JK、ご乱心!? な王子とお茶会

「いや、えーっと」


 王子からのプロポーズに、ヒナマルも困惑している。


「決して不自由はさせぬ。どうか、僕の恋人になってくれないか?」


 ヒナマルが、ロバートに視線を向けてきた。明らかなSOSだ。


「ジーク王子ー、この人が【チキュウ】から来たヒナマルさんですよー」

「ひい!」


 ヘザーに指摘され、ようやく王子が我に返る。もしくは、ヘザーからのさっきを感じ取ったか。


「……おおそうか! すまなかった! 危うく、人の配偶者に手を出すところだった!」


 王子がヒナマルの手を離す。


「あいさつが遅れたな。我が名はジークムント・ゴットフリート。ブッシュマイヤーの第二王子だ。ジークと呼んでくれ」

「ヒガシマル ヒナコだよ。みんなはヒナマルって呼んでる。よろしく。で、ゴットフリートって……」

「ああ。僕は魔王を倒していないよ。魔王退治に同行したのは、英雄は兄のパーシヴァルだ。詳しい話は、着席してからにしよう」


 ジーク王子は、ロバートたちを庭へと誘った。

 庭一面に、バラの花が咲いている。


「ようこそ、異世界のものよ。ここは、我が母上が大切にしているバラ園だよ」

「うわ、広いね。それにいい香り」


 バラの芳香を、ヒナマルは気に入ったみたいだ。


「ブッシュマイヤーの紋章にも、バラは使われているんだ。気に入ってもらえたかな?」

「うんうん。花はよくわからないけど、手入れが行き届いているのはわかるよ」


 ピンクのバラを、ヒナマルは手で弾ませた。


「王子、最初の目的をお忘れでは?」

「ひい!?」


 またしても、ジーク王子はヘザーから釘を刺される。


「そうだったね。ちゃんと用意しているよ」


 メイドが、庭園でアイスコーヒーと菓子を用意してくれていた。


「こんな豪華なの、初めて見たよ! テレビドラマでしか見たことない!」


 大量のクッキーやケーキが積まれたティースタンドに、ヒナマルは目を輝かせる。


「さあどうぞ」


 王子は紅茶をたしなむ。


「うわめっちゃうまい!」


 大量のおいしいケーキに、ヒナマルは大喜びだ。キレイなドレス姿なのに、いつものヒナマルに戻っている。


「今日はわざわざありがとう。魔物まで退治してくれたんだってね」

「お礼は、パクパカに言ってよ。あの子カワイくて強いの」


 ヒナマルは、クッキーをバリボリと貪った。もうすっかり、ヒナマルはお菓子に夢中だ。


「安心なさい。メイドに世話をさせているよ」


 黄色いパクパカが、メイドに引かれてヒナマルのもとへ。


「おー、カズコぉ。よしよし。お菓子食べるか?」


 ヒナマルが、パクパカにキュウリサンドを差し出す。


 大きく口を開け、パクパカはキュウリサンドを丸呑みした。


「……ヒナマルには、パクパカの世話をしてもらったほうが楽しいかな」

「そうですねー」


 どうせ、つまらない話題になる。遊んでいていもらおう。


「そうだ。ミニムおばばも、食べたいんじゃない?」

『うむ。そうじゃのう』


 ヒナマルの胸元で丸まっていたミニムが、元のリスに戻る。


『チョコッチップの方をもらおうかの?』

「いいね! あたしはジャムの方をもーらい」


 ヒナマルが、ミニムの分のクッキーを皿に乗せた。


「おう、あなたは老師ミニムで?」


 そうだ。王子はミニムの現状を知らなかった。


『久しいのう若王子。いかにも老師ミニムじゃ。肉体は別の場所で活動しておる。この肉体は人工的に作った使い魔じゃ』


 クッキーを食べながら、ミニムは自分の状況を説明する。


「でさ、ヒナマルを元の世界へ帰す方法なんだけれど」


 ロバートは、本題を切り出す。


「ミニム老師がいるなら、話が進めやすい。老師は、こちらの会話に入っていただけないだろうか?」

『わし、もうちょいチョコチップ食いたいわい』

「食べながらでいいので、聞いてくださいっ」


 王子は、一冊の書物を用意した。


「ヒナマル殿を転送してきた魔法について、心当たりはあるよ」

「謎が解けそうなのは、本当だったんだね?」



「ああ。兄が転送されてしまった原因を探っていたらね」

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