第15話 返信

朝、俺は学校への通学路を歩いていた。


春も終わり、程よい暖かさで太陽の光が燦燦と降り注いでいる。

こんなに気持ち良い天気にもかかわらず、俺は悩んでいた。


「どうしよう、これ……」


その原因は俺が今見ているこのライン通知のせいだろう。


ピコン


凜花『おはよう涼雅くん!今日もいい天気だねっ♡』


ピコン


凜花『おーい、起きてる?』


ピコン


凜花『あれ、なんで既読着かないのかな~?まだ寝てたら遅刻しちゃうゾ!』


さっきから5分おきくらいに、可愛らしい音とともにスマホのホーム画面に表示されるラインの通知。


ラインを送ってきている相手は先日、俺に初めてできた高校の友達――葉月凜花さん。

セミロングの黒髪がよく似合う、学年一の美少女だ。


正直、ラインが来るなんて思っていなかったから心の準備が……。

だって、あの葉月さんだぞ?


そもそも、俺のラインには仕事関係と家族を除くと3人しか友達がいない。

エレナとしおりん、そして葉月さん。


しおりんは社交辞令でラインを交換してくれただけだろうから、実質2人しかいない。


エレナは……まぁ幼馴染というのもあるから置いとくとして。


つまり、友達からのラインというのはこれが初めてなのだ。

どう返したらいいのだろう。。

というかもはや通知が溜まりすぎて、どれに返信すればいいのかが分からない。


そうしている間にもピコンピコンとスマホが音を鳴らす。

くっ……。





「もうっ!なんで返信返してくれなかったの?」


朝のホームルーム前の教室。

俺の目に映っているのは、怒ったようにぷくっと頬を膨らませる葉月さんの姿。


「ご、ごめん……」


「私不安だったんだよ?涼雅くんに嫌われちゃったんじゃないかって」


「そ、それはあり得ないです。ほんとに」


こんな天使のような女性を嫌いになる人なんていないだろう。

嫌われることはあっても嫌いになれるはずがない。


「そっか、良かった。」


そう言って満面の微笑みをこちらに向けてくる葉月さん。

その笑顔はやっぱり可愛くて、胸がドキドキと高鳴る。


「あ、そうだ。涼雅くんって今日のお昼はどうするの?」


「えっと……購買でパンとか買うつもりです」


「ふふっ、よかった」


葉月さんは自分の鞄からピンク色の包みを取り出す。

楕円の形をした箱のようなそれを俺の机に置いた。


「これは?」


「お弁当だよ。早起きして涼雅くんの分も作ってきたんだ」


「えっ」


突然のことに理解が追い付かない。

葉月さんがお弁当、それも俺に?


「ひょっとして嫌、だったかな?」


「そそ、そんなわけにゃいです」


か、噛んでしまった……。


「ふふっ、涼雅くん可愛いね。猫みたいだよ?にゃー」


顔の前で手を招き猫のようにしてにゃーにゃ―と猫の真似をする葉月さん。

可愛いのはあなたです。


「じゃあ、昼休みは例の場所で一緒に食べようね!」


そう言って、彼女はカバンを持ち自分の席に戻っていく。


「手作り弁当ってやつ……だよな」


ラノベだったら好感度高めのヒロインが主人公にする行為。

でも、これは現実だ。そういう関係になることはあり得ない。


「……」


本当に分からない。

しおりんのことと言い、俺の周りで何が起こってるんだ……。



そんな風に困惑している涼雅をギロリと睨む男が1人。


「調子乗ってんじゃねえぞ。根暗ごときが……」


彼の名前は鈴木俊。

――――涼雅をボッチにさせた諸悪の根源だ。

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