第47話 ツイッター

修学旅行の前日。

学校帰りの俺は駅近の本屋に向かっていた。


タッタッ


「いらっしゃいませー」


本屋に着いた俺はラノベコーナーに直行。

えっと、今日発売だから新刊コーナーにあるはず——


「こ、これか……」


新刊コーナーに積まれた本を上から1冊取る。

表紙のイラストからして、もう神すぎだろ……。


そこに書かれているのは『俺の青春は間違ってない……たぶん』というタイトル。


——そう、今日は『俺マチ』最新刊の発売日なのだ。


レジで会計を済まして、俺は早足で店を出る。


「ありがとうございました〜」


よし、帰って読むか——





パタンッ


「いや、面白かったな……」


『俺マチ』を読み終わった俺は本を閉じ余韻に浸る。


今巻はエレナが演じているヒロインのメイン回。主人公との絡みや他のヒロインとの掛け合いもかなり完成度が高く、今回も大満足だ。


ふぅ、これで明日からの修学旅行も余裕で乗り切れるな……。


プルルルッ


そんなことを考えているとスマホから着信音が鳴る。

最近電話が多いな……。


「もしもし、根倉です」


『あ、ごめんねryogaくん。今大丈夫かい?』


電話をかけてきたのは関さんだった。

仕事関係の話だろうか。


「はい、大丈夫です。何の要件ですか?」


『いやー、実はね……。ryogaくんにツイッターをやって欲しいなと』


「ツイッター、ですか?」


突然の申し出に驚いてしまう。

俺がツイッター?マジか……。


『ああ。ほら、ryogaくんって顔出ししてないだろ?それで知名度をあげるために何かできないかってことでね』


確かに、それは俺自身感じていた。

エレナや姫宮さんもツイッターやインスタをガンガン活用してファンを増やしているし、そういったツールがあるのであれば使わない手はない。


「……まあ、分かりました。アカウントとかはどうすればいいですか?」


『それはこちら側で用意してあるから、今送ったメールを見てくれるかい?』


「了解です」


俺は送られてきたメールのurlを開き、ツイッターのプロフィール画面を開く。


……ってえっ?


「な、何ですかこれ?」


『いやー、これは僕からのサプライズだよ。どう、嬉しいだろ?』


【ryoga】と書かれたアカウント名の横にあるプロフィール画像は黒髪の超絶爽やか系イケメンのイラスト。

し、しかもこのイラスト——


「こ、これってまさか……」


『ふふふ、そう。『俺マチ』のイラスト担当、【赤魔神】先生に君の似顔絵を描いてもらったんだ。先生けっこうスケジュール忙しくて、描いてもらうの大変だったんだよ?』


『褒めて?』と言わんばかりの口調の関さん。

恐らく画面の向こうでドヤ顔をかましているのだろう。

いや、でもマジか……。


これは素直に嬉しい。

嬉しいのだが——


「どうみても俺じゃないですよね、これ?」


俺の似顔絵と言っていたが、どう頑張っても俺はこんなイケメンじゃない。

まあ、どうせ関さんが『イケメンに描いてくれ』とかお願いしたのだろう。


ほんとに、余計なことを……。


『いや、本当にryogaくんの写真を送って似顔絵を描いてもらったんだよ。僕は結構似てると思うけどな〜』


「いや、そんな訳ないじゃないですか……」


こんなイケメンだったら人生楽しいだろうな。はぁ。


『じゃあこの画像やめるかい?』


「い、いや。……これでいきます」


さすがに赤魔神先生のイラストを使わないわけにはいかないしな。

余計に顔出しし辛くなったが、まあ仕方ない。


『いや〜、そう言ってくれて良かったよ!ははっ、僕もやった甲斐があるなー』


あんたが余計なことをしなければもっと良かったんだけどな……。


「それで、俺は何をすればいいんですか?」


『まあ、とりあえず仕事関係のツイートはこっちから指定するからリツイートしてくれ。あとはプライベートな感じで使ってくれて大丈夫だよ。普段の食事とか、遊びに行ったところとか。ただ、公開してない情報は呟かないで欲しいって感じかな』


「分かりました」


『あっ、そういえばryogaくん明日から修学旅行だろ?行った先の観光スポットとか、ご飯とか上げてくれたらいいと思うよ』


なるほど、それはアリだな。


「了解です」


『それじゃあ、お疲れさま〜』


「はい、お疲れ様です」


プツッ


電話を切った俺はツイッターの画面を開く。

まずは自己紹介だな。


【初めまして、ryogaです。ツイッター始めました】


そうツイートして画面を閉じる。

よし、これで明日からも少しは楽しくなりそうだな……。


——この時のツイートが、1万RTを超えることを涼雅はまだ知らない。

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