JKの赤い竜 VS パリピの黒い龍

 レッドドラゴンに乗って、ジーク王子は魔法陣の中に入ってきた。


「ジーク王子! なんでドラゴンなんかに?」

「オレもついてるから安心しろよ、ロバート!」


 レッスルが、王子を連れてきたらしい。


 雄叫びを上げながら、レッドドラゴンが魔法陣に向けてブレスを放つ。


 ドラゴンの加勢によって、魔族たちも勢いが削がれていった。


「加勢します」


 ヘザーも、下級魔族退治に協力する。


「無事だったのか、レッスル」

「ああ、コイツのおかげさ」


 上機嫌で、レッスルはドラゴンの首をペチペチと叩いた。


 レッスルの報告だと、王都はもう安心だという。


「くそ、我々の計画がことごとく!」


 王都を破壊する予定が崩れて、セルベールが悔しがる。


 そのせいか、魔法陣からの魔物が数を減らし始めた。


「次はお前だ、セルベール!」

「人の味方に成り下がった豚め、死になさい!」


 パーシヴァルが、セルベールと刃を交える。 


「ロバート、あの穴は塞いではいけない」


 ドラゴンの背に乗りながら、王子がなおもロバートたちに忠告する。



「なぜだ? チキュウが危ないんじゃないのか?」

「あの穴を塞ぐと、ヒナマルさんは帰れないぞ」


 王子が、一冊の書物を投げてよこす。


 書物を掴んだミニムが、戦闘中のロバートに代わって解読した。


「ミニムオババ、それは確かなのか?」



『うむ。調査の結果、あの穴を塞げば、次にチキュウへ行けるのは、二〇〇年後と書いておる』



「二〇〇年後だって!?」


 王子とミニムの解析によると、この世界とチキュウは、距離が近づく周期があるらしい。

 今がその時期なのだという。

 この時期を逃すと、もうヒナマルが生きてチキュウへ戻ることはできないのだとか。


「そんな! じゃあ、魔物ごと帰らせろとでも言うのか!?」

「だから、セルベールはこの場で討つ必要がある!」


 話を聞いていたのか、セルベールがこちらに視線を向けた。


「できると思っているのですか? これだけの軍勢で!」

「貴様、どこを見ている!」


 パーシヴァルの槍先が、よそ見をしているセルベールのノドを的確に捉える。


 しかし、槍がセルベールを貫くことはなかった。黒いヘドロのような物体に、攻撃を遮られたのである。


「な、コイツは!?」

「ナハハハハァ。ドラゴンを操っているのが、あなた方だけとお思いか? ダークドラゴンよ、この者たちを踏み潰してさしあげなさい!」


 ゲエエエエエエエ、という咆哮とともに、魔法陣がウニョウニョと生き物のように盛り上がる。

 ヘドロが溢れ出て、ドロドロのドラゴンを形作った。


「ドラゴンゾンビか!」


 皮膚がただれた黒い龍が、魔法陣から出現する。

 目は八つあり、赤黒く光った。

 口はイソギンチャクのように触手で構成されている。


 ネバネバのしっぽが、ドラゴンの赤い足に絡みつく。


 足を取られたレッドドラゴンが、よろめきながら転倒する。


 王子とレッスルが、ドラゴンの背からふっ飛ばされた。


「レッスル、オウジを連れて逃げろ! ヘザーは王子の保護! ヒナマル、行けるか?」

「ばっちし! カニカマ、やっちゃえ!」


 ロバートはヒナマルとともに、ドラゴンの背に乗る。

 おそらくこのドラゴンは、ヒナマルの言うことしか聞かないだろう。


「ユミ、そこは危ないから下がって!」

「バッチシ平気平気っ! バリア張ってっから、思いっきりやっちゃいな!」


 ヒナマルは、ミュリエルを避難を誘導しようとしたらしい。


 が、ミュリエルは結界を張ってパーシヴァル共々残る気だ。


「ムダです! ダークドラゴンよ、酸のブレスで全員溶かしてしまいなさい!」


 黒いドラゴンゾンビが、紫色の粘液を放出した。


 仰向けの状態から、レッドドラゴンが光線ブレスを吐く。


 ドラゴンのブレスが、酸の攻撃を頭ごと吹き飛ばした。


「やった!」

「まだだ!」


 ドラゴンゾンビの頭が、一瞬で再生する。

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