DT 対 魔女リリム

 村人たちに、電流が走った。


「ああん、痛ったい!」


 リリムの持つポールにも、電流が流れたらしい。リリムがポールから手を離す。


 一時的ではあるが、村人が正気に戻っている。どうやらあのポールで、村人を操っていたらしい。


「早く逃げるんだ、早く!」


 出口をロバートが指差す、村人たちが一斉に逃げていく。


「ヒナマル、ついてきて!」


 村人をヒナマルとともにかばいながら、ロバートは出口へと進む。


 安全を確認した後、再度詠唱を始めた。


 ダンジョンから、モンスターの大群が押し寄せてくる。


 好都合だ。詠唱は済ませている。


「爆砕!」


 洞窟に向けて、特大の爆炎を見舞う。今まで本気を出せなかった分、勢いよくやらせてもらった。スライムもウルフも、炎と高熱によって絶命していった。


 リリムのいる洞窟から、黒煙が上がる。


「大丈夫か、ヒナマル?」

「うわあ。これ修理できるかなぁ。お気に入りだったのに」


 ヒナマルは、無残な姿になっていた。スライムの酸を浴びて、肌のアチコチが露出している。


「こういうのは、ベッドの上だけにしてほしいね」

「いやいやいいから!」


 ロバートとヒナマルが問答していると、煙が急激に晴れた。


「なぁにを、イチャついているのぉ?」


 大型カメレオンに乗ったリリムが、洞窟から出てくる。


「せっかく、魔物を王都へ送り込む大作戦を実行していたのにぃ。どうしてくれるわけぇ? 子分までやっつけてくれちゃってさぁ。もう許さないんだから!」


 カメレオンが、舌を伸ばす。赤い舌が、上に乗っているリリムに絡みつく。なんとリリムが、乗っているカメレオンに飲み込まれた。


「仲間割れ!?」

「いや、あれは……」


 何が起きたのだろうと思っていると、バジリスクに髪が生えてくる。顔も人間に近くなった。


「融合した?」

『違う! あのカメレオンがリリムの本体じゃ!』


 ギョロッと目を光らせ、バジリスクと一体になったリリムがこちらを見下ろす。


「人間ども、ワタシの腹の中で踊りなさぁい!」


 リリムが、カメレオンの舌を伸ばす。


「くそ!」


 氷の槍を犠牲にして、ロバートは舌攻撃から脱した。


「こんなの、デザートにもならないわぁ」


 巨大カメレオンは、氷魔法など意に介さず、胃袋へと押し込んだ。


「ちいい!」


 ロバートが、火球を連発する。


 だがファイアボールは、鉄扇のような形状の前足に防がれた。


「これなら」


 ライトニングを、カメレオンの頭上に見舞う。


 バジリスクはそれさえも、シッポを避雷針にして防ぐ。


「お返しよぉん!」


 魔物が、マヒ光線を放った。自分ではなくヒナマルへ。


 ヒナマルは露出がひどくて、まともに戦えない。


 ロバートは魔法障壁を展開した。フィールドにより、光線を散らす。


「ありがとう!」

「いいって」


 どうにか、ヒナマルの衣装は元に戻りつつあった。


「オババ、装備の修復急いで!」

『急ピッチでやっとるわい!』



 しかし、間に合いそうにない。またも、標的にされるだろう。



「こうなったら!」



 ロバートは、ヒナマルの前に立つ。



『何をする気じゃ、ロバート!』


 そんなこと、決まっている。


「さあ、ボクを食べてみろ!」


 自分を犠牲にして、活路を見出すのみ。


「随分と素直ねぇ。では一息で飲み込んであげるわあ!」


 バジリスクの舌が、ロバートを捕らえる。


「ロバちゃん!?」

「任せて。決着を付けてくるから!」


 ものすごいスピードで、ロバートは一息で飲み込まれた。


「ンフフ……んぐぅ!?」


 強引にノドを通って、胃の中へと進む。吐き出されそうになったら、ノドを掴んで無理矢理にでも前進した。


「やあ。こんにちは」



 目的地に到達する。


「く、どうしてここが!?」


 そこには、無防備なリリムがポールダンスをしていた。


 ここが、バジリスクのコントロールルームらしい。


「さて、反撃させてもらう」

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