第四章 DTとJK、ドキドキデートする

DTとJK、本格的デート

 ヒナマルから、街へ招待してくれと頼まれる。


「だってあたし、この世界に来てロクに周りを見てないんだ。何も理解してない。だから」

「うん、しよう!」


 ロバートは即答した。


 ジーク王子の部屋へ。


「悪いけれど、外の空気が吸いたいんだ。ヒナマルと一緒に屋敷から出てもいいかな?」


 王子は、ヘザーと顔を見合わせる。


「よろしいのではないでしょうかーっ?」


 ヘザーは、外出に肯定的だ。


「魔族の動きが気になるところですが、大きな騒動などの報告はありませんのでー。ただ、何かありましたら、ギルドに報告しておきますねー」

「ありがとう。じゃあ行ってくる」


 ローバーとに続いて、ヒナマルも「ごちそうさま」と立ち去る。


 というわけで、王子の屋敷を後にした。



 一旦街へ。だが、慣れないドレスでヒナマルは歩きにくそうだ。

 下が石畳なのも、歩行を妨げる要因になっている。

 なにより、お高い洋服はあまりにも場違いだ。

 いくら、城下町とはいえ。


「とりあえず、ドレスでは動きにくいよね。どこかへ寄ろう」


 まだ、装備品などはできていないはずである。


「あのお店で、カジュアルな服を繕ってもらおう」


 洋服店に入り、店員に声をかけた。


「彼女が着たい服を、作ってもらえないかな? 街の景観とか関係なくさ」

「かしこまりました」

「ありがとう、お願いするよ」


 店員に礼を言い、ヒナマルの採寸を頼む。


「ありがと、ロバちゃん!」


 ヒナマルが、更衣室へ。


 着替えている間、ミニムと話す。


『ほほう。奥手なお主からして、随分と大胆な提案じゃのう?』


 ミニムが感心する。


「いや。ヒナマルの言うとおりだ。ボクが勝手に呼び出しておいて、今からこの世界に慣れてくれなんて、虫が良すぎる」


 ここはひとつ、ヒナマルに城周りを案内して、気分転換をしてもらえれば。


『フム。一理あるのう。では、ワシは使い魔という性質上、ヒナマルと離れられぬ。調査は王子に任そうぞ』

「いいんじゃないかな? ジークがヘマをするとは考えられない」


 それでも、ロバートはヒナマルの娯楽度合いを知らない。

 ヒナマルの話している感じからして、この地と向こうでは文明レベルが違いすぎる。

 この街の娯楽は、あの小さな板に入っているゲームすら下回るだろう。

 食べ物くらいしか、彼女を喜ばせることもできないのでは、と考えていた。

 いや、その食べ物でさえ、遅れを取っているのだろう。


『わが孫ロバートよ』

「なんだよ?」

『衣擦れの音を聞かぬようにしておるのがバレバレぞ』

「な!? ちが……くっ!」


 このババア! 意識しないようにしていたのに!


「なにをバカな! ボクがそんなやましい考えなんて」

『ワシがわからんとでも思うておったか? 血縁者ぞ。お主の考えなどたやすく見通せるわい!』


 問答をしていると、更衣室から「おまたせ」と、カーテンが開く。


 ロバートは、息を呑む。


 ヒナマルの姿は、ミニスカートのブレザーだ。

 しかし、ブラウスは貴族風になっていて、ブローチが追加されていた。

 カーディガンを腰に巻き、靴も上等な革製である。


「できるだけ、あたしの世界に近い格好にしたもらったよ。でも、すごくお金かかっちゃった」

「心配ないよ」


 実は、王子とヘザーからお詫びとして、結構な金額をもらった。

 断ったのだが、気が済まないからと手渡されたのである。

 王子からすれば小遣い程度の額だが、庶民の感覚だと家が建つレベルだ。


「ありがと。ホントに」

「気にしないで。ほんの気持ちだ。ボクたちの文化では、これが限界なんだ」

「いいって。あたし、ここ気に入っちゃった」

「そんな。気を使わなくてもいい。早く元の世界へお繰り返してあげるよ」


 ヒナマルは、「違うよ」と首を振る。


「みんな親切だし、あったかい。時間の流れもゆったりでさ」


 そう言ってもらえると、うれしい。


「悪いやつを、やっつけないとね」

「うん。そうだね」


 ロバートが感傷に浸っていると、ヒナマルに手を掴まれた。


「ささ、行こうか。デートに連れて行ってくれるんだよね?」

「ああ。もちろんだ」

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