウワッ未華子腕上げたな‼
どれも美味そう。」
上機嫌な蒼生
パクパクと料理にパクつく蒼生に
聞いて見た。
「蒼生、お見合い・・は?」
蒼生は箸を止めて顔を上げた。
「見合い?
するよ!もう話は進んでるし
相手の写真みる?」
「えっ、あ、見てもしょうがないし」
蒼生はテーブルを立ちリビングの
棚の上のお見合い写真を開いて
見せてきた。
夢の中の人物とは違い
赤い振袖を着た、賢そうで
若くて清楚な美人さんだった。
「蒼生は気にいってるの?」
「若いし美人だし
あとはフィリングかな‼
会ってから決めるよ。」
「そ、そっかーダヨネ
上手く行くとイイネ‼
若いし、子供沢山産んで
くれるよ、きっと・・・」
ア、ハハハハ…💦
「未華子上手いよ!最高‼」
「そう、良かったよ💦」
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