第14話 冷蔵庫を作ろう!

取り敢えず材料は揃った。


鉄鉱石×45個

銀鉱石×20個

硅砂×30

スクロール用羊皮紙×10

マジックペン×5


代金は込み込みで金貨2枚である。

散財もいいところだ。僕は何をやっているんだろうか?

思いの外マジックペンが高くついた。


貴族に向けての値段を平民が買い揃えるとこういう痛い目に合うという典型だ。次はうまくやろう。


どの道一ヶ月も貸し出せば元は取れる。

そう思えば、ぼろい商売なのかもしれない。


ちなみにこれから作るのは通常のやり方ではないので真似はしないで欲しい。

製作場所は宿屋の自室。すっかり自室扱いではあるが、借宿である。床を凹ませようものなら敷金が恐ろしいことになるので軽量化させるのが大前提。


まずは側作り。面倒なので【錬成】で一気にやってしまう。

これの使い勝手の良さは固形であろうと思うがままに形を変えられることにある。ちなみに銀鉱石と鉄鉱石は混ぜて使うとアルミニウムのような材質になる。全く同じものではない。軽く、それなりの強度があるのだ。それを隙間を開けて三層に覆う。

冷気のガスはその層を巡るように流す予定だ。


続けてスクロール用羊皮紙にオリジナル魔法陣を描くべく、魔法ペンを追加購入した。描き出すのは魔石を別途消費するタイプではなく、僕の魔力にのみ反応する陣。

サラサラと書き上げて、冷気のガスを噴出する仕組みが完成する、なるべく消費魔力量は少なくなるように調整する。

ポーションを作る分を残しとかないとね。

日雇いで銀貨二枚は美味しいが、魔力はお金じゃ買えないのだ。


魔力を回復させるポーションはこの世界じゃレシピが確立されてないと言うのがある。

もし作ろうものなら国中が大騒ぎだ。

何せ戦争の効率がグッと変わるからな。

そして製作者が僕だとバレたら軟禁されて一生そればかり作らせられるだろう。だから作れても発表しない。

僕は平穏に生きたいのだ。


予め土台は出来たので硅砂をガラスに【錬成】し、偽アルミニウムを覆うように設置。

ここで使うガラスは透明度だけじゃなく、温度を逃さないことにある。扉は取り出しやすいように左右開閉式だ。

二層の扉で左右で開けられる。横に伸びた分の利点はこういう場合に便利だね。


「さて、このまま見せれば大目玉は確実か」


余ったスクロール用羊皮紙で偽装を施す。

店長の借りてる氷温機が銅で側を囲っていたのを見てそれを真似た。銅は確か電気との相性がいいんだっけか?

どんなスクロールを使ってるか知らないけど、僕の知識にはないのでどうでもいい。

温度を調節する摘みをつけて完成だ。

明日自慢しよう。



翌日。

仕入れを終えた店長が肉と小麦粉を乗せた台車を傾かせるくらいに驚いていた。

その氷温機は見たこともないほどの大きさで、そして屋台の後ろに収まるサイズではなかった。

確かに三倍以上入るが、場所を取り過ぎているとすぐ横の屋台からダメ出しを喰らった。

お前ばかりそんな事が認められるかと言いたげである。


屋台によってはちょっとした事で足の引っ張り合いが起こる。

ただでさえ僕で客を取られてる店が後を経たない。

好機を得たりと言葉を荒げる連中が多いのはそういう事だろう。

ちなみに怒られているのは店長だけだ。

僕? 僕も一応一緒に謝ったよ。謝ったら向こうが急に引くもんだから謝り損だったけど。


「その、なんだ? これも勉強と思って。なぁ?」

「チクショウ、事前にサイズ言えよな!」

「先走ったのはどっちだよ。まさか1日で仕上げてくるとは思わんわ! 借りるにしたってそこら辺の下調べをだなぁ?」

「でも、使い心地は良いだろう?」

「ああ、使い心地は最高だ」


取り敢えず屋台からハミでてる分は周囲に謝罪して、サイズを調整した冷蔵庫を後日納入した。

ちなみに元の氷温機を【錬成】し直したので費用は増えてなかったりする。

錬金術のいいところは素材を使いまわせるところだよね。

まぁ、お陰でポーション作成に作る魔力は消しとんだんだけどさ。トホホ……

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