DTとJKと、魔王軍

「ではわたしは、ダンジョンに向いますので。詳しくは、ブリーフィングでどうぞー」


 そう言い残し、ヘザーは転送魔法を唱える。

 クールなヘザーが、あれだけ慌てているとは。


 ロバートたちは、パクパカを走らせてギルドへ。


 本来なら、もっとデートを楽しみたかった。

 ヒナマルも、もっと楽しめたはず。


しかし、現実は非情である。

 

「なんだあれ?」


 冒険者ギルドの掲示板に、黒山の人だかりができていた。

 彼らは、蜘蛛の子を散らす用に、散会する。


「どうしたんです?」


 受付嬢に、話を聞いてみた。


「ああ、ロバート様。緊急依頼です。ヘザー様が担当している土地の近くに、ダンジョンができまして」


 それも、かなり深いクラスのダンジョンだという。


「腕の立つ冒険者に行ってもらいたいのですが、相当のレベルを必要とするらしく」


 探索チームとして、経験の浅い冒険者が挑んだ。

 しかし、返り討ちに遭ったとか。死人は今のところ出ていない。

 とはいえ、油断はできないそうだ。


「ロバート様レベルの、知識と実力が必要なのです」

「レックスが到着しているはずだ。あいつはどうした?」


 ギルド長は、首を振る。


「英雄レックスは、町の外に突如現れた強力なモンスターと交戦中です」


 都市の警護をする関係上、レックスは街を離れられない。

 もし、レックスが街を開けてしまえば、強力な魔物が現れた場合の対処が困難になる。


「しかも、魔物を生み出す黒い渦が、城下町を取り囲んでいるのです。冒険者たちには、モンスターが街に入り込まないように対処にあたってもらっています」

「では、その渦を作り出しているのが、ヘザーが入ったダンジョンだと」

「はい」


 残党狩りは、魔王勢力の削減にあった。

 魔王は死んでいるが、まだ手練は残っている。

 だからこそ、手の空いているロバートやヘザーが必要なのだ。


「いわゆる、タワーディフェンスってやつだね?」と、ヒナマルがゲーム知識を披露する。

「申し訳ありません。こんな事態に、ロバート様のお力が必要になるなんて」 

「ボクだって、すぐに向かいたいです。けれど」


 ロバート一人だけなら、二つ返事で引き受けた。

 しかし、今はヒナマルがいる。

 危険な場所なら、下手に動けない。


「あたしは気にしないでよ。自分の身は自分で守ってみせるから」

『うむ。いざとなったら、ワシが身を投げ打って」


 ヒナマルもミニムも、ロバートと同行するという。


「ダメだっ。危なすぎる」

「でもロバちゃん一人だけだと、もっと危ないんだよね?」

「それは、そうだけどさ」


 もし、ヒナマルの身に何か起きたら。


「今は、あたしだって冒険者だよ。連れてって」

『ヒナマルも覚悟を決めておる。あとは、お主次第じゃ』


 二人はやる気だ。しかし、連れて行くわけには。


「ヒナマルの気持ちはうれしいよ。だけど危なすぎる。キミを守り切る自信がない」

『そうは言うが、お主がヒナマルと離れる方がよっぽど危険なのじゃぞ。それを理解した上で、話しておるのか?』


 ミニムの言うとおりだった。

 今ココで離れたら、ヒナマルがひとりぼっちになってしまう。

 ミニムのサポートがあっても、何が起きるかわからないのだ。


「わかった。ただし、連れ行くだけだ。戦闘などは全部ボクがやるから」


 いざとなったら、ロバートが守ればいい。


「あたしにできることは?」

「えっと、ちょっといいですか?」


 受付嬢に、依頼内容を確認する。


「負傷兵が数名、パーティからはぐれてしまいました。救助と治療を、お願いできますか?」

「うん、わかったよ。絶対に連れて帰るね」


 ヒナマルはギルドの受付から、ポーションなどの医療道具を受け取る。


「お願いします」


 ロバートはヒナマルを連れて、ダンジョンへ。


 既に、入り口の段階で大量のモンスターが。


「入り口の時点でヤバいよ!」

「くそ、消耗している場合じゃないのに!」


 そのとき、大きな爬虫類型モンスターの影が、空を覆った。


 新手か……いや、アレは!?

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