4章

第46話 班決め

キーンコーン カーンコーン


「お前ら席についたな。よーし、じゃあ今日の朝礼はアレ・・やるぞ〜」


週明けの月曜日。

いつもなら読書をしているはずの時間だが、今日は少し違った。


「おい、お前どうする?」


「ああ、もう決まってるよ」


「うわー、マジかよ!」


ザワザワ ザワザワ


クラスがざわついている。

そう、今日は——


「前から言っていたと思うが、今日は修学旅行の班決めやるからなー」


2週間後にある、修学旅行の班決めをする日。


(はぁ……)


顔を下に向け、落ち込んだ様子の涼雅。


それもそのはず、班決めの話は1週間前から告知されていたため周りのクラスメイトはほとんどグループが決まっている中、涼雅だけが決まっていない状況なのだ。


そして先日の鈴木の一件以来、『空気のような存在』から『関わったら面倒くさそうな奴』にランクアップしてしまった涼雅に声をかけようとするクラスメイトなどいるわけもない。


おまけに、唯一の希望であった山田君と葉月さんも今日に限って体調不良で休んでいる。


(お、終わった……)


力なく肩を落とす涼雅をよそに、担任の話は進んでいく。


「それじゃ、今から後ろの黒板に4人のメンバーを書いていってくれ。あと、1人余ると思うから5人組もオッケーだ」



————



「よし、大体決まったみたいだな。今日の休みは……葉月と山田か。この2人は適当にグループにいれてやってくれ」


「はーい、凛花ちゃんは私達のグループで!」


「えっと、や、山田君は僕等のところでお願いします」


凛花は陽キャグループの女子に、山田君は日陰者のグループに決まる。

そんな中、ポツンと取り残されている涼雅。


「……」


「うん?なんか1人足りないな。まだ書いてない奴はいないか?」


「……はい」


そっと手を挙げる涼雅。


「あっ、根倉か。誰か根倉をグループに入れてやってくれるか?」


「「「……」」」


「はぁ、分かった。じゃあ先生が適当に決めるからな——」


そうして決まった涼雅のグループだが、メンバーがこそこそと話し合いをしているのが聞こえる。


「おい、根暗とかマジかよ……」


「班行動どうする?」


「あっ、個人行動ってことにして10分後くらいに別の場所で落ち合わね?」


「お前マジ神じゃん!それ採用だわ」


聞こえていないと思っている彼らのヒソヒソ話も、普段のぼっち生活で鍛えられた耳を持つ涼雅には聞こえてしまう。


(はぁ、マジか……)


メンタルを抉られた涼雅は、力なく机に突っ伏すのだった。







「ただいま〜、朱理」


「あっ、お兄ちゃんおかえり!」


家に帰った俺をパタパタと走って出迎えてくれる朱理。

いつ見ても可愛いな……。


「朱理、頭撫でてもいいか?」


「へっ?う、うん。いいよ」


ナデナデ ナデナデ


ふぅ、癒されるな。

今日の学校で削られた俺のメンタルも、徐々に回復していく。


「ふにゃ〜、くすぐったいよ」


「あっ、ごめんごめん」


パッと手を離し、俺は自分の部屋に戻る。

それにしても……


ガチャッ


「はぁ〜〜」


ベッドに寝転がって、盛大なため息をつく。

というのも、今日の朝礼でのことだ。


「公開処刑だろ、あれは……」


修学旅行の班決めで、俺が最後まで残ってしまったのだ。


2人がいればあと1人誰か誘ってグループを作れたかもしれないが、今日に限って葉月さんも山田君も欠席。


まあ、2人以外に友達がいない俺が悪いといえば悪いのだが、、


「マジか……」


もうため息しか出てこない。

おそらく修学旅行は実質ぼっち旅行になってしまうのだろう。


プルルルッ プルルルッ


誰だ?

スマホの画面を見ると、そこには『葉月凛花』の文字。


「もしもし」


『あっ、涼雅くん!今日の班決めどうなった?』


食い気味にそう尋ねてくる葉月さん。


『も、もしかして。涼雅くんと私違うグループ……なのかな?』


「そうですね。葉月さんは桜川さん達のグループです」


『そ、そっか……。それで涼雅くんは?』


「俺は……最後までグループが決まらなくて。結局4人組に追加で入ることになりました」


『ご、ごめんね……』


「いや、大丈夫です」


正直、全然大丈夫ではない。

学校で抉られた俺のメンタルはほぼ0。


とはいえ、葉月さんに心配されると余計に悲しくなるからな……。


『さ、最終日は自由行動だからそこは一緒に京都回ろうね!』


「はい」


『あ、そうだ!明日は涼雅くんの大好きなハンバーグにするから、ね?』


「……いや、本当に大丈夫です。葉月さんのほうこそ大丈夫ですか?」


『あ、私はただの風邪だから明日には治ると思うよ!じゃ、じゃあ明日学校でね』


「はい、お大事に」


ピッ


ポスンッ


俺は電話を切り、ベッドに倒れ込む。

ふぅ、なんとか4日間頑張るか……。

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