第57話 ギャルゲー
『ねぇ、リョウガ。私……あなたのことが好きなの』
『アリサ……』
『あの時、貴方に助けられた時からずっと。リョウガは私のことどう思ってるの?教えてよ……』
俺は、俺は——
★
「いやー、面白いな……」
目の前にある携帯ゲーム機のボタンを押すと、金髪ヒロインの表情が切り替わる。
俺が今プレイしているのは、最近発売された話題のギャルゲー、『金と銀 どっちが好き?』という作品。
なんでも、中世ヨーロッパ風の世界で貴族が通う学校を舞台としていて、ヒロインが全員金髪か銀髪という一風変わったタイプの作品だ。
そして俺が今攻略しているのは、
このヒロインはとある小国のお姫様らしい。
プレイヤーの名前を呼んでくれないのは残念だが、ストーリーもしっかりしているしイラストもかなり可愛い。
——まあ、正直こんなことをしている場合では無いのだが。
「はぁ〜、何も考えたくないー」
ベッドをゴロゴロと転がりながら俺は思考を巡らせる。
……柳エリカ。
俺の通う桜川高校の1年生で、金髪ロングの美少女。
なんでも、最近声優になったらしく校内での知名度は葉月さんを越して間違いなく一番有名人といっても過言ではないだろう。
そんな彼女が、なぜか俺の正体を知っていたのだ。
口止めはしておいたが、なぜバレたのか全く予想がつかない。
おまけにあの後、クラス中の男子から睨まれるし、葉月さんと山田君からは質問攻めに合うしで散々な目にあった。
さすがにもう関わってくることはないだろうが、本当に心臓に悪いな……。
そして、問題はそれだけではない。
プルルルッ プルルルッ
ピッ
「もしもし、根倉です」
『あ、ryogaくんお疲れ〜』
電話の相手は関さんだった。
「どうしたんですか」
『いやー、今週末アレがあるだろ?コスプレのやつ』
「はぁ……」
——そう、それがもう1つの問題。
それは今週末に行われるアニメ『アニマルふれんず』のトークイベントだ。
いくらコスプレをするとはいえ、大勢の人の前で素顔を晒すことになる。
うっ、想像しただけでお腹が……。
『どうしたんだい?ため息なんかついて。せっかくファンにアピールできる機会なんだよ?』
「いや、ため息もつきますよ……」
アピールどころかファンが激減しそうな気しかしない。
マジで今からでもキャンセルできないかな……。
『は〜、何を弱気になってるんだいryogaくん。もっと自信持たないと!あっ、それでなんだけど、アニメの公式アカウントがもうすぐツイートするだろうから、それをRTしてくれるかい?』
「分かりました」
『それじゃあね〜』
ピッ
通話を切ったその場でツイッターを立ち上げる。
——って
「な、なんだこれ?」
プロフィール画面のフォロワー数がおかしい。
修学旅行の抹茶パフェから怖くて開いてなかったのだが、今開いた俺のスマホに映っているのは15万を超えるフォロワーの数。
一瞬バグかと思ったが何度更新しても画面の数字はそのまま。
確かエレナのフォロワー数が20万くらいだったから——いや、マジか……。
「それで、『アニマルふれんず』——っと。あ、これか」
俺は検索欄でアニメのタイトルを入力し、公式アカウントをタップする。
すると、ちょうど数分前にイベントの告知がツイートされていた。
なになに?
【前売り券が発売開始1分で瞬殺しました!申し訳ありません、、】
ツイート内容を見て少し驚いてしまう。
そんなに人気だったのかこのアニメ……。
いや、姫宮さんが出演するからというのもあるのだろう。
どちらにせよ気が重いな……。
俺はすぐにそのツイートをRTする。
関さんには何も言われてないが、自分のほうでも何か呟いたほうがいいのだろうか?
……まあ、とりあえず姫宮さんのツイッターを見てみるか。
そう思って姫宮さんのアカウントを調べて表示すると一番最近のツイートでさっきの告知ツイートを引用RTしていた。
しおり 【なんとなんと、今回はryogaさんと出演させていただけることになりました〜!個人的にもryogaくんとお話したかったのでとても楽しみです♪】
2、3分前のツイートにも関わらずRT数が500を超えているのが目に入る。
す、すごい勢いだな……。
自分でツイートするのも面倒くさいし、姫宮さんのツイートに返信するか。
そう思ってボタンを押し、『あ』ととりあえず入力。
一時保存するか……って、
「う、嘘だろ?」
間違えて送信ボタンを押してしまう。
そして画面に表示されているのは姫宮さんのツイートの真下に俺の【あ】が表示されている状況。
や、やばいやばいやばいやばい!
俺は慌ててツイートを削除しようとするが時既に遅し。
しおり 【どうしたんですか?笑】
削除する前に姫宮さんからの返信が届く。
……ってかさすがに返すの早過ぎないか?
そしてこうなるともう削除はできない。
ryoga 【間違えました】
「うわぁぁぁ!」
想像以上の恥ずかしさに俺は顔を枕にうずめて絶叫する。
お、終わった……。
「……」
しばらくして枕から顔を上げて再び画面を見ると、他にも俺の『あ』に返信が来ている。
四条エレナ 【草】
い、いっそ◯せぇぇぇ!!!!
エレナからのとどめの一撃で、俺のHPはもう0。
(はぁ……)
バタンッ
力尽きてベッドに大の字で横たわり、俺は無言でゲーム機のスリープを解除。
「続き、やるか……」
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