第50話 相談
ドンッ
「きゃっ!」
「あっ、すみません。って……」
ぶつかった人に反射的に謝り目を向けると——
「な、七星さん?」
「ふぇっ?」
そこにいたのはTry☆Starsのメンバー、七星めぐりその人。
尻餅をつき、ポカンとした目でこちらを見ている。
な、なんでここに……。
「あらっ、ryogaくんじゃない」
「ま、マヤさん!?」
マヤさんまで?
ど、どういうことだ……?
★
「——って感じで、私たちロケに来てたのよ」
「あっ、そうだったんですね」
マヤさん曰く、『ちょうどTry☆Starsのラジオ1周年の特別回で、スタジオではなく京都でロケをしていた』ということらしい。
俺は顔出しをしていないためそういったこととは縁がないが、なるほど……。
ただ、周りを見渡してもマヤさんと七星さん、そしてスタッフの人達しか見当たらない。
「あの……姫宮さんは?」
「ああ、しおりちゃんね。他の現場が被っちゃって来れないみたいよ」
「な、なるほど」
まあ、あれだけアニメやイベントに出まくってたらそうなるよな……。
少し羨ましい。
「あ、ひょっとしてしおりちゃんに会いたかった?ごめんねぇー」
「いや、何を言ってるんですか……」
わざとらしい表情で俺に向かって手を合わせ、謝ってくるマヤさん。
全くこの人は……。
それにしても、まだ収録している途中なのだろうか?
「あの、ひょっとしてお邪魔でしたか?もしアレだったら——」
「いや、全然大丈夫よ。さっき収録が終わったところでね、もうすぐ解散するから待っててくれる?」
「あ、分かりました」
————
「お待たせー!」
「いえ、全然大丈夫です」
「それで、ryogaくん。今の私たち見て何か言うことない?」
意味深な顔でこちらを見てくるマヤさん。
さっきは突然のことで驚いていたためあまり気にしていなかったが、改めて2人を見ると……。
「その
「ふふっ、お姉さん嬉しいわ♪」
そう、2人が着ているのは普段着ではなく浴衣に下駄という格好。
京都のロケだから、それに合わせて衣装も和服にしたのだろう。
まず、マヤさんが着ているのは水色を基調としたアジサイ柄の浴衣。
そして——
「ほらっ、隠れてちゃダメでしょ。めぐりちゃん」
「で、でもぉ〜〜」
そう言ってマヤさんに押されるようにして俺の前に出てくる七星さん。
ピンク色にカラフルな花柄が散りばめられた浴衣を着ている。
分かってはいたが、やっぱり美少女なんだよな……。
「そ、その……すごく可愛いです」
「〜〜っ!!」
パタパタパタッ
顔を赤くして、再びマヤさんの後ろに隠れてしまう七星さん。
ま、マジか……。
やっぱり今の俺のセリフが気持ち悪かったのだろう。
目線さえ合わせてくれない。
「あの、すみません……」
俺は七星さんに謝る。
こういうことはイケメンに言われないと嬉しくないよな、完全にやらかした……。
「いや、別にそういうわけじゃないのよryogaくん?ほら、めぐりちゃんもそんな態度じゃ——あっ!」
ふと、何かを思いついた様子のマヤさん。
「マヤさん、どうしたんですか?」
「いや〜、実はね。めぐりちゃんがryogaくんに
「七星さんが俺に……ですか?」
七星さん後ろでめっちゃ首を横にブンブン振ってるけど、、
「そうそう、そうなのよ〜。あっ、ちょっと席をはずすわね」
マヤさんが七星さんを連れて少し離れた場所で何やら話している。
な、何なんだ……?
「ごめんねー!」
「それで、相談って何ですか?」
「めぐりちゃんがね、役作りで困ってることがあるみたいなのよ。それでryogaくんに手伝ってもらえないか、ってことみたい。もしryogaくんが今から時間空いてたら付き合ってあげてくれない?」
今度はマヤさんの後ろで首をブンブンと縦に振っている七星さん。
まあ、晩ご飯まで一緒に回る人もいないしな……。
「分かりました。俺に手伝えることであれば」
「良かったわ〜、それじゃあ私はここで!じゃあねryogaくん」
「えっ?」
タッタッ
マヤさんはあっという間に去って行ってしまった。
そして残っているのは俺と浴衣姿の七星さんのみ。
「「……」」
ど、どうしたらいいんだ?これ……
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