🚕売られた喧嘩のカーレース

俄に店先がにぎやかになる。

「何事?」

ガヤガヤと人の声が飛び交う。


何事かと未華子をふくめ厨房から

ゾロゾロとホールを見に来る。

料理長甲斐田が、慌てて、彼女の

腕を握り外へと連れ出している。


「誰‼

誰‼甲斐田の彼女って、誰よ‼

出てきなさいよ━━━━💢」


ええぇ━━~━~~料理長にオンナ?


誰、誰、誰?

未華子も内山さんも目が飛び

出るくらいに驚いた!


「まさか関田ちゃん?」


「いえいえ山内さん?」

・∵ブフッ!!

∵ゞブハッ!!

お互い指さして大笑い‼


「関田ちゃん私何歳とおもってる?

もう直ぐ大台にのる歳だよ〰〰」


「山内さん私離婚したばかりで

男は、懲り懲りなんですから

ナイナイ‼」


「え、離婚?関田ちゃん離婚

してたの?」


「はい。

お恥ずかしながら

すぐ別れちゃいました。

2週間で‼

私嫁業は、向かないみたいです。」


「え‼あ、そうなんだ

ま、人には色々あるのが人生よ。

頑張んなさい!」


「はい、

ありがとうございます。」


「料理長の彼女?

いるんですかね?」



「アハハ私だって

そりゃ、店では何時も一緒

だけどサーアハアハアハアハ

無理無理‼」


「私だって━━━━‼

おばさんなんですから━━━

あんな若い子負けちゃいますよ"

料理長は若い子が好きなんじゃ

ないですかね〃

私なんか

ブッハハハハハうける。」


ひとしきり山内さんと笑いあった後


「あの人だれなんですか?」


「さぁ、料理長あんなんだけど

モテるんだよね〜

料理長の、押しかけ女房だよ。」


未華子は思った。

レストランにいた彼女ではない。



次の日から急遽、甲斐田は本社勤務

になった。

昨日の騒ぎが足をとったのだろうか?

言わいるケジメってやつか?


料理長の代わりに別に支店から

料理長代理がやって来た。

50歳位の、ややぽっちゃり系の

男性。


大阪育ちで面白いダジャレを言っては

場を明るくしているような、人だった。


山内さんの事を"かか"と呼ぶ

山内さんは、ちゃんと苗字で呼んで

下さいっていつも言っていた。



「チョットチョット関田ちゃん。

聞いた?」


「な、何をですか?」

山内さんは飛び込んで来て

大量のコールスローを作る手も

止まる。


「料理長会社の跡継ぎに

決まったらしいよ。

料理長、御曹司だったのよ━━━‼」



え━━━━━━━━

一同‼ビックリ


「でも料理長にはお兄さん

いますよね。」


「あっちはス━━━━━パよ、

チェーン店を継ぐらしいよ‼

アッチ(スーパー系)はアッチを

継ぐらしいし〃

こっちは(居酒屋系)コッチを継ぐ

らしいわよ。

アッチ(スーパー)はアッチで凄く

人気店らしいじゃないの‼」


「え、魚屋さんだけじゃなくて

スーパーも経営していたんですか?

知らなかった‼」


「何でまた急に?

分裂?」


「でね、あの女がずーっと

料理長にホの字だったらしいわよ。」


「料理長も最近見合いしてね

上手く行きそうなんだって‼」


「へぇー、そうなんですかー」


「でね、料理長があの女に

恋人には思えない、

好きな人がいるって言ったらしいよ

そしたらあんな事になったってワケ。」


「山内さん見てきたように

詳しいですね。」


「ウチの人から聞いたのヨ

関田ちゃんにしか言わないけどね(笑)」



「え‼

ウチの人って、山内さん結婚

してたんですか?

ってか料理長と同じ職場って事

ですよね、まさか本社勤務の

社員さんですか?」


「今更~

冗談上手いワ。」

ニタニタしながら山内さんは

未華子を見た。


「ヘッ冗談?って!」


「やだなぁホントにしらなかった?

今の料理長代理、私の

ダンナ‼

子供も成人したのが二人いるし」


未華子が信じられないって顔を

すると、


「苗字、苗字」

山内さんはネームプレートを指さし

その方向を見ると・・・


山内さんの旦那さんは

「アンター」

と呼ばれ手を振った

ネームプレートには山内とあった。


「あっ‼そうか‼

関田ちゃんがいる時はずっと

料理長いたもんね。

料理長が本社に行く時は

旦那が代理で来てたのよ。

だから、店の子達はみんな

知ってるよ。」


「ウワ━━━━‼初耳‼」

そのあと料理長の公認が決まるまで

山内さんの旦那さんの山内さんが

務めるらしい。


山内さんが店に厳しかったのも

納得した。

一つ食中毒でも出したら潰れて

しまう。

基礎の衛生から叩き込むそこから

始まっていた。


勿論山内のスパルタのおかげで

未華子にもヤル気注入された事は

まちがいない。


あのままだったらまだ包丁さえ

握れていないだろう。

山内さんは恩人なのかもしれない。

そういう人がいる事で成長する事も

有るんだと思った。


俄に店先が賑やかになる。

英語が飛び交っていた。


この日予約した御喜は矢張り蒼生

だった。


この日予約した10名以外20名に

変更になっていた。

お店はパンパンで他のお客さんも

入り、てんやわんや、チンチロマイ‼


「ホイホイ、ハイハイ‼」

厨房の掛け声が変わってくる。

みんな50メートル走を全力で走り

抜けるくらいの(´×ω×`)グッタリ感‼


本部に応援を頼むがまにあわない。

未華子山内夫婦

3人で板場に入ると焼き場が

回らない。

サラダバーは何とかバイトで回すも

煮物、揚げ物が回らない。


未華子は焼き場と板場を掛け持ち

しながらピークをこなす。

何人かの社員が厨房に入って来た。

ホッとするも、お客さんは止まらない。


超人気店


ピークも収まりお客さんの見送りに

でる。

外国人の最後は蒼生だった。


「未華子、いつ帰って来るつもり?」


How are you?蒼生


何だよ!


未華子が帰って来ないなら

本気で別れるからな!

俺は見合いするし、コレで

本当の別れになる、いいのか?

俺は本気だ‼」






「未華子、I Iove you」

蒼生は真っ直ぐな顔を未華子に向け

そう呟いた。



未華子は呆然と立ち止まった。


「関田ちゃんどーした?」

後ろから山内さんが声をかけて来た。

「あ、ああ」


「有難うございました。

又お待ちしております。」

慌てて営業用の声をかける。


「この辺じゃ見ない

い━━━いオトコね‼」


「ア、ハハハハ…

そうですかね?」


もう離婚して別れてるのに何で

ワザワザ?


「あら━━━━料理長

お久しぶりですね━━‼」

山内さんの明るい声にビックリして

未華子も振り返る。


「山内さん、売上上がったね。‼」


「はい、関田ちゃんが頑張って

くれてましからね。」


「そうか、お疲れ様。」

甲斐田は未華子に暖かい微笑みを

浮かべる。


「はい。

皆で頑張っています。」

料理長甲斐田は背広にネクタイ

ブルーのワイシャツが凄く似合って

いて男らしさを感じる。

甲斐田はそのまま事務所に入って

行った。


「関田ちゃん、惚れちゃった?」

山内さんはいたずらっぽい

笑顔で、茶化してきた。


「確かにカッコイイですよね(笑)

でも料理長にはちゃんとした人が

いますよ。」


未華子は料理長甲斐田のお見合い

を思いだしていた。

「可愛い人だったなー」


甲斐田と料理長代理の山内さんは

事務所でパソコンの前に座り

作業をしていた。

上着を脱ぎネクタイを外した

疲れた表情の甲斐田は

・・何故か未華子には色っぽく見えた。


「お先に失礼します。」

パッと振り向いた2人は

「ああ、お疲れ様」


優しい顔の山内さんの旦那さんは

もう少し帰りが遅くなると

山内さんに伝えた。


「うん。

ツマミ作って待ってるよ。」

と山内さんは答えた。


山内さんと二人外にでる。

夏独特のモワッとした暑さが

のしかかってくる。


「おふたり仲いいですね。」


「関田ちゃんも早く再婚したら?」


「クスッいえいえ、貰い手

ありませんって(笑)」


「そうね(笑)

頭切れて英語ペラペラ

そんな才女、なかなか紹介したい男

居ないわ。

男がまけてるもん。

何で前の旦那さんと別れたの?」



「そうですね、性格の不一致

でしょうかね━━WWW」


そんなくだらない話も女子に

とっては大事な話。

未華子はニコニコしながら

駐車場で、山内と別れた。


コンビニに寄り、ビールと甘い

栗まんじゅうとケーキを買った。

疲れた日は、甘いものは必須‼


ソフトクリーム抹茶味をナメナメ

帰るとマンション前に黒の

クラウ〇が止まっていた。


『あれっ料理長の車?』

最近はやりか?未華子の知り合いは

皆この高い車に乗ってる気がする。

・・・・・


パッパッパッ

とパッシングの光が点滅‼

抹茶アイスを詰め込み

ŧ‹”ŧ‹”ŧŧ‹”ゴクン。


無理やり飲み込んで

料理長の車迄駆け寄る。

ハンカチでアイスまみれの口を

拭きながら

「どうかしましたか?

なんか有りました?」


「あ、ああ関田さんが見えたから

ちょっと待つてた。」


「明日休みだろ?

ちょっと話さない?

乗って‼」


大学生の結衣ちゃんとの会話が頭に

過ぎった。


それは昨日の事オープン前の話


「関田さん料理長の事

どう思います?」


「え‼何で?」


「関田さんだから言いますけど

私、料理長の事好きなんですよ。」


「え? そうなの?

知らなかった!」


「関田さんに勝つのは

歳が若いって所だけですけど

私の方が先に料理長好きに

なったんですから

取らないで下さいね。」


「え?ナイナイ、無いけど

結衣ちゃん甲斐田さんの事

好きだったの?」


「そうですよ。

だから取らないでくださいね。

約束ですよ。」


「あ、あ、うん。」


脳内リフレイン

戸惑いながらも車のドアが開くと

未華子は乗ってしまった。


「関田さん、俺の事どう思う?」

料理長は顔を窓に向け、オールバック

に整えた髪を梳きながら聞いてくる。

ギエ━"直球でキタ━━━━━━━‼‼


「え、えと‼

凄━━━━━く尊敬していますヨ‼」


「尊敬?・・俺関田さんより

年下何だけどな‼」


(꒪ꇴ꒪ (꒪ꇴ꒪ (꒪ꇴ꒪ ;)エエエッ?まじで‼

目を丸くして甲斐田を見る。


「えっと、お幾つなんですか?」


「29」


「にに、にじゅうきゅゅう〰〰〰w」


「で、関田さん僕の事どう思う?

その、恋愛対象として」


「イケメンで、カッコよくて

素敵と思います。

でも私離婚したばかりで

何にも考えてません。」



「僕が嫌?

嫌い?」


「と、とんでもない。

勿体ないくらいですよ。

料理長には結衣ちゃんみたいな

しっかりした健康で若い子が

お似合いですよ。

私みたいな年上より若い子が

料理長を好きでいますよ。」


コンコン

叩かれた窓の外を見ると

蒼生が不機嫌な顔で立つていた。


「降りろ未華子‼」

甲斐田が急いでエンジンをかけた。

クラウ〇は未華子を乗せたまま

急発進


「〃おっ、おっと‼危な〃」


チッ_クッソォォォォォ!!

蒼生もセリ〇に乗り込み

後を追う。


蒼生は甲斐田にピッタリと張り付き

高速まで来た。

ブオーンオオ━━━━━ン

蒼生を挑発するように唸る

エンジン音

蒼生も負けずにブオーオオ━━━━ン


前に見えるは暴走族、

バイクが右に左に別れ道を開ける

ピピービビビビ

二台の車はまっしぐらに走り出した。

車の外からピーピピピ

暴走族も応援しながら囃し立てる!


ビビビビビ━━━🚩🏳やれやれ━━🏁


「わ、私オバサン何だから

取り合うなんて、やめ、やめ、

やめて━━‼‼‼」


なんと言ってもオスとなった蒼生と

甲斐田は止まらない。


やがてスピードに慣れた未華子は

疲れてしまった。

もはや口を開くバヤイでは無い。

眠い

ちょーハードな客足に継ぐ

カーレース


2人はまるで蒼生と甲斐田の

二人の世界に入り込み

高速を走り続ける。


煽り運転の事例があるから

制限速度は守りながら

甲斐田も蒼生も馬鹿ではない。


コレはガソリン勝負だ

ガソリンが無くなった時点で

勝負が着く‼


未華子はチラチラメーターを見る

そうだ軽はずみに乗ってしまった

未華子が悪い。


高校の保健体育の先生が

口酸っぱく言っていた、


「いいか、お前達良く覚えて

置くんだぞ‼

大人になったら自分の責任

男の車に乗ったらダメだぞ‼


乗ったら乗せなん!


はいリピートアフターミー」


「せ━━━━━━━━━のぉ‼」

(乗ったら乗せなきゃ行けないの意味。)

「乗ったら乗せなん!」


九州育ちの厳しい先生の名言

男に気をつけろと‼

あの、うら若き乙女の私達に


それは危ない事だと教えてくれた。

先生の顔が蘇る。

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