DTとJK、王都の城下町へ
ロバートは、ヒナマルに手を引かれながら歩く。
「どこへ行く気?」
「決まってんじゃん。ロバちゃんの服を見に行くの」
意外な提案が、ヒナマルの口から出てきた。
「ボクは別にいいよ。せっかくヒナマルの自由時間なんだから」
さすがに、城や城下町でヨロイ姿というわけじゃない。
手頃な服装で決めていた。
「だったら、あたしの好きにしていいよね?」
ヒナマルは譲らない。
「わかったよ。行こう」
仕方なく、紳士服売り場に。
「さてさて、どれにしようかなっと」
ヒナマルは、ロバートに似合いそうな服を探す。
「これでいいかな。さあさあ」
ロバートは、渋々洋服に袖を通す。
「どうかな?」
ヒナマルがチョイスしたロバートの服装は、仕立てのいいスーツ姿だ。
価格が手頃ながら、シンプル過ぎない。
貴族ほど飾っておらず、嫌味がないデザインである。
「おお、さすが元々お貴族様って感じだね」
「家には、帰っていないけどね」
「でね。こうやって」
ロバートは、ヒナマルの手で前髪をアップにされる。
「わあ、ヒナマル……」
「いいからいいから」
整髪料で、髪型を整えられたら、完成だ。
「うわあ。見違えた」
正直な話、ロバート自身も驚いている。
決めようとすると、こんなに決まるものなのか。
「あ、ありがとう」
「えへへ。じゃあ今度こそ、街を回ろっか」
また、ヒナマルに手を引かれた。
ヒナマルが行きたがったのは、ショッピングである。
「おお、この髪飾りいいね! 買っちゃお!」
屋台で売っていた銀製の髪飾りを、ヒナマルは手にした。
普段は装備品しか見ないので、女子のこういう金銭感覚はわからない。
「出すよ」
「いいって。自分で買えるから」
どうもヒナマルは、自力での買い物がしたいようだ。
ロバートがすべてやってしまうと、退屈なのだろう。
その後も、ヒナマルに街中を案内した。
ヒナマルと、川沿いを歩く。
「ごめんね。何もなくて」
町並みはきれいだが、城下町といえど娯楽らしい娯楽は少ない。
せいぜい、小魚が川を飛び跳ねているくらい。
「なんで? 楽しいじゃん」
ロバートは萎縮するが、ヒナマルは楽しそうだ。
「あ、あれ乗ろうよ」
ヒナマルが指したのは、川を進むゴンドラである。
そうか、その手があった。
「歩き疲れたしさ」
「よし、行こうか」
乗り場まで進み、ゴンドラに乗せてもらう。
「あー、風が気持ちいい!」
ヒナマルも上機嫌である。気に入ってもらえて何よりだ。
ゴンドラの時間がすぎると、ヒナマルがお腹を押さえる。
そういえば、日が沈みかけていた。
「夕食にしようか」
食べたいものは、ヒナマルに選んでもらう。
「うーん、甘いものはもういいか。お屋敷のケーキ美味しかったもんね。パスタはお昼に食べたし、肉って感じもしないんだよねぇ」
選ぶだけで、結構な時間になった。
「ここがいい!」
なんとヒナマルが選んだのは、屋台のヌードルだ。
店の周りも雑然としている。
「もっといいディナーコースとかあるけど?」
「いいのいいの。こういうのを食べてみたかったんだよね!」
ヒナマルは、迷わず屋台に飛び込む。
「うんま! 昔ながらの、しょうゆラーメンじゃん!」
スープの味に、ヒナマルは驚く。
「ヒナマルの世界にも、存在する料理なの?」
「そうだよ」
箸の持ち方もうまく、ズルズルっと豪快に麺をすすった。
ロバートからすると、信じられない。
もっとパスタとか上品に食べる子だと思っていたからだ。
「ありがとう、ごちそうさま!」
「いや、ボクは何もしてないよ」
お金すら払ってない。すべてヒナマルが支払った。
「自分で言いだしたんだから」と譲らない。
ヒナマルが宿のお風呂に入るスキを見て、ミニムにそっと代金を全額渡しておく。
『律儀じゃのう』
「大事な人に、お金なんて払わせられないよ」
そうこうしていると、バスローブ姿でヒナマルが戻ってきた。
「ロバちゃん、明日、お弁当作ってあげるね。で、草原へ行こう。やりたいことがあるの」
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