第20話 ラノベ主人公
僕の名前は山田
ラノベとアニメが大好きな、冴えないボッチ高校生だ。
学校では自分の机で1人、ラノベかスマホのネット小説を読む日々……。
そんな僕にも、ついに友達が出来たのだ!
彼の名は根倉 涼雅。
僕が言うのもなんだが、根倉くんは典型的なボッチだ。
教室ではいつも1人でスマホをいじっている。
おまけにボサボサの髪にマスクと黒い丸メガネ。
見た目に無頓着な僕でも、もう少しなんとかならないのだろうかと思うような格好をしている。
まあ僕自身、彼よりはマシだろうと思って安心している部分もあったりするから直されると困るのだけれど……。
だが、最近の彼は様子がおかしい。
事の発端はつい先日の体育の授業。
2人1組でペアを組むのにあぶれてしまった彼と、葉月さんがペアになったのだ。
その時に、気のせいだろうけれど……葉月さんが彼にかなりベタベタとくっついていた。
――しかも頬を赤く染めて。
僕を含めクラスの男子たちはその光景に目を疑った。
愛想は振りまいてくれるが、決してガードを緩めることのないあの天使が!?
いやでもまさかな……。
まあ、これだけなら偶然や気のせいで済む程度の話だった。
『たまたま柔軟をしているところがくっついているように見えただけ』とか、『葉月さんに熱があったから赤くなっていただけだ』とかみんな言っていたし、僕自身そう思っていた。
――――しかし、それは起こったのだ。
1週間くらい前の朝のホームルーム直前。
「みんなおはよ~!」
ガラガラと扉を開け、姿をあらわした天使。
艶のあるセミロングの黒髪、プリっとした唇。
アイドル顔負けのようなルックスで、今日も向日葵のような笑顔を振りまいている。
「凜花ちゃんおはよー!」
「おっす葉月さん!今日も可愛いな~」
それと同時にクラスメイトたちが、我先にと挨拶合戦を始めて教室がにぎやかになる。
そんな、いつもの光景が非日常へと姿を変えたのはその直後のことだった。
「おはよ、涼雅くん!」
「……」
イヤホンをしているせいか、葉月さんの挨拶に気づいていない根倉くん。
そんな彼にしびれを切らしたのか、天使は彼の席に座り込んだのだ。
そこからは小声でやりとりしていてよく聞こえなかったけれど、結局根倉くんが逃げるように教室から飛び出して行ってしまった。
しかも心底
僕だったら葉月さんがあんな至近距離で話しかけてきたら3秒で昇天してしまうだろう。
うん、即死する。
それを嬉しそうな表情1つせずに……。
何なんだ君は、聖人なのか?君子なのか?
それからというもの、葉月さんは事あるごとに彼を構うようになっていた。
鈴木達の射殺すような視線がなければ僕と変わって欲しかったんだけど……。
だがそれすら気にしている様子はない。
本当に何なんだ君は……?
もしこれで他の美少女たちにも好かれていたとしたら……。
いや、さすがにそれはないだろう。考えすぎだ。
そんなのラノベ主人公くらいしかあり得ない。2次元の中だけの話。
現実でそんなことが起こるわけがない。
……ないよね?
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