JKの前に、レッドドラゴン飛来

 魔王軍は、「強力な援軍が来た」と歓喜した。しかし、その笑顔はブレスの一撃によって灰となる。


 ブレスを吐きながら現れたのは、レッドドラゴンだ。ヒナマルが以前対決した、あの個体だった。


「おーっ、強いぞカニカマ!」

「カニカマ?」

「紅いから、カニカマ!」


 ああいう色の練り物料理が、ヒナマルの世界にあるらしい。


 さらにドラゴンは、王都周辺を覆う魔物軍や召喚用魔法陣に向けて、ブレスを発する。


 味方だったはずのドラゴンが敵となったことで、歓声は悲鳴へと変わった。


 灼熱のブレスは、魔法陣を魔物ごと焼き尽くす。


 モンスターたちが、ブレスをまともに浴びて上空へ打ち上がった。


「えっと、カニカマ、ありがとう。こっちはもういいよ。王都の南に行ってくれないかな?」


 ドラゴンは、首を傾げている。


「勇者がそこにいるんだ! 強い相手とやりあっている。手助けがほしい!」


 南の方角を見つめながら、ドラゴンは「がう」と鳴く。ようやく、事の重大さを理解してくれたようだ。


「あたしらも、一旦乗ったほうがいいよ。カニカマ一匹だけで行ったら、攻撃されちゃうかも」

「そうだね。乗せてくれ!」


 ドラゴンの手に乗って、南へ。


 現場には、一瞬で到着する。


「やばい早い!」


 城から城へは、パクパカでも数分はかかるのだ。それを、ほんの数秒で。


 レックスは、巨大なミノタウロスと戦っていた。


 ミノタウロスは、魔族によって強化改造を施されているらしい。禍々しい胸当ては、マックスの剣戟すら弾く。棘つきの手甲を振り回し、マックスを近づけさせない。さらに、目から稲妻を放つ。


 翻弄されつつも、レックスは反撃の機会を伺っていた。


「いた。マックスさん!」

「レックスだ! おい、レックス! 聞こえるか?」


 声をかけてみたが、レックスはロバートがどこにいるかはわかっていない。

「ここだ! レックス!」


 やっと、レックスが声の位置を探り当てた。だが、目の前のドラゴンに圧倒されてしまう。


「うお、またでかいのが来たぜ!」


 やはり、ドラゴンを見てマックスは剣を構える。


「まって、敵じゃないよ」

「嬢ちゃんか! じゃあそいつが、前に話してくれたドラゴンか!」

「そうそう。いっけーカニカマ!」


 ドラゴンの口の中に、灼熱が殺到した。ドラゴンは、炎を一気に吐き出す。


 ヨロイで強化されたサイクロプスの胸板を、ドラゴンのブレスが貫く。マックスの剣さえ通さなかったのに。


 胸に風穴を開けて、サイクロプスがうつ伏せに倒れ込む。


「カニカマすごい! ありがとう!」


 サイクロプスを一撃で仕留めたドラゴンの首を、ヒナマルが撫でる。


 役に立てて、ドラゴンもされるがままになった。


「おっと、嬢ちゃん。すまんがまだ新手だ」


 サイクロプスが、次から次へと渦から湧いてくる。さっき倒した個体は、強化版だったらしい。現れたサイクロプスは、弱体化していた。


 そのことごとくを、ドラゴンがブレスで一層していく。


 レックスも負けてはいない。剣でリザードマンを両断して、スケルトンを盾で殴って壊す。


「ここは、俺たちに任せろ。お前らは、ヘザーを助けてやってくれ。ここが片付いたら、俺もすぐに向かう!」

「ありがとう! 頼んだぞ!」


 パクパカを呼び出して、レックスたちと別行動に。


「カニカマ! ありがとーっ!」


 ヒナマルが手をふると、ドラゴンも吠えて応えた。


「行こう。ちょっと加速する!」


 ロバートは、パクパカの足に加速の魔法をかける。ヒナマルのカズコ共々、超スピードでまちなかを駆け抜けていく。


 改めて、ロバートたちは渦の中央へ戻ってきた。


『まだ、敵の気配が凄まじいぞ!』


 渦から、次々と魔物が押し寄せてきた。


「さっきよりマシだ。喰らえ、ファイアーウォール!」


 溶岩のような炎の絨毯を、地上へ敷き詰めていく。炎は容赦なく、迫りくる魔物たちを溶かしていった。


「ブリザード!」


 空を飛ぶ敵は、氷の矢を振らせて撃ち落とす。


「さあ、急ごう」


 ヒナマルをかばいつつ、前へ進む。


(第四章 完)

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