クラスメイトに『根暗』と呼ばれ馬鹿にされている俺ですが、実は超人気声優です。

タマ

1章

第1話 プロローグ

5月上旬。

春も本格的になり、気候も少し暖かくなってきた東京のとある住宅街。


「はっ……はっ……」


道路脇をジャージ姿の黒髪少年がリズミカルに走っていた。

彼の名前は根倉ねくら 涼雅りょうが

都内の公立高校に通う高校2年生だ。


「うわぁ……。あの人カッコいい」


道行く女性が彼を二度見してそうつぶやく。

しかし、その声は彼には届かない。


しばらく走ったところで、少年は公園の前で立ち止まり中に入っていった。

公園のベンチで休憩がてらスマホを触る彼の目に映ったのは、とあるニュース記事。


『【声優特集 第2弾】 ~人気急上昇中!謎の人気声優「ryoga」に迫る~』


「はぁ……」


少年の口から、思わずため息が漏れる。

なぜなら、そこに書いてあったのは根も葉もない話――――





「ただいまー」


「あ、お兄ちゃん。おかえり~」


家に帰った俺を出迎えてくれたのは妹の根倉 朱理あかり。中学3年生。


切り整えられた前髪、栗色のショートボブがよく似合っている。家族という贔屓ひいき目なしで客観的に見ても、かなりの美少女だ。


「ご飯作ってるから一緒に食べよー」


「ああ、分かった」


俺と朱理は両親の元を離れ、マンションの一室を借りて2人で暮らしている。


「じゃあ、手を合わせて」


「「いただきまーす!」」


妹の用意した朝ごはんを、テーブルを挟んで食べる。


「ねぇ、お兄ちゃんのニュース記事見たよ。すっかり人気者だね~」


向かい側で焼き鮭をつつきながら、そんなことを言う朱理。


「ああ、あれか。俺がイケメンなわけないだろ?ほんとに……」


今朝、ランニングの途中に公園で休憩していた時に見てしまったニュース記事。


『我々が取材したベテラン声優・M氏の証言では、ryogaは驚くほどイケメンらしい』


今までに共演したことのある人の誰かだろう。まあ別にマイナスイメージがつくわけでは無いから良いのだが、ファンがこれを鵜呑みにしてしまうのが内心申し訳ない気持ちになる。


ryogaの正体がクラスで『根暗』なんて呼ばれている、冴えない高校生なんて知られたら……。


「私はお兄ちゃんのこと、ブサイクなんて思わないけどなぁ(む、むしろすすす、好き!)」


「そう言ってくれるのは朱理だけだよ。ありがとうな」


俺のことをフォローしてくれる朱理。お世辞だろうと思うが、本当にできた妹だ。


「ふぇっ?う、うん。お兄ちゃんのことを分かってるのは私だけなんだから、ね!」


(お兄ちゃんに褒められちゃった!ふぇぇ……)


そんな妹の内心も知らず、食器を片付ける凉雅。

洗面所で前髪を下ろし、マスクと大きな丸眼鏡をかける。


(よしっ、これで準備完了!)


「ごめん、今日日直だから。行ってきます」


「はーい、行ってらっしゃ〜い」


妹に行ってきますの挨拶をして家を出ていく根倉 涼雅。


——彼の正体は【ryoga】、顔出しNGの超人気声優だ。

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