第五章 ラストバトル! さよならJK!?

DT、友との再会

 術士のロバートが進むことで、溶岩は足元をよけていった。


「ダンジョン自体が、生き物みたいになっている!」

「うええ、キモい!」


 床がうごめいているため、余計に気持ち悪い。


 ファイアーウォールで、壁を焼きながら移動していく。進んでいくうちに、悪臭がひどくなっていった。


「じっとしていて。そうだ。これを渡し忘れていたよ」


 ロバートは、ヒナマルにブローチを渡す。手に入れた鉱石を、装備屋で加工してもらったものだ。


「火、水、雷など、全属性に耐性のあるアイテムだよ。これに、恐怖耐性をプラスしておこう。それで落ち着くはずだ」

「ありがとう、ロバちゃん」

「ごめんね、もとムードのあるときにほしかったよね?」


 本当は、ヒナマルとのデートの後で渡そうとしていた。しかし、魔物の襲撃で雰囲気をぶち壊されてしまい、失念していたのである。


「ロバちゃんはがんばってるよ。ありがとう」

「よろこんでくれて、ありがとう。気に入ってもらえるとうれしい」

「ねえ、似合う?」


 サイドポニーの髪留めに、ヒナマルはブローチを付けた。首を振るたび、ブローチがキラキラ光って美しい。ヒナマルのカワイさを、引き立てている。


「頭部を守るタイプにしたのか。いい選択だ」

「そうじゃなくって」



「……かわいいよ」



 歯の浮くようなセリフを吐き、ロバートは自分が恥ずかしくなってくる。



「んんふふふふう! ロバちゃん!」



 興奮したヒナマルが、腕に抱きついてきた。


 よかった、恐怖が和らいだようである。



 だが、気づけばファイアーウォールを解いてしまっていた。


 一気にモンスターが湧いてくる。



「イチャイチャは、戦いのあとでお願いしますねー」



 鎖に繋がった鉄球が、モンスターの群れを蹴散らした。


 正気に戻ったロバートが、再度ファイアーウォールを展開する。


「無事だったか」

「はーい。ですが、王都に近いので大技を繰り出せないのがストレスですねー」

「それも狙って、王都に魔法陣を」

「つくづく、こちらの動きを封じてきますねー」


 王都に直接攻撃が来る場合、ヘザーなら迷わずここへ飛び込むだろう。


 だが、レックスは国より人命救助を優先する。


 よって、反対側には民衆に危害を加えるような布陣が敷いてあった。


「はじめから、分断する気だったか」


 とにかく、レックスの動きさえ封じれればよかったのだろう。


「面倒な敵ですねー。早く殺してやりましょー」


 ヘザーのフラストレーションも最高潮に達していた。


「でも、ボスの位置も近いですねー。悪臭が漂ってきていますからー」


 国すら覆わんとする巨大な魔法陣の中心へと、ロバートたちは進んでいく。


「おのれ、忌々しい天使め!」


 中央には、上位魔族のセルベールが儀式を行っていた。


「あ、パリピ魔族!」

「パリピという言葉はわかりませんが、侮辱であることだけはわかります」

「顔が元通りになってる!? てか、それが素顔?」

「酸素を克服しようと、あなた方に潰された顔を改造しました」


 ノドが、ヒューヒューという音を鳴らす。


「見ていなさい、この儀式ももうすぐ終わります! 今まさに、チキュウの支配を終えたミュリエル様がこの血におわすこととなるのです。あなたの友であるゴットフリートを籠絡させた、魔王の王女がね!」


 魔法陣が異様な光を放つ!


「なぜこんな場所で!?」

「感動の再会を演出するため、王都にしました。民衆の血を吸えれば、もっと進行は早かったのですが。あなた方も、はやくゴットフリート殿に会いたいでしょう」


 グケケと、セルベールが笑う。


「いでよ魔王ミュリエル! 世界を破壊せよ!」


 両手を天に掲げて、セルベールが儀式を終えた。


「あれが、魔王の娘か」


 現れたのは、褐色の少女である。ブレザーを着て、足はモコモコしたソックスを履いていた。


 少女の傍らには、体育用のジャージを着た青年が立つ。


「パーシヴァル・ゴットフリート……」

「お前は、ロバートか?」

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