第17話 現場 ③
間違いない。俺の目の前にいるのは姫宮しおりその人だ。
「涼くんも声優さんだったんですねっ!」
そう言って俺の手をギュッと握ってくるしおりん。
「は、はい。一応」
というか手……
「もうっ、なんであの時言ってくれなかったんですか?」
彼女は拗ねたような表情で俺を上目遣いに見つめてくる。
「ちょっと、手離しなさいよ!」
しおりんに握られていた手が引き離される。
横を見ると顔を真っ赤にしたエレナが俺を睨んでいた。
な、なんでそんなに怒ってるんだ……?
「お、落ち着けエレナ」
「落ち着けるわけないでしょ!!どういうことよリョウガ!」
「い、いやだから……」
「まあまあ、落ち着いてください四条さん。涼くんはチンピラに絡まれていた私を助けてくれたんです」
「そ、そう……」
しおりんの助け舟でエレナも少し落ち着いたようだ。
本当に助かった……。
「その時にライン交換して、お礼にご飯に行く約束をしただけですよ?」
「は、はぁ!?だってリョウガはライン交換してないって……」
「交換しましたよ?」
「ちょ、ちょっと待っ――」
俺が止めようとするが時すでに遅し。
しおりんはスマホから俺のアカウントを表示させ、エレナに見せる。
「い、いや違うんだエレナ。これには事情があって……な?」
「ふぅ~~ん、そうなんだ?リョウガは私が心配してた時に姫宮さんとライン交換して楽しくおしゃべりしてたんだ?鼻の下のばして。」
「あ、そういえばあの時の涼くんすごい嬉しそうな顔してましたね」
してないです。というか遅刻しそうで死にそうな顔してたはず。
なんでしおりんもそんな嘘を……。
「……」
急に黙り込むエレナ。
めちゃくちゃ怖いんだが……。
「な、なあエレナ――」
「私も行く」
「へっ?」
「だから、私もご飯行く。姫宮さんもいいでしょ?」
「私は別にいいですよ。涼くんさえよければ」
「リョウガはオッケーに決まってるわ。ねっ?」
笑顔でこちらを見てくるエレナ。
『断ったらコロす』とばかりに、目だけ笑っていない。
「あ、ああ」
「四条さん、無理矢理はよくないですよ?」
「あら、どういう意味かしら姫宮さん」
場に険悪な雰囲気が流れる。
なんでこんなに仲悪いんだ……。
確か、前にアニメのイベントで『私たち仲いいんです♡』とか言ってた気がするんだけど。
「お、おい、2人共仲良くな?」
「「……」」
や、やばい。どうしたらいいんだこの状況?
「あれ、しおりんじゃん!ってみんなどうしたんだ?」
背後から聞こえた声に振り向くと、そこにいたのは須田さん。
ナイスタイミングすぎる……!
「い、いや実は――」
★
「なるほどな〜。楽しいことになってるじゃん」
ニヤニヤと笑っている須田さん。
まったくこの人は……。
「じゃあ勝負して決めるってのはどうだ?」
「「「勝負?」」」
3人の声がハモる。
「今からやるアフレコで、より良い演技をしたほうがryogaくんとご飯を食べに行ける。どうだ、面白そうだろ?」
「い、いやそんなの――」
「私はいいわよ。どうせ勝つし」
「ふふっ、私もいいですよ。結果は見えてますから」
2人はバチバチと火花を散らしあっている。
「よしっ、じゃあ決まりだ!ryogaくんがジャッジってことでよろしく。そんじゃあまた後でなー」
「あ、待ってくださいよ」
須田さんは言いたいことだけ言って去ってしまった。
ま、まじか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます