パリピ対JK 最終決戦

「くそお!」

「助太刀する!」


 操っているものを倒せばいいという判断になったのだろう。ロバートとパーシヴァルは同時に動いた。


 狙うは、セルベールの首だ。


 しかし、ドラゴンゾンビのしっぽに遮られ、進めない。


 レッドドラゴンが、ブレスでゾンビ龍の皮膚を焼く。しかし、またも再生してしまった。


「なにか、手はないか?」

「ムリだって! こいつは、ウチのいうことも聞かないもん!」

「そうなのか?」

「うん。オヤジの言うことしか聞かなかった」


 ならば、父親である魔王の影響を受けているということか。しかし、他界している魔王の力を、セルベールはどこから?


「ロバート、足元を見るのだ!」


 パーシヴァルの指摘どおり、セルベールの足を見た。


 そこには、魔王の生首が芦毛にされているではないか。


「あの頭を伝って、セルベールが司令を送り込んでいるのか!」

「そのようだな!」


 パーシヴァルが、セルベールへ向けて単身挑む。


「ロバートはスキを見て、セルベールから魔王の頭部を奪うのだ!」


 指示を飛ばした直後、パーシヴァルはセルベールと戦闘になった。八本以上ある多関節の触腕を、パーシヴァルは槍一本で打ち払う。


「よしきた!」


 ロバートは、指で笛を作った。吹くと、パクパカが二頭、ロバートの前に。


「カズコ、ヒナマルを乗せてやってくれ。ヒナマル、ドラゴンはミュリエルに任せるんだ!」


 ヒナマルは「わかった!」と返し、黄色いパクパカに飛び移った。


 入れ替わりで、レッドドラゴンの背中にはミュリエルが。ヒナマルかミュリエル、どちらかがやられたら負けだ。


 ヒナマルとは違って、ミュリエルの攻撃指示は容赦がない。

 打撃や斬撃など、インファイトでロバートたちから邪竜を遠ざけていく。

 魔法でムリヤリ命令を聞かせているのだろう。しかし、おそらく長くは持つまい。


 短期決戦だ。


「おおおおっ!」


 横乗り気味にパクパカにまたがって、重心を低くする。


 パーシヴァルとの戦闘で周りが見えなくなっているセルベールを狙うなら、今しかない。


 足元にある魔王の首に、手をのばす。


 直後、セルベールが背負う触腕の先が、死神の鎌のようになる。


「あなた方の狙いなど、お見通しですよ!」


 セルベールの鎌が、ロバートの腕に伸びた。


「それはどうかな?」


 玉砕覚悟で、ロバートは鎌を手甲で覆った腕で掴む。


「は、離せ!」


 ロバートを振り払おうと、セルベールがもがく。


 魔王の首に、もうひとつの腕が伸びる。


「なあ!」


 自分の腕を犠牲にしてでも、ロバートは魔王の首を取らせるつもりだった。


「ユミ!」


 ヒナマルが、ミュリエルに向かって生首を飛ばす。


 ミュリエルは、ヒナマルから来たパスを見事にキャッチする。


「ナイキャッチ!」

「伊達に一緒にバスケの授業とかしてないって!」


 父親の首をボール呼ばわりなのは置いておき、ミュリエルはドラゴンゾンビに指示を送った。


「あ、あああ」


 恐怖に怯えながら、セルベールが尻餅をつく。


「離すのです! いいかげんにワタシからどけええ!」


 半狂乱になりながら、セルベールはロバートを蹴り飛ばした。触腕を数本持っていかれながらも、セルベールはロバートの拘束から脱出する。


「ロバちゃんをいじめてんじゃねええ!」


 またしても、黄色いパクパカの後ろ足が、セルベールの顎に炸裂した。


「ごはあ!?」


 またしても、セルベールが宙を舞う。


「あいつを食っちまえ!」と、ミュリエルがドラゴンに指示を出す。


 ドラゴンゾンビが、天に向かって大口を開けた。


 セルベールが、その口へと吸い込まれていく。


「くそお、なぜなんですか? なぜワタシが、こんな目にいいいいい!」


 バキバキと音を立てて、セルベールの肉体がドラゴンゾンビの口で砕けていった。やがて、魔力が完全に消滅する。


「もう大丈夫だよ。ヒナマル。あとは……」


 空に広がるチキュウの光景を見つめる魔王ミュリエルから、笑顔が消えた。



 そう。あとは、ヒナマルが帰るだけ。

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