第2話 学年のアイドル、葉月 凛花
「ねえねえ、朝のニュース記事見た?」
「うん、見た見た!ryoga様の特集でしょ?ホントにヤバかった!」
「ベテラン声優の人が『ryogaはイケメンだ』って言ってたのヤバくない!?かなりテンション上がるんだけど!ツイッターでめちゃくちゃ話題になってるし」
「あー、ryoga様ってどんな人なんだろ」
「「「気になる~!」」」
朝の教室では、今日もryogaの話題で持ちきりだった。
クラスの女子達の会話が嫌でも耳に入ってくる。
おそるおそるスマホでツイッターを開くと、トレンドの1番上にあった検索ワードは『ryogaはイケメン』。
お、終わった……。
「うわっ、根暗がこっち見てくるんだけど」
「マジでキモい……」
「ほんとそれ、不気味だよね。なんか喋れっての」
あまりのショックに放心状態だった俺に、小声で罵倒が浴びせられる。
『根暗』というのはクラスでの俺の呼び名。
読み方は一緒なのだがちょっと発音が違う。俺は根暗じゃない、根倉だ。
声バレを防ぐために存在感を消し、極力言葉を発しないようにしていたらいつの間にかそう呼ばれるようになっていた。
自業自得とはいえ少し悲しい。
「みんなおはよ~!」
ガラガラとドアを開けて教室に入ってきたのは我が学年のアイドル、
セミロングの黒髪という俺のどストライクな髪型で向日葵のような笑顔を振りまいている、学校でも指折りの美少女だ。
「根倉くんもおはよ!」
「おおお、おはようございます」
緊張しすぎてかなり挙動不審になってしまった。
「葉月さん本当にいい子だよな」
「ああ、あの根暗にさえ挨拶してあげるなんてマジ天使すぎる……」
彼女がクラスの壁を越えて人気があるのは、優れた容姿に加えてこの分け隔てなく接する態度ゆえだろう。
ああ、今日も1日頑張れそうだ。
「凛花ちゃん、今朝のyahuuニュース見た?」
「うん、もちろん見たよ!ryoga様はやっぱりイケメンだって聞いて妄想が止まらないよ。えへへぇ……」
「凛花ちゃんが恋する乙女の顔になってるー!」
どうやら葉月さんもryogaのファンらしい。
心の癒しである葉月さんにもし正体がバレたら……。
思わず背筋がゾッとする。
絶対に俺がryogaだとバレないようにしなければ。
★
先ほどの思わぬストレスで腹が痛くなり、トイレから出てきたのは朝礼ギリギリの時間だった。
駆け足で教室へと戻っていると廊下の角から出てきた人とぶつかってしまう。
「きゃっ!」
「いてっ!あ、すいません。大丈夫ですか?」
顔を上げると、ぶつかった相手は葉月さんだった。
俺のほうを驚いた顔をしている。
俺の顔に何かついているのだろうか?
「あの――」
「ryoga……さま?」
彼女の口から出てきた言葉にビクッとなる。
なぜバレた?
いや、まだバレたわけではない。なんとか誤魔化せるはずだ。
「ryogaって誰のことかな?俺よく知らないんだけど。じゃあ、先教室戻っとくね」
内心冷や汗を垂らしつつ、俺は慌てて教室に戻った。
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