第三章 DTとJKは、王都でKY痴女と出会う

DTとJK、村へ

 転送魔法を使って、ロバートとヒナマルはティッチの村に到着した。


「もっとカズコを使って移動したかったなぁ」


 せっかくパクパカをゲットしたのに旅ができない、とヒナマルは嘆く。


「緊急事態だからね」


 普通にパクパカで移動すると、どれだけ急いでも一週間はかかってしまう。パクパカの体力も続かない。


「でも、ダンジョンまではパクパカを使って行こうか」

「やった。ロバちゃん大好き」

「よ、よせよ。ほら宿を確保するよ」


 パクパカを駐めさせてもらい、宿を取る。


「あれ? なんかおかしくない?」


 村の様子が、どこかおかしい。


『また、お主のよからぬウワサが流れておったりしてのう』

「人聞きの悪い子と言わないでよ、ミニムババ」


 しばらく村を歩いて、男手がいないのだと気づく。


「村人は、ほとんどが女性だ」

「そうだね。男の人、どこへ行ったんだろう?」


 男は老人しかいない。いや、かなりの高齢者ばかりだ。初老の男性すら見かけない。


 ダンジョンと関係があるのか?


 宿の近くにある酒場で、話を聞く。ここは冒険者ギルドも兼ねている。


 そこにも、男性は冒険者くらいしかいなかった。しかも、一〇人にも満たない。


「詳しい話を、聞かせてくれませんか?」

「実は、村の男たちはみんなダンジョンを掘らされているのです」

「ダンジョンを作らされている、ですって?」

「はい。どうも金が出ると言って、男衆が息巻いていたのです。でもそれは、魔物がウソをついていまして。そのまま、ダンジョンを掘り進めさせられていて」


 抵抗すれば、この村を魔物に襲わせると脅してきた、という。


「この冒険者たちは? 彼らにダンジョンの管理者を討伐に行ってもらえばいいじゃないですか」

「彼らは南の小国サグーから派遣された、ボディガードなんです」


 よって、彼らにダンジョン攻略はできない。彼らがいなくなれば、街がどうなってしまうか。


「魔物はなんのために、ダンジョンを?」

「さあ……」


 酒場の店主は、首をかしげている。


『おおかた、モンスターを誘導するためじゃろうて』

「わかるの? ミニムちゃん?」

「地図を広げてみい、ヒナマル」


「うん」と、ヒナマルが端末で地図を表示した。


『ここが、ティッチ村じゃ。で、ここは南にモンスターの巣があるんじゃ』


 村とダンジョンの南に、魔物の密集地帯がある。


「モドー沼だよね?」


 沼地だけあって、爬虫類や両生類が多い。どの魔物も、毒性の強い攻撃を持つ。


「中でも魔女リリムは、男性を誘惑するっていう、恐ろしい悪魔なんだ」


 リリムに惑わされない男はいないという。だから聖女ヘザーが睨みをきかせていたわけだけれど、彼女はその仕事を放り出してしまった。動きがなさすぎて、無害と判断してしまったのである。


「ロバちゃんでも、魅了されちゃうのかな?」

「わからない。会ったこともないからね」


 とにかく、魔王配下の残党ってのは確かだ。 


『うむ。この村は裕福ではあるが、魔物の巣から離れておる。巣の周辺にある小国サグーと、小競り合いをしておるがのう』


 小国が守ってくれているから、この村は収穫を維持できていた。その近郊を破ろうというのか? その割には大規模で、実入りも少ないようだが。


『ティッチの村から右方向を差して、拡大してみい」

「わかった。ダンジョンがあるね?」


 画面に、開発状態のダンジョンが写った。


『さよう。それをさらに右に進むと……』


 ロバートが、「あっ」と声を上げる。この先は、王都ブッシュマイヤーではないか。


「このデカい街に、ダンジョンを繋げようとしている、ってこと?」

『うむ』


 もしダンジョンが通れば、沼地のモンスターが王都に押し寄せてくる。


「では、ダンジョンを攻略してしまえば、魔物たちも潰せてサグー国も安心ですね」

『じゃと、ええがのう……』


 含みのある発言を、ミニムはつぶやいた。

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